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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。
日本365名山  

第22回 尾瀬・湿原めぐり

栗駒山 ― 1,628m
栗駒山は宮城・岩手・秋田3県の国境にあって、東北を代表する山のひとつ。おおらかな山容の下部は広大な森林となって広がっている。
登頂するだけなら宮城側のいわかがみ平バス停からでも、岩手側の須川温泉バス停からでも標高差約600mの日帰りの山。
最短ルートを選択すれば、東京からの新幹線で日帰りも不可能でなく、夜行高速バスなどを利用した登山も可能。しかし周辺に
 
■栗駒山の紅葉 ― 2005.10.12
画面左奥に山頂が見える。南に下る斜面が秋の気分を存分に味わわせてくれた。
は魅力的な温泉がたくさんあるので、前泊してゆったりと登山を楽しみたいところだ。
ここでは栗駒山の一般登山道ではきわだって長いルートを紹介するが、山頂を極めるより、山麓でゆるやかに流れる時間を味わうことが、この山にはふさわしいと感じるからだ。

アプローチ
バスを有効に利用できるのは東北新幹線一ノ関駅から須川温泉行きのバスが2本。7:30→9:04と14:30→16:04(1,450円)。4月30日から11月5日までの土休日運行だが、夏休みと紅葉の10月1〜15日は毎日運行される。ちなみに帰りは10:00→11:26、17:00→18:26(岩手県交通 一関営業所 TEL 0191-23-4250)。
ひとつ手前の東北新幹線くりこま高原駅からは、いわかがみ平行きのバスが出ている。8:40→10:10、13:00→14:30、帰路は10:30→12:00、15:30→17:00で料金は1,500円。こちらは4月下旬から11月3日まで土休日運行で、夏休み中は毎日、紅葉の10月中は金曜日も運行される(宮交栗原バス TEL 0228-45-5657)。
タクシーは一ノ関駅から須川温泉までが約13,000円、くりこま高原駅から湯浜温泉までも約13,000円とほぼ同距離にある。一ノ関駅には第一観光タクシー(TEL 0191-23-1111)があって、ジャンボタクシーも利用可能。くりこま高原駅には栗原観光タクシー(TEL 0120-25-2313)や栗駒タクシー(TEL 0228-45-2231)などがあるが、温湯温泉に近いのは山口タクシー(TEL 0228-54-2319)。あるいはマイクロバスは築館観光レンタカー(TEL 0228-22-5204)に相談するといい。
温湯温泉へはバスの乗り継ぎが可能で、手前の仙台藩寒湯(ぬるゆ)番所跡のところには花山温泉・温湯山荘(TEL 0228-56-2040)があり、奥にある温湯温泉・佐藤旅館(TEL 0228-56-2251)と合わせて次のような手順でたどることが可能とか。「JR東北新幹線くりこま高原駅から宮城交通バス栗原中央病院行きで12分、築館営業所で宮城交通栗原バス富野原行きに乗り換えて54分、座主で宮城交通バス温湯行きに乗り換えて約30分」。ついでさらに奥にあるのは、湯ノ倉温泉・湯栄館(TEL 0228-56-2878)、湯浜温泉・三浦旅館(TEL 090-8925-0204)。これらは花山村・温泉郷と総称されているようだ。
栗駒山山麓のいわかがみ平周辺はくりこま高原温泉郷とされ、宿泊施設としては、駒の湯温泉(TEL 0228-46-2110)、くりこま荘(TEL 0228-46-2036)、いこいの村栗駒(TEL 0228-46-2011)などがある。
須川温泉には岩手県側の須川高原温泉(TEL 0191-23-9337)と秋田県側の栗駒山荘(TEL 0182-47-5111)とがあって、一般に須川温泉と呼ばれているのは須川高原温泉のほう。

ルートシミュレーション

この地図の範囲は国土地理院1:25,000地形図、新庄3号-3(くりこまやま)、新庄3号-4(きりどめ)、新庄7号-1(かつらざわ)、新庄7号-2(いくさざわ)、でカバーされる。
赤い○印は標高50mごとに置いた半径50mの円。青い◇印は山頂から約500mごとの水平距離。○印の間隔によって登山道のある斜面の傾斜を把握できる。
さらにこの地図の特長は、○印と◇印をどちらも1個(1ポイント)7.5分(2個で15分、8個で1時間)と仮定して、時間とエネルギーを概算できること。
ルートマップ拡大図

【研究23】栗駒山 width=

複雑な三面相

中央火口丘・剣岳
■中央火口丘・剣岳 ― 2005.10.12
栗駒火山の外輪山にあたる栗駒山山頂から北面を見下ろすと、小さな集落と見えるのが須川高原温泉の建物。その中間に盛り上がる山が中央火口丘の剣岳。大きな火口をもった山だということがわかる。

この山を栗駒山と呼んだのは南麓に広く広がる宮城県だ。北東部をしめる岩手県側では須川岳、北西部をしめる秋田県では大日岳であったという。宮城県側の栗駒山の名称は、山麓の田園地帯である栗原から残雪期に馬の雪型が見えることからという。雪型はもちろん農作業の重要な暦として利用されたにちがいない。

日本の山は、四方から見える山であれば、複数の名前がつけられていたと考えるのが普通で、見えない山であれば、流れ出る川の名前をつけたものが多い。山にまで生活圏を広げていた人々にとって、山は川の源流だった。岩手県の須川は磐井川となって一関に流れ出て、北上川に合流する。

秋田側の大日岳は文字どおり「だいにち」と読むほかに「おおひ」という読みを示している文献もある。生活圏から遠く離れ、しかも硫黄性の噴気を盛んにあげる旧火口が広がっているところから、ある時期に知識人によって命名されたと想像する。宗教的な命名や高尚な漢語の名は江戸時代に各藩の国境管理に必要だったり、明治以降、観光キャンペーンとして考えられたものがあんがい多い。


栗駒山は、東北の山がしばしばそうであるように、顕著なピークをそびえ立てたりしていない。コニーデ式の複式火山だそうで、山頂(現在の最高点)は外輪山のひとつ。山頂と須川温泉との中間にある剱岳が中央火口丘とされ、周囲の湿原は火口原とか。それもなかなかわかりにくい。

山頂稜線にまで上がれば展望もよく、どこまでも続く山並みの足元に大きな山岳を意識することができるけれど、標高1,400mあたりまで下がってしまうと樹林帯に入って、展望は遮られる。そして標高1,100mあたり、南麓なら大地森、北麓なら須川温泉あたりまで下ると東北ならではの深いブナの森が広がっている。

緑の魔境というにはやさしく、清潔感があるけれど、果てしなく広がる深い森の中をさまよい歩く趣をたっぷりと味わうことができる。登山道という安全弁にまもられつつ、広大なブナの森をゆっくりと歩くとき、栗駒山のいくぶんメリハリに欠ける山容が、かえっておおらかさをふくらませていると感じる。

登山と観光のはざま

尾瀬の強力さん
■温湯温泉・佐藤旅館 ― 2005.10.11
本館の廊下から中庭を見る。木造の古い旅館はいまや快適とはいえない。山小屋と比べたら天国……ともかぎらないが、旅情という方向でのリスクとメリットは同等と考えることができる。

私の栗駒山はいつも計画失敗からの再起動というものだった。この秋にも計画をしているのだが、やっぱりおなじようなドタバタになるのではないかと予感している。

なぜか。東北の山では一般的な問題なのだが、山の標高が低く、観光道路が山麓深くに入り込んでいるので、登山のベストシーズンは同時に観光のベストシーズンとなることが多い。


少人数で避難小屋を利用したり、テントを持参する計画であれば観光客との重複を心配することはないのだが、本州中央部の山岳地帯のような山小屋(営業小屋)がないために、「行けば何とかなる」というわけにいかない。麓の温泉宿に泊まることを考えるわけだが、山深い一軒宿だと、部屋数が少ない。満室という答えが帰ってくる。

東北の山に、花や紅葉のベストシーズンに行こうと考えたら、早くから宿の手配をしておかなければいけない……ということなのだが、私の場合は懲りずに右往左往しつつある。悪弊といわざるをえない。


最初の時、10月下旬の土曜日に宿を探したのだが、どこも満室で打つ手がなかった。仕方なく一関の駅前旅館に泊まって、翌朝タクシーで須川温泉まで上がった。

標高約1,100mの須川温泉から標高1,627mの栗駒山は軽めの日帰り登山の規模だから、下りを長くとるために湯浜温泉への道をとった。

ところがその日は冬の吹き出しで、花咲爺さんが一夜で山頂部に白い花を咲かせていた。山頂稜線だけが冬になったのだ。風が強く、やせた尾根なら危険を感じるほど。しまった、時期が遅すぎたかと後悔しながら下りにかかった。

ほんの100mも標高が下がると、風はなくなり、ガスも晴れた。晩秋という印象の草原から、次第に森林帯に踏み込んでいった。するとブナの黄葉があらわれた。深い森は秋の気配につつまれて、どこまでも続いていた。


2度めは季節を変えてみた。黄葉のブナ林は当然、新緑もすばらしいはず。同じ計画でやってみると、遜色のない満足感が得られた……と思う。一関泊まりにしたお陰で、蔵元レストラン・世嬉の一(せきのいち/TEL 0191-21-5566)での夕食を楽しめることになり、これが1泊2日の印象を驚くほどいいものにしてくれた。山にスパッとはまらない場合の右往左往ではいろいろ調べる。副産物が期待できるともいえる。


3度目は、紅葉・黄葉のベストシーズンをねらってみた。須川温泉の圧倒的な湯量を見て泊まりたいと思ったけれど、やはり満室でだめだった。そこで山麓の温泉宿をひととおり調べてみると温湯(ぬるゆ)温泉・佐藤旅館(TEL 0228-56-2251)の古い本館に泊まれるという。すぐ近くに仙台藩寒湯(ぬるゆ)番所跡というのもあるらしく、伝統のある温泉らしい。

佐藤旅館の本館は、廊下が全面ガラス戸で、それも小さなサイズのゆがんだ板ガラスをはめたもの。床はなんとなくスプリングが効いて、部屋に鍵はかからない。旅行スタイルならちょっとわびしくなるところだが、山の服装では風流な部屋といえる。旅行では一瞬躊躇するすきま風が入り込むような古い宿が、登山スタイルでは楽しみになってくるので、ついついリスクを冒して安宿さがしをやってしまう。

佐藤旅館は大当たりだった。加えて、宮城県側に泊まったので、前日の足慣らしに意外な山が浮上した。東北新幹線を古川で下りて、加美富士(553m)というのに登った。

南麓の、標高300mに泊まったことによって、栗駒山の一般登山道で一番長いルートを選ばなければならなくなった。どちらかといえば入門編にもかかわらず……だ。


長い道のりにずいぶん心配したけれど、林道が18ポイント(シミュレーションマップの赤○と青◇の数。1個=1ポイントとして、とりあえず8ポイント=1時間と換算する)なので約2時間。登山道に入ると38ポイントなので、山頂まで約5時間。ちなみに湯浜温泉ルートも38ポイントなので登山道部分のボリュームは全く同じ。

ゆっくりとできるだけペースを抑えて歩いたことで、紅葉・黄葉の森林は心楽しい旅になった。そして標高1,400mあたりまで登って頂上稜線に立つと、紅葉不作の年にもかかわらず、すばらしい秋の風景が広がっていた。


というわけで、今回は登山のガイドというよりも、中腹以下の森林散歩をすすめたい。

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