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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

講座 2008.4.24更新  

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【講座54】ヤマビル対策


増えているヤマビル

■房総半島で吸血中のヤマビル――1997.7.15

ヤマビルは体重の10倍から20倍の血液を吸って、密かに脱出しようと図っている。血を吸うとからだはだんだん丸くなる

私が初めてヤマビルと出会ったのは房総半島。1997年の7月15日にアジサイの咲く麻綿原から清澄山への軽いハイキングを実施した。首都圏自然歩道の「アジサイのみち」で、スタート地点を内浦県民の森としたときだった。

県民の森の入口にヤマビルに対する注意があって、事務棟には塩水を入れたスプレーが置いてあった。靴に噴霧しておくとヒルが寄りつかないというのだ。

道は森に入ると沢すじになり、いかにもヒルが出てきそうな湿った雰囲気になった。そして、やっぱり出た。何人目かの人が取り付かれるらしく、大騒ぎし始めた。ヒルは先頭の私が通過するとやおら頭をもたげて、次か、その次か、獲物に取り付いてくるようだ。


当然、パニックが広がった。休憩をとる場所がない状態でズンズン歩いて、舗装路に出たところでようやく平和な気分に立ち戻れた。

しかし、止まってみれば、被害状況は大騒ぎの印象とはまた違っていた。私の靴下の中にも1匹もぐっていたし、自覚症状なしに血がタラ〜リと垂れている人もいた。しばらくは、体中を確かめるような第2次パニック状態になった。

  このとき、私は2つのことを知った。

まず、塩水スプレーが必ずしも効かなかったのだ。なぜかというと、片方だけやってみたら、塩水をかけた方にヒルが入った。経緯にもうすこし複雑な状況があったかもしれないが、ともかく「効かなかった」のはまちがいない。

それから、リンパ腺を腫らした人がいた。「ヒルは血が止まらないだけで実害はないですから」といっていたことが嘘になった。じつは私も、医者に行くほどではなかったが、なんとなくおかしな感じがしたのでそういうことがあると思った。

その後、ずいぶんいろいろな山でヒルに出会った。屋久島ではひとり10匹は大げさだとしても、全員おおさわぎして佃煮にできそうな数のヒルをつまみ出したこともある。

いま問題になっているのは丹沢だ。シカにくっついて移動するらしく、以前はいなかったはずのところに大量にいたりする。山の名前を書くと梅雨時以降出かけるのがおっくうになるので明らかにしないけれど。

今年は3月25日に房総の金山ダムから元清澄山へと歩き、清澄寺に出た。首都圏自然歩道の「モミ・ツガのみち」だ。最初のヤマビル体験ルートに続く道だ。3月だから、まずヤマビルは出ないはず、と宣言していたのだが、帰ってみるとひとり被害が出ていた。根拠のない宣言だったことがバレてしまった。

団塊の世代より前の人々は多くの人が田んぼのヒルを知っている。食われてもヘッチャラという記憶があるという。わざと血を吸わせて直した病気もあると聞いている。ヒルは生活のなかにあったようだ(私は東京育ちだから直接的には知らないが)。

しかしいま、山にヒルがいるのも悪くないと思っている。山の中にそういうコミュニケーション不可能な生物が存在していることが正常であって、人間が意外にもろい存在だということを教えてくれることがあったほうが、ないよりはいい。3月25日の房総半島だって「ヒルは出ません」といってみても、歩きながら足元にヒルを探す目つきは、やっぱりあった。ヒルが山歩きに緊張感を与えてくれたといっていい。


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