10℃
| 雨具をレインウェア(雨着)として考えるときに一番重要な境界を、私は「気温10℃」と考えている。 10℃というのは、外気にさらしている手がかじかむ方向でこわばってくるという目安になる。もちろん個人差もあるので、10℃という数値より、手先がかじかむ方向に進むかどうかという予兆という意味が重要だ。 かんたんにいえば、手がかじかむ感じのある気温まで下がったら、「雨から徹底的に身を守る」ということだ。 |
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| 当然のことながら、レインウェアをつける。今後雨が激しくなりそうだったり、降り続くように思えたら、下半身もがっちり守る。あずまやなど、そういう作業のできる場所を見つけたら逃したくないし、今後の予想がはっきりしたら、状況が悪くなる前にリーダー判断で早めにそういうチャンスを見つけておきたい。
10℃以上ならどうするのか。レインウェアに頼らないで雨を避けることを、まず考える。雨傘がある。入門編の山歩き講座の時には、使い捨てのビニール雨具を用意してもらう。仕事上、こちらで勝手に雨具の心配をしておかなければならないケースでは、ポリ袋(ゴミ袋)でいつでも雨具をつくれる準備は整えておく。 10℃以下の場合、私は躊躇なく完全防備に入る。過剰防備を恐れない。 |
ゴアテックスの奇跡
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米国のデュポン社にいたゴアさんが発明した、多孔質フィルムを布に貼りつけたものが透湿防水布としてのゴアテックスだ。くわしいことはわからないがポリテトラフロロエチレン(PTFE)というフッ素樹脂を引き延ばして網目状の多孔質フィルムを作り出したという。 私がゴアテックスのすごさを初めて耳にしたのは早稲田大学山岳部の若手OBとしてヒマラヤのK2(8,611m)西稜初登攀に成功した大谷映芳さん(テレビ朝日ディレクター)の体験だった。「水浸しのテントの中で安眠できた」と驚いたという。ゴアテックスのシュラフカバー(スリーピングバックカバー)の奇跡だった。 周囲のみなさん、とくに主婦のみなさんは山から帰るごとにゴアテックスを洗濯し、ときどき「防水スプレー」をするという。ズボンについた泥汚れを落とすのがたいへんとか。 撥水スプレーの場合には「フッ素」系のものでなければならないのと、フッ素系撥水スプレーは吸い込むと非常に危険なので風のある外気中でおこなう注意が必要だ。 ともかく、汗をかいたらせっかくの透湿機能が低下する……というわけだ。だから10℃以上の環境では、登りは濡れることをおそれずに行動して、体が冷える下りでは雨着でからだを包んで蒸らしながら乾かしていくというイメージを提案したい。 |
かさ
| 私が本来の雨具としてイメージしているのはかさ。ここ数年は近くの生協でいつでも買える500円の2段式折り畳みかさを使っている。 3段のかさには軽いものが多い。コンパクトでもあるから合理的なのだが、私はなにしろ年間100日は山に行くので、3段のかさはすぐに壊れる。雨の中でも写真は撮るので、レンズに雨粒をつけたくない(カメラやレンズには相応の防滴機能があるけれど)。 だから強引にかさをさして歩くし、雨着をつけているときでもカメラのためにかさは使う。 |
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| もちろんどこまでかさを使えるかは実験済みだ。台風の直撃(超接近状態)は立山、伯耆大山、安達太良山、南八ヶ岳、などで経験しているが、樹林帯のなかにいる限り、かさで全然問題ない。東京の高層ビル街のような乱暴な風はまったく吹かない。 ただ、かさからのしずくが前方はヒザから下を濡らす。これは基本的に問題ないのだが、後方はザックに落ちる。土砂降りの雨がザックの背中を流れ下るようになると、それがザックの底で回り込んできて、ベルト位置あたりから尻にくる。そのおかげでズボンの後側がパンツまでびしょ濡れになってしまう。着替えないといけないところまでいってしまう。 そこで、豪雨の中を歩くときには早めに雨着のズボンをはくようにしている。 とりあえずの技術課題は、かさをさすのに躊躇する人たちがいることだ。歩くのが不安定になって怖いという場合だ。それは危機管理という視点から尊重しなくてはいけない。その人の技術レベルが低いだけだから。 もうひとつ、ダブルストックで歩いているのでかさをさせないという人がいる。そこで強制的にかさをさして、シングルストックで歩いてみてもらったら、重要な問題が見えてきた。 ダブルストックをシングルにするときには谷側の手で使うのが大原則だと私は考えている。そうすると岩場でもストックが有効に機能するし、クサリ場でもストックがかなり使える。 ところがかさをさしながらストックを谷側の手でもつと、利き手でないときにすごく不安だという人がつぎつぎに出てきた。 要するに、ダブルストックといいながら、実際には利き手に偏って使っていたのだ。両手で平等に使えるように努力しておかなければならないということに、気づかされた。かさをさして、ストックを使いながら歩くのは危険な側面ももっている。しかし同時に、あわてずにゆっくり歩く練習としてはなかなかいいシチュエーションだということになってきた。 |
ゴ靴と靴下
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雨具というとレインウェアがパッと浮かぶけれど、じつはもっともユーザーを悩ませている雨具がある。靴だ。 靴については第5回の講座
防水靴下にはゴアテックスのものもあるが、米国シールスキンズ社(英国が元祖かもしれない)のものが伸縮性があって格段に優れている。米国の通販だと30ドルくらいでも買えるけれど、日本では倍近くする。しかも登山用品ルートでの輸入はなくなったとかで、バイク用として探したほうが早いのが現状だ。 |
ゴミ袋
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一時期テレビの仕事をしていたときに、ほとんど無防備でやってくる下請けのテレビクルーをアウトドアの現場に連れて行くために、即席の雨具を開発した。90リットルのゴミ袋をもっていれば、1枚で簡易ポンチョ、2枚で貫頭衣+巻きスカート、3枚あれば寝袋代用という雨具を提供できるようになった。 これは子どもを集めたときにも有効で、コンビニでも売っている70リットルのゴミ袋を1人3枚あて用意しておけばほぼ万全の準備といえる。 それから、底辺が30cmの手つきのポリ袋(いわゆるレジ袋)を包装用品店で仕込んでおくと、靴や足の防水に対する緊急対応が可能になる。 雪の山だと簡単で、靴ごとポリ袋をはいて、軽アイゼン(あるいはかんじき、スノーシュー)をつけてしまえばいい。 雪でない場合には、たとえばポリ袋を靴ごとはいて、細い布粘着テープ(雨で濡れたところにも比較的よくつく)で足を |
| ぐるぐる巻きにする。そして靴底の部分だけを切り取って、ポリ袋をひさし状に切り残す。ずいぶん実験したが、じょうずな歩き方が問われるので人を選ぶ段階だ。 行動中は濡れていい、として、下山して風呂に入って、帰りの電車というときには、靴下を履き替えてポリ袋をはいて、足を濡らさないようにして濡れた靴をはくという処置もできる。これは蒸れるのと、足が靴のなかでよく滑るのとで快適とは言い難いが、濡れた足から体が冷えるのはくい止められる。 |
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手袋
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10℃以下の季節というのは、紅葉から新緑までと考えるのが現実的だ。北アルプスの稜線なら9月下旬から7月初旬と考えたい。関東平野周辺の低山なら11月から5月となる。 |
ザックカバー
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私はここ数年ザックカバーを使うようになるまで、雨具としては半端な道具だと考えていた。 |



