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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。
日本365名山  
第16回 那須岳
■峰の茶屋跡へ下る道から茶臼岳を振り返る ― 1998.11.11
噴煙とともにジェット機のような音が響いて、那須連山の荒々しい光景にすごみが加わる。
 
那須岳(なすだけ…茶臼岳/ちゃうすだけ) ― 1,915m
朝日岳(あさひだけ)― 1,896m
三本槍岳(さんぼんやりだけ)― 1,917m
那須岳(茶臼岳)にはロープウェイがかかっているので、この山には観光地の雰囲気がある。しかし一歩登山道に踏み込むと火山の荒々しい山肌がひろがる。さらに、主峰群をつなぐ稜線は岩稜となっている。
一方、山の斜面を下ると、すぐに巨木に覆われた静かな森が広がってくる。
有名観光地でもある那須高原から日帰りで手軽に登る山ともいえるけれど、山の「向こう側」にひっそりとある三斗小屋温泉に泊まって、2日がかりで歩くと、この山はなかなか見応えのある風景を楽しませてくれる。

アプローチ
東京駅から東北新幹線で那須塩原駅までは所要約1時間20分、運転間隔は1時間に1本程度と見積もっておく。郡山行きの「なすの」は必ず止まるが、「やまびこ」がときどきしか止まらないというローカル駅なのでご注意。
安く行きたい場合には、新宿新南口の高速バス「那須リゾートエクスプレス」(予約 TEL 03-3844 -0489)がある。塩原温泉(那須湯本)行きと那須温泉行きに分かれる。新宿→那須温泉は8:20 → 12:05、9:20 → 13:05、10:20 → 14:05、12:20 → 16;05、14:20 → 18:05、16:20 →20:05、新宿→塩原温泉は10:00 → 13:30がある。往路は東京駅八重洲南口経由、復路は王子駅、池袋駅経由と便利。那須温泉→新宿は8:00 → 11:29、9:30 → 12:59、10:30 → 13:59、14:30 → 17:59、15:30 → 18:59、16:30 → 19:59。塩原温泉 → 新宿は15:00 → 18:14の1本のみ。
バスは那須塩原駅→黒磯駅→那須湯本→那須岳山麓(ロープウェイ駅)があるが、黒磯駅始発が半分以上。新幹線の場合、那須塩原〜黒磯のひと駅分をどうするか、よく考えておかないといけない。バス料金は那須塩原駅→那須岳山麓(ロープウェイ駅)1,300円。
じつはこの地域では、4人いればタクシーを使いたい。タクシー料金の目安はロープウェイ駅から那須湯本2,900円、黒磯駅7,200円、那須塩原駅8,900円、黒磯駅から沼ッ原7,500円、北温泉9,000円といったところ。以前は那須湯本に那須合同自動車の営業所があったが、いまは撤退。ただし那須湯本までタクシーで出て、あとはバスという選択も可能なので、事前に確認しておきたい。
西那須野駅……塩原自動車・西那須野営業所(TEL 0287-36-0005)
那須塩原駅……塩原自動車・那須塩原駅前営業所(TEL 0287-65-2121)
黒磯駅……黒磯観光タクシー(TEL 0287-62-1526)、那須合同自動車(TEL 0287-62-0001)、
藤交通(TEL 0287-63-0444、0120-620444)、京橋タクシー(TEL 0287-63-1515)
温泉は、もちろんたくさんあるが、中の大倉尾根を下った場合はタクシーを待つ間に北温泉で入浴というのがベスト。ロープウェイ駅に下ったときには遊歩道をもう一息下って、大丸温泉でバスを待ちながら入浴というのが好ましい。下山が早い場合(昼過ぎまで)なら大丸旅館の露天風呂・川の湯に入りたいが、時間的にアウトでもバス停周辺に立ち寄り湯がいくつもある。帰路のスケジュールがタイトな場合にはまず那須湯本まで出て、駐車場下の渓流沿いに見える共同浴場・元湯鹿の湯が古典的な雰囲気を漂わせている。
食事は観光客がホテルに囲い込まれてしまうからか想像以上にむずかしい。時間に縛られずにレベル以上の食事を期待できるのは黒磯行きのバスで「高湯入口」下車前方にあるイタリア料理の「ジョイア・ミーア」(TEL 0287-76-4478/11:00〜22:00/第3木曜定休)。単品もあるが、パスタコースが2,000円から。併設のパン香房ベル・フルールは皇太子殿下ご一家御用達とか。タクシーなら那須湯本から約2,000円、黒磯駅まで約4,000円。

ルートシミュレーション

この地図の範囲は国土地理院1:25,000地形図、日光2号-1(なすだけ)、白河14号-3(なすゆもと)でカバーされる。
赤い○印は標高50mごとに置いた半径50mの円。青い◇印は山頂から約500mごとの水平距離。○印の間隔によって登山道のある斜面の傾斜を把握できる。
さらにこの地図の特長は、○印と◇印をどちらも1個(1ポイント)7.5分(2個で15分、8個で1時間)と仮定して、時間とエネルギーを概算できること。
那須岳 ルートマップ

【研究16】那須岳
三斗小屋温泉へ
■隠居倉あたりから一望する茶臼岳 ― 2003.5.22
三斗小屋温泉から朝日岳へと登る尾根は展望がすばらしい。茶臼岳から下った鞍部が強風の名所・峰の茶屋跡。

 那須岳は最高峰茶臼岳(1,915m)を中心とする山群の総称と考えるのが一般的で、噴煙を上げる茶臼岳に限定すればロープウェイを利用して登れる観光地となっている。
山群の主稜線としてポピュラーなのは茶臼岳〜朝日岳(1,896m)〜三本槍岳(1,917m)で、この稜線は火山性のために荒々しい風景を展開している。

 その主稜線へは八方から登下山路が通じているのでさまざまな計画を立てられる。新幹線を利用すれば東京からの日帰りももち

ろん可能だが、那須高原の温泉宿に泊まって前夜泊の日帰りとすれば、さらにゆったりと楽しめる。とくに前泊のばあいには、東京方面からの専用バスの送迎がついて驚くほど安い料金で泊まれる大型ホテルの宿泊パックもあるので、探してみることをおすすめする。
ここでは、登山の身支度でなければちょっと行きにくい三斗小屋温泉泊まりの那須岳をすすめたい。


■三斗小屋温泉・大黒屋 ― 2003.5.24
テレビで山菜料理が紹介されるなど、都会派の客に合わせたサービスを心がけているひなびた温泉宿……という感じ。
■三斗小屋温泉・煙草屋旅館 ― 1998.11.11
これは内湯。50℃ほどの湯が浴槽をくぐるごとに冷めていくという古典的な湯温管理方式。古い湯治宿という雰囲気を残している。

 三斗小屋温泉は車で乗りつけられない温泉宿として現在も2軒が軒を並べて営業している。風呂なら煙草屋旅館(TEL 0287-69-0882、080-589-2048)、食事とこぎれいな宿なら大黒屋(TEL 0287-63-2988、090-1045-4933)というところだろうか。
内湯はどちらも大差ないとして、煙草屋の露天風呂は明るいうちはFRP(グラスファイバー)の浴槽が気になるけれど、夜はすばらしい。暗夜の混浴もすばらしいとわかるが、女性タイムも設定されたので安心して入れるようになった。

 そして、三斗小屋温泉への道も、なかなかすばらしい。ひとつは茶臼岳から下った峰の茶屋跡の峠から下る道で、ロープウェイの山麓駅からダイレクトに峰の茶屋跡へ登る道もある。峠から下るとしばらく急斜面のトラバース道があって、避難小屋のあたりからは樹林帯に入る。あとは穏やかな下り道で、三斗小屋温泉に至る。ロープウェイ駅から登り11ポイント(8ポイント1時間として1時間半)、峰の茶屋跡から下り10ポイント(1時間強)という距離感覚だ。
もうひとつは皇太子殿下ご一家が訪れたという沼ッ原湿原からの道。三斗小屋宿跡に向かって進むと、すぐに湯川の渓谷への急な下りになる。戊辰戦争にあたって、官軍がここを大砲をもって進軍したという。下りきって、湯川を渡る丸木橋は人によっては危険だが、おおよそ問題ないというレベル(写真を見ていただきたい)

 湯川を渡ると、なぜか林道に出てしまう。その先にあるのが三斗小屋宿跡。会津中街道の宿場だったそうだが、戊辰戦争の激戦の地でもあると説明されている。いまは倉庫が1軒あるだけで、生活の匂いは何もない。沼ッ原の駐車場から湯川を渡って林道までは平坦〜下り13ポイント(1時間半)、そこから三斗小屋宿跡までは林道6ポイントと地図には出るが、距離は約1km。30分という概算がいいだろうか。

 進むと、すぐに湯川を渡り直す。川の手前まで許可車両は入れるようで、三斗小屋温泉の車だろうか、停めてある。立派な橋ができているが、それはもう徒歩専用。再び登山道になって、標高差約350m登ると三斗小屋温泉に到着する。三斗小屋宿跡から三斗小屋温泉までは登り15ポイントなので2時間みておけばのんびり行ける。
この会津中街道をたどる道は、ブナの樹林も美しく、なによりタイムスリップした気分がすばらしい。なんでこんな道が「街道だったのか」という素朴な疑問をたっぷりと味わえる。


中の大倉尾根

 ある人に「北温泉へと下る道はいいよ」といわれたのがきっかけだった。5月下旬に計画を立てたところ、三斗小屋温泉は2軒とも満室、ツツジのシーズンで那須温泉の宿も混んでいるようだった。仕方なしに空いているホテルを探してなんとか計画を実施したが、ホテル泊まりだからということで「八幡のツツジ」を見学した。それはみごとなツツジづくしの斜面となっていて、テレビのニュースで流されるだけのもの。観光客が押し寄せてもおかしくないと感心した。

 2日目はロープウェイで茶臼岳に登って、主稜線を三本槍岳へ。そこから中の大倉尾根を北温泉へと下った。
まずはシャクナゲ。アズマシャクナゲが咲き始めのきれいな花を道筋に並べていた。満開のミネザクラが驚くほど堂々と咲いていた。森林帯に入っていくと、シロヤシオ(五葉躑躅)の乱舞。古木が多いので花だけというより、森の景色としてすばらしい。脇役としてオオカメノキの白い花もあり、北温泉の近くまで下るとトウゴクミツバツツジやヤマツツジが咲いていた。

 そのシロヤシオのところにはその後観光ルートが合流するようになって、その時期にはものすごくにぎやかになった。愛子様のおしるしがシロヤシオとか。観光バスできてスキー場側から回り込んでくる遊歩道がつくられたようなのだ。
シロヤシオの名所はいくつか知っているが、ここもなかなかのものといえる。以後、この時期に那須岳に登るときには、早めに三斗小屋温泉を予約するようにしている。

 三斗小屋温泉から三本槍岳に登るには、煙草屋旅館のわきから隠居倉への尾根を登るのと、大黒屋の脇から会津中街道を進んで大峠から三本槍岳に直登する尾根を登るのと、どちらでもいい。が、展望という点では茶臼岳がよく見える隠居倉の尾根をすすめたい。主稜線に出たところから朝日岳を往復して、三本槍岳へと進めばいい。


風の名所・峰の茶屋跡
 1998年の11月11〜12日に三斗小屋温泉泊まりの計画を立てた。茶臼岳から峰の茶屋跡に下り、そこから三斗小屋温泉に下った。煙草屋の露天風呂から見る夕焼けはなかなかのものだった。
2日目は隠居倉から朝日岳に登り三本槍岳から北温泉に下る計画だったが、ダメになった。前夜から雪が降り出し、窓にサッシを入れる前の煙草屋では廊下に雪が吹き込んでいた。

 この地域にあまり経験がなかったので、雪のついた道を初めて歩くとなると道迷いの危険が

■突然冬が来た ― 2005.11.9
昨日までは晩秋。つい30分ほど前まではおだやかな寒い朝だったのに、突然真冬に場面転換という感じ。朝日岳分岐から剣ヶ峰のトラバースにかかる間のクサリのついた岩場の道。

大きいと考えた。一夜にして冬になったのだから、逃げるしかない。きた道を引き返して峰の茶屋跡を越えれば、3時間でロープウェイの山麓駅に着けるだろう。
女将の大金フサさんが、峠の越え方を教えてくれた。北風が谷を吹き上がってしだいに強くなっていくけれど、自然の風は息をつくから、それをよく観察して動くように……と。
宿を出ると、風がうなり、雪が舞っていた。避難小屋から先は裸の急斜面になる。風はまるで大砲が発射されるように風を吹き出してくる。
音の恐怖感のわりにおだやかだと感じていたのだが、最後の最後、峠の一歩下のところで動けなくなった。風に吹かれると飛ばされてしまいそうだ。ストックを2本とも短縮して束ねて両手でもって、しゃがんだときにピッケルのように体を支える。私は峠の真上に出て、風に耐えながら全員の通過を見守ったが、ほんの5mほど、クサリがほしかった。その後クサリが設置されて安全性は大きく飛躍した。

 那須の峰の茶屋跡はまさにその冬の風が谷で圧縮されて吹き出すところ。風の名所なのだ。同様に二本松から上がる安達太良山も風の名所で、冬の風を味わいに出かけるのだが、大きく見れば日本海側から吹き抜ける冬将軍の先鋒の通り道になっているらしいのだ。その日、冬一番の吹き出しが地形によって圧縮されて放射されたということのようだった。

 2005年11月8〜9日に同様の計画を立てた。沼ッ原から晩秋の森を楽しみながら三斗小屋宿跡を経て三斗小屋温泉に入ったが、宿に着く直前に雨になり、小雪がぱらついた。
その日もたまたま煙草屋だったので露天風呂で秋深い夜空を楽しんだ。

 2日目、あたりには昨夜の雪がパラパラと残っていたが、天気は悪くなかったから、予定通り隠居倉への尾根道を登っていった。
隠居倉から茶臼岳を望み、目の前の朝日岳を見ていたが、その朝日岳の分岐に着いたそのときに濃いガスが周囲を包み、一瞬にして、吹雪に変わった。あわてて岩陰で雨具をつけると、猛烈な吹雪。風がどんどん強くなる。

 そこからクサリ場となったけれど、そのクサリがありがたかった。飛ばされないためのクサリとして、とにかくゆっくりと前進できた。
風で体がふらついた人は何人もいたようだが、転んだ人はいなかった。クサリ場だったおかげで、突風に対して抵抗できた。

 クサリ場は剣ヶ峰の東斜面で終わるのだが、北西風もパタッと消えた。嘘みたいに静かになった……が、私はそこで長い休憩をとって、身支度をし直した。

 剣ヶ峰のトラバースが終わるとそこは峰の茶屋跡。避難小屋が見えているが、この日の風が、この谷を吹き上がるときに圧縮されてパワーアップしているとなると、避難小屋までのほんの数十歩が最大の難所となる。
きちんと一列になって歩き出した。が、さいわい風は特別のものではなかった。避難小屋に飛び込んでようやく人心地がついた。

 三斗小屋温泉は11月下旬から12月上旬までで通常の営業は終える。峰の茶屋跡に強風が吹いていても、会津中街道は樹林の中。静かに冬景色に変わっていく。


「写真で見る山の歩きの魅力」 【講座16】ザックの選び方
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