実態天気という考え方
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| ■台風に追い返される――2005.9.7 清里から県界尾根で赤岳に登ろうとしたけれど、台風に追い返された。さて、今晩はどこで、どう……という心配は不要。台風情報で観光業界は閑古鳥になっているから |
1995年に自分流の登山講習会を始めたときから、ひとつだけ決めておいたことがある。天気予報に邪魔されないということだ。
「予報天気」と「実態天気」についての考え方についてはすでに述べた(講座19・天気予報と山の天気)が、台風のときこそ山で「実態天気」と遭遇するということが、お金をいただいて積極的にやるべき仕事ではないかと思っている。
簡単にいえば「台風でも中止しない」ということなのだが、べつに特攻隊的精神でやっているわけではない。日帰り登山を基準に山を見ている人に、「縦走登山」という視点から山歩きを体験してもらいたいという価値(バリエーション)の提供を心がけているだけだ。
たとえば1週間の縦走登山とするとする。1日、2日なら天気の「いい」「悪い」に一喜一憂してもいいが、1週間となると晴れもあれば雨もある、風だって吹くかも知れない。
山歩きでは、地形的に険しいところに大きな魅力が隠されている。天気にだって、険しい天気ならではのドラマチックな魅力がある。凡庸な晴れより、波瀾万丈のドラマチックな天気のほうがおもしろいという考え方には自信を持っている。カメラマンの目で見ればすぐにわかるが、山の風景を彩るのは空ではなく雲なのだ。雲が主役と考えれば、天気は晴れから雨まで、全域に守備範囲を広げておきたい。
もうひとつ、山では通過予定ルートに1か所でも自分の能力を超える部分があれば引き返さなくてはならない。危機管理的な観点からすれば、雨になったときに道が難易度をどれほど高くするかということには常に注意深くなければならない。
だからクサリ場を通過するごとに体験を蓄積させていくのと同様に、悪天候というものも、できるだけたくさんクリアしていきたい。そういう意味で、台風のときの山の体験は、天気に関する多くの体験を一度にまとめて味わわせてもらえる絶好のチャンスと考えられるのだ。
