10度Cの上と下
雨具についての基本的な考え方は講座17の「雨具についての考え方」にほとんど書いた。
この季節(夏)に強調したいのは、ゴアテックスなどの透湿防水性能にも限界があるということだ。私は気温10度Cを境にして、透湿防水機能のレインスーツをまったく別物と見たいのだ。
理由はふたつ。ひとつは体温を36度Cとすると気温との温度差が26度Cになることだ。
この温度差が、外部の風をシャットアウトする防風機能にもかかわらず、内部の暖かい空気が上昇して逃げていく換気機能をもたらしてくれる。森林帯での雨なら雨粒はほとんど素直に上から降ってくるので、フロントジッパーを開けておいてもほとんど濡れない。ヒートアップしそうな体熱はどんどん上昇して逃げていく。
もうひとつは、10度Cを割ると、外気温がからだを冷やす方向に働きはじめる。私は温度計で測らずに手のひらで「10度C」を検知するように心がけているのだが「10度C」では、そこに風が加わると寒さ・冷たさを感じる。指先が「かじかむ」という方向への一歩が始まるのだ。
10度Cの環境に素肌をさらすと、からだにストレスがかかりはじめる。「5度C」までなら大丈夫とか「0度だって問題ない」という人もいる。私も同じ服装のままどこまで低温に耐えられるかチェックしてみることは多い。ただ、それは増大するストレスにどこまで対抗できるかという問題であって、ここで私がいう「10度C」は温度低下が体温に影響を与えるスタートラインと考えている。
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| ■8月11日の標高1,600m ― 2001.8.11 南大菩薩の湯ノ沢峠〜大蔵高丸〜大谷ヶ丸の稜線は14回歩いたが、この日が最高の花だった。雨が降ったり、ガスがかかったり、薄日が射したりするときに花が主役に躍り出る |
気温が10度Cだとして、それより気温が下がっていくとか、風が強くなるとか、雨でからだが濡れるとか、汗で肌着が湿るとか、どのような原因であれ、からだにストレスとして加わるものが重なってきたら、まずはそれを排除することを考えたいのだ。
透湿防水スーツはそのときに絶大な効果を発揮する。からだにストレスとして加わってくる湿り気を効果的に防いでくれるからだ。夏にエアコンを冷房にするか、除湿にするか悩んだときの、除湿機能をはっきりと確認することができる。防水オンリーのビニールガッパや、ザックカバーに多いハイパロン加工の防水100%雨具と着比べてみたら内部湿度がまったくちがう。
……で、外気温が10度Cというのはどういう季節かというと、おおざっぱに春なら桜、秋なら紅葉と考えていい。晴れて風がなければ気分爽快だが、天気によっては冬になる。気温10度Cが突如崩れる危険をはらんだ季節といえる。
ところがいまは真夏。下界は30度Cの真夏日はおろか35度Cを越える猛暑日になっている。大気の温度は1,000m上昇するごとに6度C低下するというから標高3,000mの稜線では12度Cから17度Cということになる。
日本アルプスの稜線では、真夏の真っ昼間でも気温10度Cという境界温度が意識される。悪天候になったり、朝夕では10度Cを割り込んでくる。透湿防水機能がその効力を発揮する条件がととのってくる。
しかし、標高2,000mを越えない低山の、樹林におおわれた夏の山道では、10度Cはなかなか割らない。Tシャツ1枚でも暑いのだから、レインスーツを着るというのは乱暴な選択といわざるを得ない。
私の考え方を十分に知っている人たちでも、雨具をつけるとなると上下きちんと着て、スパッツで靴まわりの汚れまで完璧に防ごうとする。「濡れないように」したいのだ。
それなのに濡れてしまう。登りではどうしたって汗をかく。透湿防水機能といっても、とうてい追いつかない汗をかいて、内部から濡れてしまうのだ。
