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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。
日本365名山  

第22回 尾瀬・湿原めぐり

尾瀬ヶ原 ― 約1,400m
■燧ヶ岳と下田代十字路 ― 1997.6.18
尾瀬ヶ原を木道の道で燧ヶ岳に向かって歩いていく。
山すその下田代十字路には6軒ほどの山小屋が小集落を形成している 。
尾瀬沼 ― 約1,650m
燧ヶ岳(ひうちがたけ 2,356m)と至仏山(2,228m)にはさまれた尾瀬ヶ原は、かつて湖だったところ。
それが数千年をかけて現在のような湿原になったのだが、発電用ダム湖となる危険をくぐりぬけて現在に至っている。
植物の死骸が分解されずに泥炭化して湖底を持ち上げてきたわけだが、それがいまや急激に乾燥化をうながしていると
もいう。おそらく異常気象などにも大きな影響を受けるデリケートな湿原を、登山者の踏みつけから守っているのは東京電力が設置する木道だ。
ここでは一般的なゲートウェイを南側の鳩待峠、大清水、北側の御池、沼山峠として、要所要所をていねいに木道にしてある尾瀬の湿原ルートを紹介したい。

アプローチ
上越新幹線上毛高原駅から上越線沼田駅を経由して戸倉方面へ向かうバスが鳩待峠と大清水へのアプローチとなる。運行スケジュールは大判の鉄道時刻表を見るのが一番適切かと思うが、鳩待峠バス連絡所行きか、さらに奥の大清水行きに乗ること。沼田駅始発も選択できる。ちなみに上毛高原駅→沼田駅が約30分、沼田駅→戸倉(鳩待峠バス連絡所)が約1時間半、戸倉→大清水が約10分という距離感。料金は上毛高原→大清水が2,600円。長いバス旅行という感じだから途中の鎌田(バスターミナルふうになっている)で次の便を待つという考え方もある。これが南の群馬側からのアプローチ。
東武浅草駅から快速会津田島行きがかなり頻繁に出ている。東武日光線→東武鬼怒川線→野岩鉄道で会津高原尾瀬口まで行って、さらに会津鉄道で会津田島まで行くという遠距離電車だ。これに会津田島駅→会津高原尾瀬口駅→檜枝岐→尾瀬御池→沼山峠というバスとシンクロさせると浅草から会津高原尾瀬口乗換で電車約3時間半プラス、バス約2時間で沼山峠にたどりつける。電車浅草−会津高原尾瀬口が2,540円、バスが2,300円という料金だ。これが北の福島県側からのアプローチ。

ルートシミュレーション

この地図の範囲は国土地理院1:25,000地形図、日光11号-3(ひうちがたけ)、日光11号-4(さんぺいとうげ)、日光15号-1(おぜがはら)、日光15号-2(しぶつさん)、でカバーされる。
赤い○印は標高50mごとに置いた半径50mの円。青い◇印は山頂から約500mごとの水平距離。○印の間隔によって登山道のある斜面の傾斜を把握できる。
さらにこの地図の特長は、○印と◇印をどちらも1個(1ポイント)7.5分(2個で15分、8個で1時間)と仮定して、時間とエネルギーを概算できること。
拡大図

【研究22】尾瀬・湿原めぐり

徹底的に木道の道

白砂田代の木道
■白砂田代の木道 ― 1996.10.7
尾瀬ヶ原から尾瀬沼に抜ける道はけっこうな登りがあって、下りがある。もうすぐ尾瀬沼だというころに登場する小さな湿原・白砂田代は秋の朝日に輝いていた。

尾瀬は新潟に注ぐ阿賀野川の源流、只見川の水源地帯となっている。標高2,356mの燧ヶ岳南麓にある尾瀬沼は標高約1,650m。その西の端の沼尻から流れ出した沼尻川は谷を削って西に下り、標高約1,400mあたりで巨大な湿原に紛れ込む。
尾瀬ヶ原はかつて燧ヶ岳と至仏山(2,228m)にはさまれた巨大な湖であったという。そこにミズゴケなどが繁茂し、泥炭化し、次第に地盤を上昇させて、いわゆる高層湿原となった。
およそ6,000年前に尾瀬ヶ原は誕生したというのだが、数十年前にこれを発電用ダム湖にしようという計画があり、かろうじてそれを阻止した運動があって、湿原のまま現在に残された。


東京電力による只見川水系の電源開発が尾瀬にまで及ぼうとしていたわけだが、尾瀬は現在もその東京電力の支配下にある。「東電小屋」が尾瀬ヶ原の北部にあるが、じつは鳩待山荘、至仏山荘、元湯山荘、尾瀬沼山荘というぐあいに要所を押さえている。経営しているのは子会社の尾瀬林業だ。
しかしさすがは巨大産業・東京電力。尾瀬を電力供給源としてではなく、自然環境の保全に積極的にかかわる企業というイメージで強く打ち出している。おかげで、尾瀬の湿原を守る木道の木材は驚くほど立派で、それを運ぶヘリの姿もかなりの頻度で目にすることができる。木材には東京電力のマークと設置年が焼き印されているので、歩くごとにくり返し目に入る。


木道はもちろん登山道のすべてではないが、湿地はほぼ完全に木道となっている。……ということは、登山道があいまいになりやすい部分は整備されていることで、道迷いの危険がきわめて少ないということになる。

尾瀬の4つの入口

尾瀬の強力さん
尾瀬の強力さん ― 1997.6.18
尾瀬では小屋へ日々の荷物を運ぶのは人間のようだ。大きな荷物を背負って歩く強力はほとんどが運動靴をはいている。ほぼ平坦な道なのでヘリ輸送より合理的なのだろう。

これから秋、尾瀬とその周辺は第一級の紅葉に彩られる。燧ヶ岳も至仏山も深田久弥の『日本百名山』に加えられているので登りたい人もいるだろう。東京からの山小屋泊まりならどちらかの山に登りつつ、山麓の湿原風景も楽しむことができないわけではない。
しかしここでは登山は省いて、湿地の木道をたどりながら尾瀬を縦走する気楽な旅を紹介したい。


……となると限りなく観光ルートと重なってくるので、シーズンのピークには山小屋も混雑するが木道も混雑する。それでも時間に余裕があれば、混雑の及ばない静かな森を抜ける楽しみもかならず得られる。
きわめて入門的な尾瀬散歩ガイドということになるが、家族や友人を引き連れてのびやかに尾瀬を歩くためのガイドと考えていただきたい。
ごく大まかにいえば、尾瀬は北が福島県の檜枝岐村、南が群馬県の片品村となっている。どちらの村も平成の大合併から逃げ切ったようだから、財政基盤のしっかりした村なのだろう。


南側からのアプローチでは片品村の戸倉という地名がキーになる。上越新幹線の上毛高原駅(あるいは上越線の沼田駅)からバスで約2時間という距離にある。戸倉から西側の玄関口の鳩待峠へ向かうか、東側の大清水まで入るかの選択ができる。
上越新幹線の上毛高原駅からタクシーに乗ると約2万円で鳩待峠まで入れるが、その場合、所要時間を80分前後に縮めることができる。道路が混むシーズンには水上温泉から奥利根経由で県道水上片品線を飛ばすこともある。


北の福島県側では檜枝岐から奥只見湖方面へ抜ける国道352号線を利用する。バスは会津田島駅→会津高原尾瀬口駅→檜枝岐中央→御池→尾瀬沼山峠と入ってくるが所要時間は約2時間半。東京からだと東武浅草駅からの快速会津田島行きで会津高原尾瀬口駅下車(所要約3時間)という直通電車があんがい便利に感じられる。


尾瀬沼山峠は南の大清水と対をなす北東のゲートウェイになっているのだが、戸倉から大清水〜三平峠〜尾瀬沼〜沼山峠とたどり、そのまま北に向かって七入で檜枝岐に出る山道が古くから沼田街道と呼ばれていたという。
尾瀬に最初に山小屋を建てたのは檜枝岐の平野長蔵という人物。明治23年(1890)に燧ヶ岳登山のための山小屋を建て、明治43年に尾瀬沼の東岸に移って長蔵小屋とした。その位置こそ、沼田街道が群馬県から福島県に入った地点だ。福島県側から尾瀬に入る人の大半は沼山峠からと考えていい。
ただし、国道の尾瀬御池から沼山峠に入る道は通年一般車両通行禁止となっていてシャトルバスが往復している。その御池は燧ヶ岳への北からの登山口になっており、燧ヶ岳の北麓をぐるりとめぐる燧裏林道の起点ともなっている。
かくして鳩待峠、大清水、沼山峠、尾瀬御池の4つがごく一般的な尾瀬への入口ということになる。

縦断・横断

尾瀬ヶ原
■尾瀬ヶ原のど真ん中で ― 1999.10.13
紅葉の時期でも、平日なら空いている。木道を通る人が視界の中にいなかったら、チャンスを逃さずに寝転がってみる。空を中心にした風景は、まったく違う印象を与えてくれる。

まったく始めてのひとには、やはり「尾瀬銀座」がおすすめだろう。
鳩待峠から山ノ鼻へと下って、上田代〜中田代〜下田代と尾瀬ヶ原を縦断。下田代十字路に集落をつくる山小屋群のどれかに泊まる。
2日目は沼尻川にそって尾瀬沼に抜け、大清水か沼山峠に出る。もちろんこれは逆ルートも可能だ。
もうひとつは森林風景の美しさがきわだつ組み合わせだ。鳩待峠から尾瀬ヶ原に下らずにアヤメ平へと向かう。鳩待通りと名づけられたルートだ。富士見小屋まで進んで、そこから尾瀬ヶ原中央部の竜宮十字路へと下る。
その長沢新道の紅葉がなんといってもすばらしい。竜宮十字路のところには竜宮小屋があるし、中田代を北に突き抜ければ東電小屋。さらに進めば温泉小屋と元湯山荘がある。


東電小屋のところには残雪期にクマが登山者を襲う事件が何度か起きているが、登山道を歩く登山者がツキノワグマに襲われるという希有な事件といっていい。クマの生活圏と登山道がピタッと重なっているらしい。その時期、東電小屋から温泉小屋への道筋にはミズバショウが群生し、それにザゼンソウがまじるなど、尾瀬ヶ原でも見どころのひとつとなっている。
泊まるのはそのどれでもいい。2日目に只見川となった渓谷に沿って下ると平滑の滝があり、三条ノ滝がある。ブナのすばらしい森がつづく燧裏林道をたどって御池に出るというプランになる。
ただしこの場合、逆ルートをとるときには御池から燧裏林道へと入り、天神田代から渋沢温泉小屋に出て泊まるという選択肢も捨てがたい。素朴な風呂と手作りの山菜料理が楽しめる家族的な宿は尾瀬にあっては異端かと思う。


尾瀬ヶ原の木道の道と比べると長沢新道にしろ三条の滝周辺の道にしろ、一般的な山道に近い。そのお陰で観光客の姿はほとんどない。紅葉のピークシーズンに静かな尾瀬を楽しむという趣向になる。
なお尾瀬の時期だが、紅葉はやはりすばらしい。同様に残雪期のミズバショウや真夏のニッコウキスゲなどもすばらしい……が、端境期の6月を私はいたく気に入っている。咲いている花の種類が多く、ミズバショウも場所によって可憐な姿のものもあれば、巨大なオバケまでバリエーションの幅が大きい。渋沢温泉小屋の近くでトガクシショウマの花が見られるのもその時期だ。

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