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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

講座 2008.2.14更新  

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【講座51】山用カメラを考える


山岳写真……ではなくて

■雪の日の陣馬山――1998.3.5

3月の霧雨の日、陣谷温泉から栃谷尾根を登って陣馬山(857m)に向かった。山道にかかるとすぐ、霧雨は雪に変わり、林を軽く吹き抜けていた

私は写真家志望ではあったけれど、写真家にはなれなかった。むしろ写真編集者として山岳写真家や風景写真家の写真をたくさん見る機会があった。

自分の写真では、昨年『山の道、山の花』というフォトガイドを出し、今年はその続編(花以外のものが主体)を出す予定でいる。この10年あまりで撮ってきた写真を(この連載で使用した写真も含めて)ガイダンスという文脈でたくさん並べている。

山で撮った写真を本にまとめたら山岳写真家かというと、そうではない。

話が複雑にならないように、写真のうまさとか、写真の力という写真の内容については省くことにしたい。あくまでも「山用カメラ」に話を絞っていきたいからだ。

山岳写真家と風景写真家の違いはその行動スタイルからかなりはっきり区別できるように思われる。

風景写真家は、たとえていえば車から30分以内のところでカメラを構える。山を撮るにしても、太陽や雲のぐあいがよくなければ裏側にまわってみるという選択肢を残しておきたい。花を対象にしたい場合は、天気よりも花の開花時期との調整がだいじだから、周辺にいくつかの候補地を用意して、まわる順序を変えることで撮影スケジュールを調節する。

山岳写真家は、むしろ車から1日、2日、あるいはそれ以上離れたところでカメラを構える。行動範囲が広くないから、待つことでシャッターチャンスを拾おうとする。態度としては決め打ちになる。

要するにストライクが来ると信じてそこに立つ。立ち続けることでストライクを待つしかない。


かなり強引な説明の仕方だが、いいたいことはこういうことだ。時間軸を中心にしてみると、風景写真家は持ち駒である時間の中でベターな撮影ポイントを選ぼうとする。二次元、あるいは三次元の動きによって、何かをつかみ取ろうとする。

それに対して山岳写真家は撮影対象を先に決めて、時間の流れ、太陽の動き、天気の動き、季節の動きという四次元の変化からねらい打ちしようとする。

そしてどちらにも共通するのが三脚だ。4×5とか8×10という大判カメラで撮影するからという場合もあるだろうが、35mm判カメラの場合でも三脚を立てるのが原則だ。ブレ防止のためというより、レンズを絞って遅いシャッターも切れることによる撮影の幅を確保するためと、もうひとつはたぶん、三脚を立ててカメラをセットしたときに、フレーミングが確定しているということのためではないだろうか。

大型の写真シリーズを編集するために日本の風景写真を数万枚連続的に見たことがある。天気に恵まれたり、季節に恵まれたりしたきわめつけの写真も重要だけれども「正面出し」の写真がプロの仕事としてはもっと重要だった。

プロ野球の選手が1シーズンに50本のホームランを狙うのと、200本のヒットを狙うのとでは、自ずから姿勢がちがうようだ。天気にも季節感にも恵まれないで現場に立ったとき、「正面出し」された写真はベストではないけれどベターではある。周囲の流れによってはそこにはまってくる可能性が残っている。なぜなら、それは対象そのものに肉薄している写真ではあるからだ。

プロの写真の場合、写真だけを見ながらだれが撮ったか予想できるようになるとすれば、それは千載一遇のチャンスをとらえた人ではなく、眼前に広がる光景から、風景としての正面を見せてくれる人ということになる。アマチュアの腕自慢とプロの稼ぎ頭との違いはそんなところに出てくるのではないかと思う。


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  【第56回】高峰高原・冬 「写真で見る山の歩きの魅力」
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