夏の雨具を考える
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| ■梅雨時の休憩時間―― 1998.6.13 雨の日に武蔵五日市駅から徳倉三山を歩いた。雨で濡れるか、汗で濡れるか、みなさん悩みながら歩いていた |
夏の雨はなかなかやっかいだ。気温が20度Cを越えたら、登山者が一般的に使用している(ゴアテックスに代表される)透湿防水のレインウェアでは汗をかく。
そんなことは分かり切っているはずなのに、みなさんあわてて着たうえに、胸元までガードを固めている。体を雨にさらしたくないのだろうが、汗で濡れるのはいとわないのだろうか。
透湿防水などという考え方のない時代には、夏は風通しのいい雨具を選んだ。ポンチョがその代表だ。背負ったザックごと屋根をかぶせたようなかたちで、裾はひらひらと広がっている、両側の袖口を止めなければ脇からも風が通る。
もうひとつの考え方は「濡れればいいさ」だ。沢登りだと全身濡れ鼠になったまま行動したりするけれど、行動中は濡れたままでいいと考えて、行動が終わったら着替えてストレスから解放する。陸上競技やサッカー、ゴルフなど、全天候型スポーツ競技に近い考え方だ。
透湿防水という機能は雨具を革命的に飛躍させたが、それは環境が体にとって敵対的な低温領域において圧倒的だった。濡れてもいいと考える人もいて、濡れたくないと考える人もいるというような選択の余地がある領域では、その存在感もぐらついてくる。
昔、ナイキが冬季限定販売でゴアテックス防水のランニングシューズを作っていたことがある。私たちは都内の大型スポーツ店を回って、どの店にどのサイズの靴があるか情報を回したりしたけれど、店ではけっこう冷たくあしらわれる存在だった。
どうしてかというと、雪国のスポーツシューズとしては防水が必要なのだが、それでも走れば蒸れるという。透湿機能はあっても換気機能はないのだから、ランニングには不十分……というのがランニングシューズ売り場の担当者の常識的判断だった。
だからいま、ゴアテックス防水のウォーキングシューズは多くのメーカーが競って作っているけれど、あのナイキのACGシリーズのランニングシューズのように軽くて柔らかい靴はない。
つまり、換気が必要な条件下では透湿程度では追いつかないという現実がある。
この連載の「ブランド物語」で東レのダーミザクスを取材したとき、ゴアテックス同等のダーミザクスは冬季の低温状況での登山活動にターゲットを絞っていると聞いた。正式名称は「エントラント・ダーミザクス」というそうで、東レの透湿防水素材の総称がエントラント。ところが「エントラント」といえば、これまでは上下で6,000円ぐらいの安い作業雨具だと思っていた。表地に透湿防水フィルムを張っただけの2レイヤーで、肌触りをよくするために内側にネット地をつけたりしている。
ところがそのエントラントは、ゴルフ用として高級な透湿防水雨具になっているという。ファッショナブルな表地で、裏には肌触りを改善するためのシボ(突起模様)を印刷したりしている。平地用のエントラント雨具は透湿機能を大きくしてあるという。安物というイメージは裏切られた。
いままで私たちは冬用の透湿防水雨具を1着もってベストチョイスと考えていたけれど、私のように「軽登山」という領域に限定すれば、むしろ夏向きの雨具を真剣に選ばなければ合理的ではないということになる。
