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第12回
4/12更新
ステレオカメラは、今が狙い目!
カメラの収納庫を整理していたら、棚の奥から面白いカメラが出てきた。10年ほど前に購入し、そのまましまい込んでいたようだ。発掘されたカメラは『Stereo Graphic』というレンズが2つ付いたステレオカメラ。1950年代に15000台ほど作られた。アルミニウムのボディにグレイの革張り。ミッドセンチュリーの薫りが漂うポップなデザインだ。新聞や雑誌を整理していると、つい記事を読んでしまうことがある。カメラを整理するつもりが、忘れていたカメラを発見して、シャッターを切ったりレンズを磨いてしまい、結局その日は整理どころではなく、かえって散らかしてしまった。家人の怒る顔が頭をよぎったが、本人は楽しいのだから仕方がない。
ステレオ写真の歴史はかなり古い。ヨーロッパの蚤の市などに行くと、いにしえのステレオ写真を割と簡単に見つけることができる。ヒットラーが演説していた時のステレオ写真もどこかで見たことがある。一枚の横長の印画紙に3センチほど間隔を空けて2枚の写真が焼き付けられている。人間は、離れている2つの目で見るから物が立体的に見える。ステレオ写真の原理もそれと同じ。人間の目の間隔と同じくらいに離れた位置にレンズを2つ並べて、同時にシャッターを切る。するとちょっとした視差が生じる。それをプリントし、右の写真は右目、左の写真は左目でみることで、立体的に見えるのだ。
湿板や乾板写真の頃のステレオカメラは、フィルムも大きいし、レンズが2つ装着されているわけだから、相当大きなものだった。当然、三脚を据えて撮影する風景写真が多かった。その後、ロールフィルムが開発されて、カメラそのものの小型化が進んでくる。ステレオカメラも小型化の洗礼を受け、35ミリフィルムを使ったステレオカメラが登場した。
それが、1951年頃に発売された『Stereo Realist』というステレオカメラ。24ミリ×23ミリの画像サイズで、35ミリフィルムに2つ飛びで写る。つまり写ったフィルムを見ると、最初に撮影したカットは、1番目と4番目に写り、2カット目は、2番目と5番目、3カット目は、3番目と6番目に写っている。このステレオリアリストの方式を踏襲したのが、いわゆるリアリストサイズのステレオカメラ。『TDC Stereo Vivid』や『Wollensak Stereo』などの名機がある。
『Stereo Graphic』もそんなリアリストサイズのステレオカメラの一台。他のステレオカメラはピントやシャッタースピード、絞りを細かく調整できるようになっているのだが、この『Stereo Graphic』は、左右のレンズの一方は近景よりに、他方は遠景よりにフォーカスが合わされている。ステレオ写真は、左右で見るため、目が補い合って、近景から遠景までくっきりと見えることになる。この方式は、epthmasterと名付けられた。
さらにシンプルなのが露出。絞りはf4、5.6、8、11、16、の5種類。シャッターはギロチンシャッターの固定式。ISO感度100のフィルムを入れて、晴天ならf8。これを中心に暗ければ絞りを開けて、明るければ絞り込めばいい。いとも簡単にステレオ写真を撮ることができる。
リアリストサイズのステレオカメラのさらに優れた点は、ステレオ・ビュワーが用意さていたこと。プリントをルーペで見るのではなく、リバーサルフィルムで撮ったものを専用のマウント枠に入れ、それをビュワーに入れて覗く。ビュワーはボタンを押すと、豆電球が点灯するようになっており、鮮明な立体画像が目に飛び込んでくる。撮影のコツは、近景から遠景まで万遍なく被写体がくるように構図を考えること。2、3本いろいろと工夫して撮影してみると、立体的に見えるツボがわかってくる。一度見ると病みつきになること必至!
ここでとっておきの情報を内緒で公開する。過去の歴史を見てみるとステレオカメラは、だいたい10年周期で流行っている。前回の流行のピークは8年程前。つまり今は、一番人気のない時期なのだ。デジタルカメラの普及と相まって、驚くほど安い。中古カメラ店の店頭では、不人気なのであまり置いてないが、ヤフーオークションやeBayでは、頻繁に出品されている。ステレオカメラの“おおー凄い”という感動は、デジタルでは決して味わえない。今こそステレオカメラを楽しむチャンスなのだ。
eBayを見たら10年前に欲しくて買えなかったステレオカメラの名機がずらりと出品されていた。あまりの安さに4点ほどビット中。カメラの整理どころではない。またまたカメラが増えるはめに! いやー銀塩カメラって本当に良いものですね。
カメラ:
山縣基与志
ライター、カメラマン。
主な著書に「カメラメーカー勝ち組負け組」など著書多数。
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