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毎日が山歩き 案内人 伊藤幸司(糸の会・登山コーチングシステム)  50歳を過ぎてからでも楽に山歩き、愉しく山登り、のんびり山遊びが楽しめる毎日を紹介します。
日本365名山  
第14回 屋久島・宮之浦岳
宮之浦岳(みやのうらだけ)――1,935m
■空港上空から― 2003.6.5
島の東北に位置する屋久島空港上空から。手前にピークが三つの愛子岳(1,235m)。奥に安房川源流の山々が見えてきた。宮之浦岳は、どれ?
飛行機で屋久島に飛ぶと、着陸態勢に入ったころから、島の中央部にそびえ立つ山並みを見ることができる。ところがいったん島に降り立ってしまうと、海岸地帯の一周道路から見えるのはすべて前衛の山々。たかだか島の山岳でありながら、奥深さを感じさせるのはそういう理由による。
逆にその主峰群からふもとの集落を見下ろすこともできない。かならずしもハードと
はいえない1泊2日の縦走登山の最中に、なぜか北海道のトムラウシを思い出してしまったのも、ほとんど下界から隔絶された雰囲気の山だから。
屋久島は「1年に366日雨が降る」といわれるが、縄文杉のある大株歩道や「もののけ姫」の森と宣伝されている白谷雲水峡では雨の日が絶対にいい。晴れて喜んだ日もあったが、屋久島の森はどうみても湿潤の風景がすばらしい。
そして正直にいうと、山を歩いている2日間もいいけれど、プラス1日の島一周の観光ツアーは高価なタクシー(レンタカー)代を払っても十分に満足できる。
なぜなら、海岸に迫る山岳風景がこれまたすばらしく、名だたる滝は海岸に向かって落ちてくる。ヤクシカやヤクサルに出会えるのも海岸線の一周道路で期待できるし、永田のいなか浜でのウミガメの産卵は保護団体によって完全に管理されているために、季節にはほとんど確実に見ることができる。
スカイマークエアラインズの羽田〜鹿児島間就航でずいぶん行きやすい島になったが、撤退によってその割安感はどうなるだろうか。

アプローチ
屋久島に渡るには、(全部鹿児島からだが)1日7便ほどの飛行機(約40分)、7便ほどの高速船(2〜3時間)、1便のフェリー(約4時間)がある。運賃は5,000円〜12,000円。鹿児島空港発着で2泊3日の登山というタイトなスケジュールの場合、空港〜鹿児島港の移動の時間や運賃を加えて考えると、各種割引を利用した飛行機と高速船とが競合関係になってくる。
島には全長約100kmの一周道路はあるけれど、その4分の1にあたる西海岸の西部林道はバス路線からはずれている。北西の永田から時計回りに一湊→宮之浦→空港→安房→尾之間→栗生と行ったり来たりするするバスは(宮之浦〜尾之間を中心に)1日約12往復。タクシーやレンタカーは宮之浦・空港・安房に拠点を置いている。
登山ガイドを見ると、屋久島山中にはかなり多数の「○○歩道」がある。これが「登山道」と考えていいのだが、島外から予備日なしでやってくる登山者の場合、利用は避けたい。同様に、多くの「○○林道」で山に踏み込んでいけるが、この通行状況も現地の最新情報が必要になる。永田岳から花山歩道を下って大川林道に出たらタクシーが使えるという古い情報があったが、その後道が荒れて、タクシーは入れなくなっていた。一番ありえる「不測の事態」は豪雨による沢の増水。多くの「○○歩道」では渡渉を前提としているので減水を待たなくてはならなくなる。常識的な予備日を加えておかないと、屋久島の山を自由に歩くことはむずかしい。
屋久島はさすがに全国区の有名観光地だから、交通情報や宿泊情報についてインターネットでくわしく調べられる。そしてできれば3日目を予備日として加えて、登山が無事に終わったら、ぜひとも屋久島一周を。島の旅情は「一周」において格段に印象を深めるはずだ。

ルートシミュレーション

この地図の範囲は国土地理院1:25,000地形図、屋久島6号-4+7号-3(みやのうらだけ)、屋久島7号-3/4+11号-1/2(くりお)、でカバーされる。
赤い○印は標高50mごとに置いた半径50mの円。青い◇印は山頂から約500mごとの水平距離。○印の間隔によって登山道のある斜面の傾斜を把握できる。
さらにこの地図の特長は、○印と◇印をどちらも1個(1ポイント)7.5分(2個で15分、8個で1時間)と仮定して、時間とエネルギーを概算できること。
宮之浦岳 ルートマップ

【研究14】屋久島・宮之浦岳
登山道
■安房川河口から見上げると― 2005.6.3
屋久島東部の中心集落・安房(あんぼう)は安房川の河口にあって、1923年から1970年まで上流の小杉谷から屋久杉がここに搬出されてきた。

 屋久島の中央部に並び立つ山々のなかに、海岸集落と同じ名前のものがあることにお気づきだろうか。たとえば最高峰・宮之浦岳の西どなりにある永田岳(1,886m)には西海岸の永田の人々が足繁く登るという。しかし登るのは永田岳であって、宮之浦岳には登らない。自分の集落の山に登るのが地元の人々の「登山」だという。各登山道に点在する避難小屋はそのような地元の人たちの登山に利用され、維持されてきた。


 多くの登山道のなかで、もっともよく整備されてポピュラーなのは荒川口から旧森林軌道をたどって大株歩道入口まで入り、縄文杉へと登る観光ルートだ。観光客は日帰りで縄文杉を往復するが、正直なところやりたくない。平坦なので楽そうに見えるけれど、軌道敷の往復は精神的にかなりつらい。
縄文杉のすぐ上に、屋久島では一般的な避難小屋の高塚小屋がある。それは小さくて古びた感じの小屋だが、そこから稜線を1時間ほど登り気味に進んだところに新高塚小屋がある。こちらはあきらかに島外からの観光登山者向けの大型の小屋で、トイレもあれば、水場もある。もちろんこれも避難小屋だが。
新高塚小屋を利用することによって、縄文杉の日帰り往復をする一般観光客よりはるかに楽な行程で最高峰の宮之浦岳に登頂し、そこからいくつかの方向に下ることができる。
ところが、永田岳から永田歩道を下ろうとした日、集中豪雨となった。鹿之沢小屋にいた人によると、途中が増水して渡れないはずとのこと。危険な渡渉のない花山歩道へと逃げた。
日程に余裕のない場合には、「ポピュラーなルートを選ぶ」というのが常道だ。宮之浦岳への最短の登山ルートとなっている標高約1,350mの淀川入口を利用すれば、安房岳、栗生岳といった集落名のついたピークを縦走するすばらしい展望絶佳の稜線ルートを楽しめる。

 もう一点、屋久島観光の目玉として整備されている、白谷雲水峡から辻峠を越えて小杉谷の軌道敷へと下ってくるルートがある。白谷雲水峡は宮崎駿のアニメ映画「もののけ姫」の森として有名になっているが、屋久杉をめぐるルートもあって、楽しい。これを往路、復路の一部として計画に組み込める。
軌道敷の荒川口、標高約1,350mの淀川入口、白谷雲水峡の管理棟ゲートへはいずれもタクシーで入れる。登山口としては前の2か所が安房からの道、白谷雲水峡が宮之浦からの道と理解しておけば問題ない。

 問題は下山の場合。登山道上でほぼ確実に携帯電話(NTT DoCoMo)が通じるのは縄文杉の見物台上。ほかでは通じないと考えておいた方がいい。公衆電話があるのは屋久杉ランドの入口と、さらに下って荒川口から下ってくる道との合流点のみ。白谷雲水峡の管理棟ゲートには公衆電話はないが、県道を100mほど下ったところに携帯電話の通話域がある。

■松峰大橋から見下ろすと
― 2003.6.5
安房の町はずれにかかる松峰大橋から安房川上流を見る。右岸(上流から見て)には木材搬出用の軌道跡が埋もれている。見上げる山は明星岳(651m)で、山岳地帯のほんのとば口。

登山シミュレーション

結論としておすすめしたいのは、安房を出来るだけ早い時刻にタクシーで淀川入口まで上がり、宮之浦岳を経て新高塚小屋泊まり。2日目は縄文杉などをみて小杉谷の軌道敷に出、三代杉の先から辻峠を越えて白谷雲水峡を下る。そのさい時間があれば白谷山荘をすこし下ったところから「原生林コース」へと入る。

  私のシミュレーションマップによると、標準的所要推定時間(8ポイント=1時間)は以下の通り。

 (1)淀川入口→宮之浦岳――登り33ポイント(約4時間)
(2)宮之浦岳→新高塚小屋――稜線17ポイント(約2時間)
(3)新高塚小屋→大株歩道入口――下り20ポイント(約2時間半)
(4)大株歩道入口→白谷雲水峡管理棟――登り下り29ポイント(約4時間)

  これを雲取山【連載第9回】に当てはめてみると、次のようになる。画一的に8ポイント=1時間として。

 (1)三条の湯(約1,100m)→雲取山(2,017m)――登り29ポイント(約4時間)
(2)雲取山→白岩山(1,921m)――稜線18ポイント(約2時間)
(3)白岩山→霧藻ヶ峰(1,523m)――稜線19ポイント(約2時間半)
(4)霧藻ヶ峰→妙法ヶ岳(約1,300m)→三峯神社(約1,100m)――下り25ポイント(約3時間)

  登山道の歩きやすさでは雲取山のほうがずっと楽だが、白岩山周辺の岩稜を屋久島の登山道の基準と考えておけば十分な余裕幅で考えられる。すなわち、雲取山を山頂の避難小屋泊まりで体験しておけば、屋久島のこのルートはかなりの精度でシミュレーションできるということになる。

「写真で見る山の歩きの魅力」 【講座13】「リーダー役」のすすめ
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