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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏
利尻島(3) text: Fimiohiro Funaki
姫沼入り口
観光シーズンの最盛期には、ここにバスの行列ができる

姫沼看板
利尻山を配した姫沼の看板。この付近で、観光客もバスのスタッフも一息入れる
 オタトマリ沼から再びバスで北へ向かう。右手の海は相変わらず穏やかだ。こんな時は反対の西側の海はたいてい荒れているそうだ。島の東西で海の状態が違うのは利尻山があるせいだろう。そういえば、沓形港に着いたとき、Qさんの第一声は「海、荒れてましたでしょう、大丈夫でしたか?」だった。船酔いする人に気付かないくらいの揺れだったが、朝の予報では西側の海はかなり荒れるということだったらしい。午後一番の船だったせいか、私たちの船は快適だった。これから荒れてくるのかもしれない。しかし帰りの鴛泊港から稚内に向かう航路は島の東側だから心配ないはず。
ほどなく姫沼に到着。沼の入口には大型観光バスが10台ほど停車している。地元の宗谷バスのほかに、北海道、本州からのもある。
「今日はこれでも少ないほうなんですよ。多い時は、ほら海側のあの坂道までず〜っと並ぶんです。次々ときますから、停まっているバスが順々に後ろにまわって行くので、お客さんが戻ってきた時には、あれれ、自分のバスがいない、なんて慌てることがしょっちゅうなんです」と、Qさんがいう。
 このバス溜まりはバスのスタッフがほんのわずかの間だが一息入れられる貴重な場所だ。ベンチや石に腰をおろして情報交換をする。私は急ぎ足で姫沼を一周し、バス溜まりに戻って周辺の写真を撮った。
  乗客が全員戻り、バスはいよいよ終点「鴛泊港」へ向かって走り始めた。恨めしく感じるほどのわずかな時間でバスは港に着いた。Qさんともここでお別れだ。
「ほんとにまた来てくださいね。あの、私、デジカメに代えます、やっぱり」
Qさんはカメラが好きで、バスの中で見せてもらった冬の利尻の写真から判断すると、なかなかの腕前のようだ。愛機はニコンの銀塩カメラ。私の一眼レフデジカメを見ているうちに心が動いたようだ。
「利尻にはカメラ屋はないんでしょう?」
「大丈夫。インターネットで調べて、札幌に行きますから」
「高い買い物になりますねえ。買うものが決まってるならネット通販でもいいんじゃないですか?」
「ええ、でも他に見たい物もありますから。冬のシーズンは私たちの充電期間なんです。事務所勤務の時間が増えますから、この間に積極的に情報を集めて勉強しておかないと、いい仕事できませんからね。お休みを取りやすいこの時期に札幌や稚内に行くのも、仕事のために必要なことなんです」
「なるほどねえ。冬はまったくバスに乗らないんですか?」
姫沼付近の林
厳しい自然の中で育つ木々の緑は濃い
「利尻では乗らないんですが、他の地域に応援で行くことはあります」
「ああそうですか。Qさんのお話聞いてるうちに、毎年来たくなってきたなあ。移住して来るのは無理だけれど」
「今度はぜひ一度冬に来てください。お魚は美味しいし、人情は濃いし、いいですよ〜。それに寒さも海のお陰で北海道の内陸部ほど厳しくありませんから、ぜひ」

美しい姫沼の全景
この日は風もなく、美しい姫沼は滑らかで鏡のようだ。雲さえなければここに見事な利尻富士の逆さ像が映るはずなのに
姫沼から見る利尻富士
いつまで待っても利尻山はこんな状態。雲はなかなか切れない

「利尻島(1)」 「利尻島(2)」
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