「足元」を見られた話
足ごしらえについては、この講座の第3回「最初に用意する装備」(2005.11.15)と第5回「登山靴を買う前に」(2005.12.20)に書いたので、今回はその続きということになる。
結論からいうと、世の中は私が永らく望んできた方向に大きく動いているといえる。山歩き用の靴が限りなくウォーキングシューズに近づいてきた。
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■新しい防水運動靴 ― 1998.1.20

1998年1月の写真だが、雪の陣馬山への登山口で。左はミズノの空気穴のない合成皮革の防水運動靴(アシックスのスノトレと同等品)。右はナイキのゴアテックス防水運動靴 |
話はちょっとずれるが、先日(2月下旬)北八ヶ岳の北部を歩いた。ある小屋に泊まって、翌日は蓼科山までというスケジュールだった。
着いた早々、小屋の人に注意された。
「足ごしらえを見ると、蓼科山までは無理ですね」
翌朝、出発の前にも、もう一度、
「あなたの足ごしらえと、メンバーのようすでは、無理だと思う。止めることはできないけれど、事故が起きたらどういわれるか、わかっていますね」
真冬の北八ヶ岳にはここ10年間、ほとんど毎年来ているけれど、面と向かってそういわれたの初めてだった。
以前、テレビの仕事で冬の山小屋を連続取材したときに、黒百合ヒュッテの米川正利さんと下ったが、私が運動靴にレジ袋(手提げポリ袋)をはいて軽アイゼンをつけているのを見て、
「私らはゴム長靴1本ですけれどね」
と、ちょっと微妙な言い方をしていた。
それ以外、だいたいの山小屋に泊まったけれど、マナーにうるさい小屋も含めて、北八ヶ岳でそういわれたことはなかった。すなおな感想が聞けて、じつはうれしかったといっていい。
真冬のマイナス10度Cの山で、メッシュのランニングシューズはやはり問題だ。見過ごしにはできないはずだ。山小屋の責任者として、注意すべきは注意するというその小屋の姿勢は好感を持てた。
まったくそのことによって、私が年間100日前後を、1足の運動靴(ランニングシューズやスニーカー)ですませているデモンストレーションが、まだどうしても危険思想としか理解されないことが明らかになる。
山の本でも、入門登山のリーダー的存在が「足ごしらえ」を説いている。スニーカーで山に行くなどもってのほかだと。
山の常識がそうなので、私にそそのかされて運動靴派になった人が登山ツアーに参加したり、山のグループに加わったりすると、お叱りを受けるという。「足元」を見られるのだ。
私はもちろん、粋がりで運動靴を履いているのではない。きちんとした軽登山靴を履いている人に対しては、下りでつま先が下げられなかったり、老齢化による脚力の衰えを感じる場合、それと足に合う靴がなかなか見つからない人に対して、運動靴への履き替えを強くすすめてきた。
いわば救命救急の方法として、足裏の感覚と重心移動の微妙な感覚を取り戻すために運動靴を利用してきた。