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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

講座 2007.12.13更新  

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【講座49】女性用ダブルストック


道具の資質という側面から

最近、同行する人たちのストックに「どうしても締まらない」とか「引き出せない」という状況が頻繁に起こる。以前はいくら締めようとしても空回りしてだめ、ということにほぼ限定したトラブルだったので、それは使い手側の小さなコツで解決できる範囲としてきた。

ところが最近のものはコツではすまない不都合なのだ。道具の作り方にまで関心がある人でないと不都合の原因がわからない、というたぐいのトラブルが頻発している。いうなれば伸縮できないストックになってしまう。自動車ならリコールしなければいけないような不都合なのだ。

男性の手を借りればどうにかトラブル脱出ができた時代が終わって、女性たちにはかなり使いにくい道具になってしまった。

私がダブルストックの導入を決めたのは1996年の秋だった。そのときのことはこの講座の第15回「ストックとステッキ」で書いたが、大きな段差の下りや、足元の危うい下りで筋力の弱い女性の安全性を高め、同時に(私にはこちらが本命だったが)チーム全体のスピードアップを図るために急遽ダブルストックを標準装備とした。

私はもともとステッキ使用の反対論者だった。片手で杖を使うと、からだのバランスがくずれる。そのひずみがかならず出るというあたりが第一の反対理由だった。

ダブルストックなら左右のバランスが崩れないし、下りで一瞬体重を支えるときに、腕力のない女性でも有効だろうと想像した。
■LEKIの初期タイプの締め具

ポールを時計回しすると先端のねじが回って、赤い締め具を押し上げながら開かせる。それが外側のパイプを内側から押さえつけて固定する。設置面積が小さいので開きがちょっと甘いとすぐに緩んだ

想像でこういう大きな問題を決定するのが私の悪弊だが、ひとつだけ確かめたことがある。何人かの人がもっていたストック(片手使用だった)で岩を強くつついてみた。当時すでにドイツのLEKI社のものが登山用品店では主流になっていたこともあり、石突きの食い込みにも十分満足して、LEKIを選んだ。いまLEKI社のホームページを見ると、ダイヤモンドに近い硬度の超硬合金の刃物を埋め込んだプラスチック製の石突き部(フレックスチップと呼んでいる)は、30度までの曲げに耐えて、シャフト本体の損傷を防ぐという。

当時、そういうことは知らなかったが、岩への刃の食い込みを見ただけで、LEKIの設計思想を感じることはできた。

LEKIは日本ではレキと読んでいるが、英語版のホームページでは「Lake-ee」と発音してほしいと書いてあるからレイキーかと思う。が本拠地でのドイツ語読みについては私には分からない。ちなみにLEKIは創始者の名前からLE、所在地からKIをとったというだけのもの。

飛行機関係の技術者でスキーヤーだったカール・レンハートがアルミポールを使用した軽量のスキーストックを作り、ビジネスを開始したのが1954年という。LEKI社の飛躍は、たぶん息子のクラウスがさまざまな新しいアイディアを持ち込んだ1984年以降だと思われるが、LEKIはトレッキングポールのトップメーカーとなる。


 しかし、私には不満があった。グリップベルトを左右逆に半ひねりずつしていたのだが、その表現が不十分、当時はダブルで使うという考えは少数派だったことから、ストックはバラして単体売りが基本だった。その結果、ダブルで買ったつもりが右手用2本だったり、左手用2本だったりした人が何人も出た。

そこで左右の違いは、けっきょくグリップベルトの半ひねりの違いだけということを突き止めて、左右どちらでも実用上はかまわないということを確認した。

つまり左右別々に用意しているのならそのことの表現をしっかりとしなければいけない。つまりLEKIの欠点はデザインの重要性をあまり認識していないことだった。

そこで、致命的なミスがもうひとつ露見する。3段伸縮の段のつなぎ目のところに黒い握り(状のもの)をつけて、滑り止め(状の)溝をつけてあった。だからユーザーのほとんどはそこを握ってパイプを回してゆるめたり、締めたりしていた。ところがそれはほとんど飾りだった。のり付けがはがれても何の支障もない上に、それを握り部分として締めようとすると、締まりきらずに緩むことが多かった。

LEKIの長さ調節は伸縮位置を決めたら、片手でグリップを握り、もう一方の手で先端部分を握ってぞうきんを絞るようにするのが合理的なのだ。なぜなら、当時の締め具はちょっとゆるいと効かない構造になっていた。3本のポールを同時に絞ることで、2か所の締め具を均等に締めないと、弱い部分が緩み始めることが多かった。

つまりそこでも、ユーザーの締め方をリードするデザイン処理に欠けていた。
■■LEKIの現行タイプの締め具

ポールを時計回しすると先端のねじが回って、内部の赤いガイドを押し上げる。そのガイドがブルーの締め具を内側から広げて、外側のパイプに張りつく。いま青い締め具が下がった状態で、さらに下がってポールに接すると戻りにくくなる欠点がある

現在ではスーパーロックシステムといって、弱い力でも締まりがよくなり、きちんと締めれば140kg以上の加重に耐えるうえに、ポールを1回転(360度)ゆるめても固定力が維持されるという。

たしかに女性でもきちんと締めることできるようになったのだが、こんどは縮めたまま、びくともしないことが頻発した。

下段のポールを反時計回りにすると内部の締め具が緩むのだが、回転目盛りに類するものがないので、止まるまで十分にゆるめて縮める人が多数派と考えられる。すると下がりきったナットが噛んでしまうのだ。そのまま位置合わせをして時計方向にいくら回しても締め具はなかで空回りしてどうにもならない。

……とここまで書くと、現在のLEKIポールで困っている人はそうだ、そうだと思うだろう。パイプ内部のすべりが良すぎるだの、締め具の表面が変化してしまったのではないかといろいろ見てみるがどうにもならない。

戻しすぎてねじが噛んでしまったために、締め具とパイプ内部の摩擦力ではねじが動き始めないのだ。ポールを抜いて締め具を締める方向に直接回してやれば簡単に元に戻る。

ねじの不都合はいずれ直ると思うのだが、デザインの欠如は、結局また新たな欠点を表出させるにちがいない。


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