小屋泊まりにシュラフカバー
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| ■南アルプス北岳・白根御池小屋の混雑――1998.7.18 一年で一番山が混雑するのが夏休み最初の週末。後から後から宿泊客が来て、もう定員などとっくにオーバーしている状態。トイレに起きたらもう戻る場所はないと覚悟 |
寝袋とシュラフカバーという言い方は重箱読み(だか湯桶読み)みたいなものかもしれない。寝袋は以前はドイツ語読みでシュラフザックといい、最近では英語読みでスリーピングバッグと呼ぶ。
シュラフカバーはそれでいいのだろうか。寝袋の外側にかぶせる寝袋型の防水袋で、ゴアテックスなどの透湿防水素材で作られていると驚くほど強力な装備となる。
私がコーチングをしてきた古くからのみなさんは、たいていゴアテックスのシュラフカバーをもっている。みなさんに私はずいぶん強力に勧めたのだ。
まず、山小屋の就寝状態が天国となるか地獄となるかは神のみぞ知る。だから安眠確保のためにシュラフカバーを持ちましょう、というのが第一の理由だった。
山小屋は定員の基準が肩幅の45cmだから畳1枚……というより布団1枚に2人並んで寝るのを基本的なイメージとする必要がある。それが混む日にはしばしば3人になる。どう考えても不可能だからいろいろな逃げが黙認されるけれど、逃げられないこともある。雑魚寝といっても上を向いて寝るわけにはいかない。横向きに寝て、しかも寝る向きを上下交互にして足と頭と足で布団幅に収めなければならない。
その状況では、おじさんの、山靴で蒸れた足が顔の前に来ることだって十分にあり得るのだ。いびきが耳元で発生するということも多い。寝袋型の袋は、外気を遮断するという機能をまず発揮してくれる。
最近の山小屋では占有幅は狭くてもひとりひとりの寝袋が支給されるところもある。そうなると地獄のレベルはかなり緩和されるのだが、そうでない場合には、毛布や掛け布団の重なり目で思わぬ悲劇が起こる。重なり目で重い思いをするのもつらいが、左右から引っ張られて掛け布団が逃げてしまう危険もある。
そういうときに、布っぺら1枚とはいえ、からだをおおっているものがあると、かなり安全性は高くなる。
加えて貴重品。財布やクレジットカードなどもだが、夜中に必要になるかも知れない水なども含めて、本来なら頭の上に置いておきたいものをシュラフカバーの中に入れてしまう。もっといえば、着替えだって入れておいて、中でもぞもぞと着替えることも可能になる。
さらに、本来の機能として、布団が湿っていてつらい夜になるときに、その湿り気をシャットアウトしてくれる。さらにこちらの服が湿っている場合には、その湿り気がからだを冷やさないように包み込んでくれるのに加えて、おだやかに湿り気を排除してくれるので、翌朝には爽快な状態になっている……というぐあいだ。
つまり、山小屋によって天国もあれば地獄もあり、同じ山小屋でもその日によって天国・地獄の相違があり、さらには寝る場所のたまたまの位置や、たまたま隣に寝た人との巡り合わせによって天国にもなれば地獄にもなる。
値段は透湿防水のレインウェアと同じぐらいするのだけれど、予期せぬ最悪の状態で安眠を確保してくれる危機管理装備として、できるだけみなさんに用意しておいてもらいたいと考えていたのだ。
話が過去形になっているが、最近ではあまり勧めなくなったし、持っている人も家においたままということが多い。
なぜか。けっきょく、山小屋を選び、さらに時期を選ぶことによって最悪の状態をなんとなくさける技が身についた。
そして透湿防水シュラフカバーの代用を透湿防水レインウェアでもなんとかできるということに気づいたのだ。山小屋の就寝環境があまりにも悪いときには、レインウェアを着込んで寝るという選択肢もありなのだ。歩くとジワ〜ッと足が湿る布団で、レインウェアでそれなりに安眠できたというような体験が装備を軽くしている。
