ナビゲーションの三種の神器
かつて「地理的探検」と呼ばれたものは、地図の空白部を行動領域として、地図をつくる旅だった。
ポルトガルとスペインが競い合った大航海時代もそうだし、シルクロードに向かったヘディンもそうだった。南極点に最初に到達したアムンセンも、たどった1本の線によって地図上の空白部を埋めたと考えていい。
中国で発明されたという方位コンパスが、その最初の強力なナビゲーションツールとなった。太陽が真南(南半球では真北)に位置するときの高度を測れば緯度がわかる。そのために工夫されたのが六分儀だ。
大航海時代を支えた第2のナビゲーションツールはクロノメーターだった。船の揺れにも狂わない高精度の時計である。これによって、太陽の南中時刻の変化によって経度の変化を知ることができるようになった。
方位コンパスとクロノメーターによって、船の進路を推測する精度が飛躍した。
その後、海や空の航行ではラジオビーコンが電波灯台として整備されて、最後には静止衛星をもその電波灯台に組み入れるまでになった。
陸上では、地図が進歩した。20世紀の大事業としてすすめられた「100万分の1国際図」がヘディンなどの古典的地理的情報に加えて、第1次世界大戦、第2次世界大戦の航空機による写真測量の成果を取り入れてほぼ完成というころまでこぎつけた。
……と思ったら、米国が衛星測量による地図によって全世界の航空用地図を100万分の1(戦略航空図)と50万分の1(戦術航空図)というかたちで整えて、民間航空機用としてはもちろん、一般向けにも販売した。
そしていま、低軌道の軍事偵察衛星に由来する衛星写真地図とGPS情報によって、地理的空白など探しようのないない時代になってしまった。
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| ■奥武蔵の大持山登山口で ― 2000.1.8 秩父の熊倉山に登ろうと思ったら、崖崩れで登山道が閉鎖されていた。方向転換して武甲山の裏から大持山に登ることにした。途中で方向転換するときには慎重さが必要だ |
さて、三種の神器の3番目だが、「地図」としても「GPS」(携帯GPSレシーバー)としてもいいのだが、ここではそうしたくない。
地図はすでにインフラとしてあまりにもベーシックだし、GPSはラジオビーコンの進化版だ。デジタル地図を収納したGPSを持てば決定的ともいえるけれど、かならずしもそうではない。とくに日本の山岳では。
GPSレシーバーは複数の低軌道衛星からの信号を同時にとらえることができる。最近のものは12チャンネル受信などとして精度を上げている。衛星の方向と距離から三角測量で現在位置を計算する。
軍事利用の精度をあえて落として民間に開放しているといっても、正確な基準点を定めて使うと、危険な土木作業で無人のブルドーザーなどを使うときに数十センチの精度でコントロールすることができるという。
日本で普及しているカーナビゲーションも、主要な交差点などから得られる補正情報によって車は驚くほど高精度にガイドされる。
平地でも逐次補正が有効なGPS情報だが、日本の山岳は低い山でも急峻という特徴がある。富士山に代表される30度の傾斜面では100m先で60m上がっている。同時に道はこまかく方向を変え、登山者の動きも遅いので、進行方向も示しにくい。
そのことから、日本の山で使いやすいとされるGPSレシーバーには最近、電子コンパスと電子高度計が内蔵されて、情報を補完するようになってきた。もちろん時計機能は骨格部分に組み込まれている。
日本の登山用ナビゲーションの三種の神器の第3は高度計としたいのだ。
