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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。

物語 2007.10.25更新  

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【物語2】EPIgas(ユニバーサルトレーディング)


「ブタン/プロパン・ミックス」という新燃料

以前、登山用のクッキングバーナーで灯油やガソリンが主流だったころ、ガスバーナーを「ブタンガス」と呼んでいたことがある。

今思えば、それは1949年にフランスで生まれたコンパクトな「ブタンガスカートリッジ」で、商品名はキャンピングガス(CAMPING gaz)といい、ブルーの缶に入れられていた。

イギリスではEPIガス社(EPIgas International Limited)が1950年に創業し、アウトドア用のガスバーナーやランタンに革命を起こすことになる。


■1989年(平成1)に発売になったマイクロスーパーシリーズの100gカートリッジ。「Butane/propan mix」とあり「TAYMAR LTD, STOOKPORT, ENGLAND」とある

イーピーアイ・ガス(EPIgas)は「ブタン/プロパン・ミックス」という高火力のガスカートリッジによって、単にアウトドア用、キャンプ用というだけでなく、本格的な登山にも十分使えるという評価を得る。

EPIgasカートリッジのもうひとつの特徴は、ボンベとバーナーヘッドの随時の脱着を可能にしたこと。これによって携行性が格段に向上した。この規格は現在ではグローバルスタンダードというべきものになっている。

いま、EPIgasの日本での輸入販売元であるユニバーサルトレーディング株式会社から正式の組成データは公表されていないのだが、レギュラーガスはブタンに少量のプロパンを加えてある。ウインタースペシャルとパワープラスはプロパンを増量して高出力を計っている。エキスペディションスペシャルになるとプロパンの比率をさらに多くして、容器もその圧力に対抗すべく改良されている。

私は昭和40年代からのガソリン派だったから、レギュラーガソリンも利用したし、少々の液漏れでも扱える自信があった。なによりもあのゴーッとうなる火力が頼もしく、ガスなどとても実用にならないと思っていた。

最初にアレッ? と思ったのは、ガスの弱火の安定性だった。テント内で使用するときにはガスの弱火はガソリンにはまったく不可能な、きわめてデリケートなコントロールを実現してくれた。

そのうちに、ガスにも高出力のバーナーヘッドが登場した。それが一般家庭のガスレンジに匹敵する、あるいは凌駕するハイパワーだといわれるころ、その火力は完全に灯油やガソリンを抜いていたということを知る。

高出力は大人数の食事を準備したり、雪から水を取るときに重要だが、時間がたっぷりあるときには、弱火でエネルギーのロスを少なくして熱効率を重視したい。無風状態のテント内ではとくに、小さな炎は灯火の代わりもし、おだやかな暖房にもなり、単なる料理用コンロにとどまらない。

EPIgasは液化ガスという上質なエネルギーを携帯可能にすることで、灯油やガソリンを特殊な領域に追いやったといえる。


さて、そのガスだが、炭素数3のプロパンと炭素数4のブタンがLP(液化石油)ガスを構成している。この「液化ガス」は常温・大気圧下では気体だが、圧力を加えると比較的簡単に液体になる。

20度Cにおいてブタン(正確にはノルマルブタン)は2気圧(atm)の圧力を加えると液化するが、プロパンは8気圧の圧力が必要になる。

プロパンはブタンより高圧型の容器を必要とするのだが、マイナス42.1度Cまで気化がおこなわれる。それに対してブタンは容器の耐圧性は低くてもいいのだが、液体が気体になる沸点がマイナス0.5度Cなので、気温が下がるととたんにガスの出が悪くなる。


■EPIgasの日本での販売元・ユニバーサルトレーディング株式会社で。EPIgas担当の松崎健克さん

ブタンガスはガスライターのような簡便なガス注入システムで使えるので、それをキャンプ用ガスカートリッジに利用したのはひとえにその圧力管理の容易さからだった。ただ沸点が約0度Cであるということが、寒い場所やカートリッジが冷えた状態でのパワー不足になっていた。

一方、プロパンガスにすると簡便な容器ではすまなくなる。簡便な圧力容器でできるかぎり低温でも必要な火力を得たいというバランスの取り方によってEPIgasの「ブタン/プロパン・ミックス」という混合燃料が登場したのだった。

ユニバーサルトレーディング株式会社の年表によると、EPIgasの創設が1961年となっている。おそらくそれは英国・タイマー社(Taymar Ltd.)によるEPIgasの製造に関するものではないかと思うが、1974年にEPIgasの「BP型コンロ」が発売された。BPはバックパッカーズの意味だそうだが、BPという型番名称は現在まで引き継がれている。

EPIgasは現在のキャンプ用ガスカートリッジの基本形を作り上げて、ついにガスを灯油やガソリンに代わる燃料に育て上げた。1978年(昭和53)にその「BP型コンロ」が国内初登場、着脱式ボンベと高出力によって着実に地歩を固めていった。

なお念のため、ウインタースペシャルとパワープラスはガスの組成は同じだが、パワープラスのガスカートリッジでは内壁に特殊シートを加えて、気化効率を上げている。


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