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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏
礼文島(1) text :Fumihiro Funaki
稚内港から礼文島、利尻島に向かう大型フェリー
稚内港から礼文島、利尻島に向かう
大型フェリー
 少しひび割れた別れのメロディーが侘しく流れるなかを、大型フェリーがゆっくりと稚内港の岸壁を離れて行く。8月末の早朝、少し肌寒さを感じる潮風を浴びながら、次第に遠ざかり色彩を失って行く“本土”を見つめる。穏やかな青い海に白い航跡を鮮やかに残しながら進む船に、乗客の手から餌をもらおうとカモメが寄ってくる。軍隊のヘリコプターも敵うまいと思われる、慎重にして果敢な飛行で巧みに餌をくわえ去っていく。可愛らしい丸い目が、なぜか倦怠の色を浮かべているように思われた。

 揺れをほとんど感じさせない安定した航行に、やや眠気を催して後方デッキに出て前方を見ると、ぼんやりと丸いものが見える。礼文島だ。しかし島は遠くから見ると、灰色に沈んだ岩のようにしか見えない。あの大きな佐渡島だって、着岸30分前には横長の味気ない少し大きめの岩だ。人が住んでいる“大地”がそこにあるとはとても思えない。ところがしだいに近づくと、岩が緑に息づく山になり、海岸線に沿って建物が見えてきて、人の住む気配が伝わってくる。 餌を求めて船に寄ってくるカモメ
餌を求めて船に寄ってくるカモメ

礼文島の玄関、香深港
礼文島の玄関、香深港
 稚内港からおよそ1時間40分。このぐらいの時間を隔てると、日常とは隔絶した格別な場所に来た、という気持ちになる。心が弾む。香深(かふか)港だ。潮とエンジンの香りに満ちた港の空気を胸いっぱいに吸い込む。
 礼文島は北緯45度30分14秒、東経141度4分16秒、稚内の西方約60キロメートルの日本海上に位置する日本最北の島だ。隣の利尻島と北海道のサロベツ原野と合わせて「利尻礼文サロベツ国立公園」を形成する(1974年指定)。島の形は「海老の尾をもった大クワガタ」と呼ばれる。北端のスコトン岬(左)と金田ノ岬(右)がクワガタの角で、南端の桃岩から知床、カランナイ岬が海老の尾だ。しかし、地図をじっと眺めていると、少しひしゃげた馬の顔のようにも見える。そう思うとディープインパクトに似てるような気がしてくるから不思議だ!!
礼文島にはレブンアツモリソウなど300種もの高山植物が咲き誇る。そして島を形作る海岸線、岬、湖、礼文岳、山道はそれらの花々を包む豪奢な宝石箱のようだ。美しく可憐な花々に魅かれてこの島に移住してきた人も少なくない。しかし近年、シーズンには観光客が大挙して来島し、貴重な花たちが盗掘されたり、踏みつけられたりする被害も多いという。島に10人ほどいる花の案内人は、同時に盗掘の見張り役でもある。何しろ最盛期には一日に数千人もの観光客が見学通路にやってくる人気ぶりだ。稚内からのフェリーは通路まで人があふれ、まるで難民船のようだ、帰りの船は引き揚げ船のようだ、と島の人は冗談をいう。
  続きは、第2回 礼文島(2)
  礼文島地図
礼文島地図
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