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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

講座 2007.11.8更新  

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【講座48】「軽登山」という提案


「中高年登山」からの脱却

つい最近、私は「軽登山」という旗を掲げる決心をした。この連載のトップページにある「伊藤幸司主宰イベントのお知らせ」というのをクリックしていただくと【ひとりで歩くための「軽登山」技術講座】というのが出てくる。私がこれまで考え、発表してきた「中高年登山」に関する技術的な考察(この講座もそのひとつ)を、新しく「軽登山」という名のもとに整理し直そうと考えたのだ。

私がいわゆる「中高年登山」にかかわったのは1983年からだ。朝日カルチャーセンター横浜の「山登りの手帳――40歳からの日曜登山家へ」という講座に地図担当講師として参加した。そのときの技術講師は長谷川恒男さん(故人)だった。

講座は以後1995年まで40期続いて、大宮求さん、根岸知さん(故人)などの有名登山家が技術講師となった。「中高年登山」の草分けのひとつといえる。

その講座に関しては朝日カルチャーセンター横浜登山教室+伊藤幸司という名で『トレーニング不要! おじさんの登山術』(1990年・朝日新聞社)という本にまとめている。「おじさんの」というへんなタイトルにしたのは私自身が「中高年」という言葉に違和感を覚えていたことによる。「トレーニング不要」というのは、私だけの見解だったが、私が書いた本文のタイトルを書名にしてしまった。

■箱根・明神ヶ岳で― 2004.11.23

箱根外輪山の明神ヶ岳から富士山に向かってのびる道は、猪鼻岳とも呼ばれた金時山に至る。富士山と金時山の二重奏を楽しみながら

そのころ中年だった参加者で現在も私の会に参加している人がいるが、老年(高齢者)の領域に踏み込んでいる。厳密な規定はないようだが、いちおう40〜50歳代を中年と呼び、65歳以上を高齢者と呼ぶのが妥当なところといえそうだ。60歳代前半をどうするかというと、64歳までを生産年齢として数えるという要素を考えて中年に入れるという意見が現在のところ妥当かもしれない。

WHO(世界保健機構)などでも65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者としているという。そのような区分が一般的になりつつあるようなのだ。登山の世界では富士山の「高齢者登拝名簿」に記帳できるのが70歳以上なのだが、あちらは不老不死の山、下界とは基準がちがって当然だろう。

じつはほんの数年前まで、私は65歳あたりが登山年齢において大きな曲がり角だと考えていた。ご本人がさまざまな老化を感じて、山歩きで周囲に迷惑をかけるのを心配するようになる。そして家族も、年齢から生じる山でのさまざまな異変を心配する。

肉体的年齢を考える前に、社会的年齢が65歳あたりでの「引退」をせっついていた……ということに私も影響されていた。

ところがある日、69歳の人が「これから山歩きを始めます」と元気に登場した。「中高年になってから山歩きを始めた人」を私は中高年登山者の中核として「山の新人類」と呼んだことがある。それに従えば「高齢者になってから山歩きを始める人」、すなわち「高齢登山者」のみごとな登場だ。【ひとりで歩くための「軽登山」技術講座】にインターネット情報から参加したSさんは67歳で登山歴6か月だそうだ。

■北アルプス・燕岳で― 1996.8.24

高い山に登ったら、富士山をさがし、槍ヶ岳をさがす。槍ヶ岳登山の起点のひとつというべき燕岳で

中高年登山のブームは、じつは1980年代に始まったものが、そのまま20年移行してきたといってもいい。新しい「中年登山者」を生み出すというよりは、老齢化したブームを途中参加の同世代参加者がいくぶん底上げしてきたというのが正直な印象だった。

団塊の世代(ベビーブーマー)が新しい登山ブームを巻き起こすという期待を私のこの連載も担っているのだが、じつはなかなかそういうわけにはいかない。そこに堂々たる高齢登山者が出現して新人として上達のステップを歩み始めると、周囲がざわめいた。

65歳超の人々が「引退」の時期をさぐっていたところに、新人が「70歳超」を目指しているという衝撃がきた。多くの人が「引退」を保留もしくは撤回してしまったのだ。

私の周辺ではたちまち老人パワーがみなぎって、「年長者がエライ」という価値観が一気に広がった。たちまち70歳超のメンバーが増えて、元気さを競い合う状態になっている。

私がかかわってきた中高年登山は中年登山主体から前期老齢者を中心にする高齢者登山にシフトしてきた。もとよりその技術的問題点も大きく変化している。私は「中高年登山」というあいまいさにずっと引っかかってきたのだが、今年(2007年)の9月に「70歳対応の槍ヶ岳」というのを実施したとき、泊まった槍ヶ岳山荘(槍岳山荘を改称)の二段ベッドで「軽登山」という言葉を思いついたのだった。


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