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風の島である。台風が進行目的としているんじゃないかと思われるほどの場所だ。気象台では高層気象の観測のため、毎日、朝と夜に発信器をつけた風船を飛ばす。 |
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「ハブもいないし、泥棒もいない。若い人もいないし、砂浜もない。なーんもないことだけが、この島の取り柄さ」と、買い物途中のおばさんが太陽のように笑う。
たしかに静かな島だ。ほんと、なにもないかのように。
ここは、南大東島である。
しかし、静かなのは昼間のうちだけだった。夜には、島の人たちの饗宴が小さな飲屋街ではじまるのだ。人口の割りに飲み屋が多い、という。酔っぱらい密度が高い島なのだ。
というわけで、ついつい僕も酔っぱらい密度をさらに高めるべくがんばるのだが、そんな夜の席で、この島にはもっと騒がしい奴らがいるぞ、と聞いた。
「大東神社には、日暮れとともにコウモリが集まっているはずさ」と、ひとりの人がいうのだ。
さっそく、その人の案内で大東神社へ出かけてみた。
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昼間は静かな大東神社だが、夜には、常緑樹やダイトウビロウの森にダイトウオオコウモリが集まってきて、大宴会となる。 |
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大小合わせると100個を超える湖沼群を持つ島である。ほとんどの池は細い水路でつながっている。断崖の海岸線とは違って、のどかな風景である。 |
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なんとそこでは、昼間静かだった常緑樹やダイトウビロウの森に、ダイトウオオコウモリが集まっての大饗宴が繰り広げられていたのだ。夜の森の奥から、キーッキーッ、キャーキャーキャーッといった鳴き声が響き渡る。
ダイトウオオコウモリは、都会でよく見かける手のひらサイズのコウモリとは違い、名前のとおり、風呂敷を広げたような大きなコウモリである。翼を広げると、1メートル近くにもなる。南大東島では、人間よりも前から生息していた唯一の哺乳類だ。
オオコウモリは、小型の食虫コウモリとは違い、超音波を使わず、洞窟にも入らず、冬眠もしない。超音波を使わず、夜間も有視界飛行をするので目が大きい。ドングリまなこの子犬のような顔をした、かわいいやつでもあるのだ。食べ物も昆虫ではなく、ましてや人の生き血を吸うわけでもない。もっぱら果物の実を食べる。フルーツバットとも呼ばれている、優しいやつでもあるのだ。
見た目に不気味さがないコウモリを眺めていると、夜の森にどっぷりと入り込んでしまうのだった。
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南大東島の地図 |
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浜がないので海水浴ができない。そこで、岩礁をくりぬいてプールが作られた。もちろん、波がどかどか入ってくる。魚もいっしょに入ってくる。楽しいプールである。 |
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沖縄本島から東へ約360キロに位置する南大東島は、島の周囲が20キロあまり、人口わずか1,400人の小さな島である。すぐ北には、さらに小振りな北大東島がある。
ここは南の島だが、まったく南の島らしくはない。買い物おばさんがいうように、白い砂のビーチがないのだ。島は、海のなかから突然岩がすくっと立ち上がってできているのだった。島の周囲は、断崖が続いているだけだ。
港も断崖にある。多くの漁船は毎回クレーンで陸地へと引き上げる。那覇からの定期連絡船への乗り降りは、荷物も人もクレーンである。大きな籠に入って、岸壁から少し離れたところに停泊した船の上へとクレーンで運ばれるのだ。
そして、こうした条件の悪い港を持つだけに、定期便の欠航も多い。
かように、人を寄せつけない島である。
が、なにもないなんてのはとんでもない話である。いろんなものがあるのだ。この島には。
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