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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏
利尻島(1) text: Fimiohiro Funaki
白く泡立つフェリーの航跡
青い海面に島の思い出を消すかのように白く泡立つフェリーの航跡
  利尻島へのアクセスは、フェリーなら稚内港からの直行便と、礼文島からの便の2系統があり、さらに札幌からの飛行機便もある。この夏(2005年)は礼文島からのフェリー便を利用した。香深港から約40分、海が荒れてさえいなければちょっとバスで隣町に行くという感じの距離である。しかし、島の港を出るのは、本土の港から出るのとはまた一味違った旅情を感じさせる。
惚れた娘を島に残すというわけではなくても、なぜかうら寂しい気持ちがするのである。出港前に香深港のレストランで食べたウニ・イクラ丼の豪奢な昼飯で、身も心も充足したはずなのだが、なぜか海風が心に悲しく沁みる。もう二度と来ないかもしれない、という思いがあるからだろうか。
香深港に迫る緑の山並みにはっきりと一本ずつ見えていた木々は、
しだいにその姿を崩し始めてあいまいになり、緑は霞んで灰色となり、海上から見る単なる一つの島の姿に変わっていく。後部甲板から海面を見ると、まるで島の思い出を断ち切るかのように、白い航跡が生き物のように勢いよく生み出されていく。船は心地よく揺れながら快適に進んだ。
  船は利尻島中央部西岸の入り江に位置する沓形港に着く。北部の鴛泊港付近が島の観光の中心なら、利尻町役場があるここは島の行政の中心といえようか。港からすぐに観光バスで反時計回りに鴛泊港まで行くことにした。バスガイドのQさんの言葉がきれいな標準語なのでちょっと驚いた。観光地のガイドさんは、たいていは土地の方言を織り交ぜる人が多いのだが、彼女はあえて標準語で通している。しかも、最近のカワイ〜子ちゃんアナウンサーより発音が数段明瞭で正確、その上、声も美しい。後で聞いたら彼女は島外の出身で、利尻島にすっかり惚れこんで、猛勉強猛訓練して観光バスのガイドになったのだそうだ。すごい根性である。最近の若い女性は本当にたくましい。
海岸沿いの道路はよく整備されていて、車の走行は実に快適だ。島の経済の比重が漁業から観光にシフトしているのに合わせて、道路の拡幅整備工事が進んでいるのである。
島の各所にある案内図
島の各所にある案内図。これは姫沼に立てられているもので、島の鳥たちと姫沼を紹介している
利尻島地図
利尻島地図
利尻島最南端の仙法志岬の美しい海岸
利尻島最南端の仙法志岬の美しい海岸。透明度の高い青い海とゴツゴツした岩の対照が目に沁みる

仙法志海岸先端部で愛嬌をふりまくアイドル・ゴマフアザラシ
仙法志海岸先端部で愛嬌をふりまくアイドル・ゴマフアザラシ
  バスはほどなく最南端の岬、仙法志崎に停車。仙法志御崎公園である。透明度の高い美しい海の青さを堪能しながら海岸を歩く。先端の岩に囲まれた天然生簀のようなところに、一頭のゴマフアザラシがいて、愛くるしい顔で近づく人を見上げていた。声を掛けると柔らかな体をくねらせて海中にもぐり、別なところに顔を出す。動きは敏捷で優雅だ。見飽きない。島の近くで群れから迷い出たのかとQさんに聞くと、
「本当に、可哀そうですよね。まだ親が恋しい子供のようですもの」と眉を曇らせた。
「本当ですねえ」とあいづちを打って見つめていると、
「あまり大きな声ではいえないんですが、実はこの子、夏の間だけ北海道の水族館から借りてきたアイドルアザラシなんです」
Qさんはいたずらっ子のような目をして、離れて行った。

「利尻島(2)」 「利尻島(3)」
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