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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏
南大東島(2) text&photo Takayuki Hotta
摩訶不思議が転がっている島内を探検
狭い水路から広い湖沼へとカヌーを漕ぎ進める。南の島とは思えないようなカヌー旅が楽しめる。
  断崖絶壁の孤島だが、中央部は盆地状にへこんでいる。そして、そこには広大なサトウキビ畑がある。
また、盆地状の島の中央部には池が点在している。南の島々には、天然の湖沼がほとんどない。沖縄県内には1ヘクタール以上の天然湖沼は14しかないが、そのすべてが南大東島にあるのだ。そればかりか、埋め立てられる前には、大小含め100以上もの湖沼があった、という。
そして、いくつもの池は水路でつながっている。スケールはまったく違うが、まるでアメリカ大陸の五大湖みたいじゃないか。
島の元・悪ガキたちがカヌーを持っている、と聞いたので、元・悪ガキの代表格である奥山博則さんを訪ねる。70歳を迎えたという奥山さんだが、元気いっぱい、よしいっしょに行こう、と話が早い。すぐに、やはり元・悪ガキの伊波和也さん、それに金川吉仁さんもやってきて、いっしょに漕ごうということになった。みんな、奥山さんの遊び仲間である。
この島にいる雑種犬
この島にいる雑種犬の多くは、なぜか足が短いという特徴を持っている。見ていて心がほっとする犬なのである。大東犬と呼ばれている。
  「前はカヌーでなんとか行ける程度に、もっと水路で池がつながっていたんだけど、いまでは水草や泥がたまって……」
いくつかの通過できる水路もあるが、葦や泥に行く手を遮られる水路もある。小さな池からまたまた小さな池へ。水路を抜けたり、行く手をはばまれ戻ったり、違う水路へ入っていったり。こうして、カヌーで池を巡っていると、南の島だということを忘れてしまう。景色は、まるで大陸のなかの湿原を漕ぎまわっているようなのだ。
そんななか、2時間も漕ぐと、すっかり迷子になってしまった。五大湖とは比べものにならないくらい小さな湖沼群だけど、迷子になるにはじゅうぶんな複雑さを持っているのだった。
南大東島の地図
島の面積の半分近くはサトウキビ畑である。大型機械による大規模経営だ。広いキビ畑は大陸的な風景を作りだしている
  島には、まだまだ摩訶不思議が転がっている。
汽水域でマングローブを構成する種であるオヒルギだが、この島では淡水池のほとりに群生しているのだ。島が隆起したとき、オヒルギがこの池に閉じこめられたといわれている。いちばん大きな湖沼である大池の北側には、国の天然記念物に指定されたオヒルギ群落があった。淡水池のまわりに、空気の濃いマングローブの密林があるのだ。
この島にいる雑種犬
町はずれに闘牛場跡を見つけた。1900年までは無人島だったという南大東島にも、いくつもの人の歴史がある
  さらに島内探検はつづく。
珊瑚礁が起源のこの島は、丸ごと石灰岩でできているのだ。そして、石灰岩でできた島だけに、鍾乳洞やすり鉢状にへこんだドリーネ(穴)がたくさんある。
120前後と推定されている鍾乳洞の数だが、だれもその正確な数は知らない。だれも入っていない鍾乳洞がまだまだある、というのだ。
そして、ドリーネのその奥へ入ってみると、そこには奇天烈なる闇が待っていたのだ。

南大東島の地図
珊瑚礁が起源なので、この島は丸ごと石灰岩できている。すきまだらけの島なのである。そんな隙間のひとつに入り込むと、地底湖が
この島にいる雑種犬
120ヵ所前後あるといわれている鍾乳洞のなかでも、最大規模の星野洞。ここは一部が一般公開されている。巨大鍾乳石の柱に圧倒される
  地元の人の案内のもと、地底湖を探しにサトウキビ畑をかき分けひとつのドリーネに入ってみる。
洞窟のなかは、昼間なのに真っ暗である。ライトを消すと、目の前に近づけた手も見えない暗さである。暗さに目がくらみそうなのだ。
そんな暗闇のなか、ライトの明かりを頼りに歩きつづけると、水面が光った。
洞窟のずっと奥底に、透明度の高い水が光の先に見えるのだ。洞窟の奥の奥に湖があるのである。その地底湖は、人知れず、風も吹かず、水面も揺れず、哲学的な静けさを持って横たわっているのだ。
じっと見つめていると、吸い込まれてしまいそうだ。
この地底湖のずっと先は、どこかとんでもない国とつながっているに違いない。知れば知るほど、そんなふうに思えてくる島なのだ。

(協力=JCB「ザ・ゴールド」)
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