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| ■温湯温泉・佐藤旅館 ― 2005.10.11 |
| 本館の廊下から中庭を見る。木造の古い旅館はいまや快適とはいえない。山小屋と比べたら天国……ともかぎらないが、旅情という方向でのリスクとメリットは同等と考えることができる。 |
私の栗駒山はいつも計画失敗からの再起動というものだった。この秋にも計画をしているのだが、やっぱりおなじようなドタバタになるのではないかと予感している。
なぜか。東北の山では一般的な問題なのだが、山の標高が低く、観光道路が山麓深くに入り込んでいるので、登山のベストシーズンは同時に観光のベストシーズンとなることが多い。

少人数で避難小屋を利用したり、テントを持参する計画であれば観光客との重複を心配することはないのだが、本州中央部の山岳地帯のような山小屋(営業小屋)がないために、「行けば何とかなる」というわけにいかない。麓の温泉宿に泊まることを考えるわけだが、山深い一軒宿だと、部屋数が少ない。満室という答えが帰ってくる。
東北の山に、花や紅葉のベストシーズンに行こうと考えたら、早くから宿の手配をしておかなければいけない……ということなのだが、私の場合は懲りずに右往左往しつつある。悪弊といわざるをえない。

最初の時、10月下旬の土曜日に宿を探したのだが、どこも満室で打つ手がなかった。仕方なく一関の駅前旅館に泊まって、翌朝タクシーで須川温泉まで上がった。
標高約1,100mの須川温泉から標高1,627mの栗駒山は軽めの日帰り登山の規模だから、下りを長くとるために湯浜温泉への道をとった。
ところがその日は冬の吹き出しで、花咲爺さんが一夜で山頂部に白い花を咲かせていた。山頂稜線だけが冬になったのだ。風が強く、やせた尾根なら危険を感じるほど。しまった、時期が遅すぎたかと後悔しながら下りにかかった。
ほんの100mも標高が下がると、風はなくなり、ガスも晴れた。晩秋という印象の草原から、次第に森林帯に踏み込んでいった。するとブナの黄葉があらわれた。深い森は秋の気配につつまれて、どこまでも続いていた。

2度めは季節を変えてみた。黄葉のブナ林は当然、新緑もすばらしいはず。同じ計画でやってみると、遜色のない満足感が得られた……と思う。一関泊まりにしたお陰で、蔵元レストラン・世嬉の一(せきのいち/TEL 0191-21-5566)での夕食を楽しめることになり、これが1泊2日の印象を驚くほどいいものにしてくれた。山にスパッとはまらない場合の右往左往ではいろいろ調べる。副産物が期待できるともいえる。

3度目は、紅葉・黄葉のベストシーズンをねらってみた。須川温泉の圧倒的な湯量を見て泊まりたいと思ったけれど、やはり満室でだめだった。そこで山麓の温泉宿をひととおり調べてみると温湯(ぬるゆ)温泉・佐藤旅館(TEL 0228-56-2251)の古い本館に泊まれるという。すぐ近くに仙台藩寒湯(ぬるゆ)番所跡というのもあるらしく、伝統のある温泉らしい。
佐藤旅館の本館は、廊下が全面ガラス戸で、それも小さなサイズのゆがんだ板ガラスをはめたもの。床はなんとなくスプリングが効いて、部屋に鍵はかからない。旅行スタイルならちょっとわびしくなるところだが、山の服装では風流な部屋といえる。旅行では一瞬躊躇するすきま風が入り込むような古い宿が、登山スタイルでは楽しみになってくるので、ついついリスクを冒して安宿さがしをやってしまう。
佐藤旅館は大当たりだった。加えて、宮城県側に泊まったので、前日の足慣らしに意外な山が浮上した。東北新幹線を古川で下りて、加美富士(553m)というのに登った。
南麓の、標高300mに泊まったことによって、栗駒山の一般登山道で一番長いルートを選ばなければならなくなった。どちらかといえば入門編にもかかわらず……だ。

長い道のりにずいぶん心配したけれど、林道が18ポイント(シミュレーションマップの赤○と青◇の数。1個=1ポイントとして、とりあえず8ポイント=1時間と換算する)なので約2時間。登山道に入ると38ポイントなので、山頂まで約5時間。ちなみに湯浜温泉ルートも38ポイントなので登山道部分のボリュームは全く同じ。
ゆっくりとできるだけペースを抑えて歩いたことで、紅葉・黄葉の森林は心楽しい旅になった。そして標高1,400mあたりまで登って頂上稜線に立つと、紅葉不作の年にもかかわらず、すばらしい秋の風景が広がっていた。

というわけで、今回は登山のガイドというよりも、中腹以下の森林散歩をすすめたい。
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