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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏

伊豆大島(2) text&photo Fumihiro Funaki 2007年6月20日更新

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三原山に登る

何といっても三原山、登らずにはすまない

伊豆大島といえば、まず何といっても三原山である。1986年11月の大噴火はまだ記憶に新しい。三原山は1974年前半に火口内で小規模な噴火があった以降は目だった活動はなかったのだが、86年11月15日から始まった噴火は、21日にはカルデラの内と外で大規模な割れ目噴火を起こした。
「テレビに釘付けになったわね。あんなに夜空を真っ赤染める生々しい噴火が、大島のような身近なところで起こるなんて、ほんとに想像もできなかった」
「溶岩が真っ赤に溶けて元町に向かって流れ出したのも、リアルタイムで見たよね。こんなこというと不謹慎だって叱られるだろうけど、あの夜の光景は実に美しいなあ、と感動した。でも全島民に非難命令が出て、消防車や救急車が島のあちこちを走り回って、島民を誘導している映像を見たときは、大真面目にどうなるんだろうって心配した」
「三原山じゃ大きな噴火はしばらくなかったの?」
「1950〜51年と53〜54年の噴火で火口内に溶岩湖ができて、溶岩カルデラが溢れ出したそうだが、これは記憶にない。そして、74年の小規模噴火があったわけだけど、いずれにしてもあまり記憶に残っていないところをみると、それほど大きな規模の噴火じゃなかったのかもしれない。三原山は常に水蒸気を上げたり煙が出たりして活動はしているけれど、それ以上のことは起こらない、みんなそんな感じで見ていたと思う」
例によって帰京してから調べると、86年のようなカルデラ外で大きな割れ目噴火があったのは、1421年以来のことだそうで、なんと“565年ぶり”ということになる。しかし大噴火の割には、大惨事とならず、三宅島のように長期間の避難を強いられることもなかったのは幸いであった。

雲が切れて全貌を見せた三原山の外輪山。滞在中は毎日曇天で、なかなかこのようには晴れてくれなかった

久しぶり来た伊豆大島である。何とか滞在中に三原山に登りたい、お鉢めぐりをしたいと思っていた。40年以上前の前回は、火口を見た記憶が薄れ、ただ黒くゴツゴツした溶岩の上を長く歩かされた記憶しかない。あれは今の裏砂漠にあたるあたりだったかもしれない。今は86年の噴火で流れ出た溶岩の上を歩く散策路が出来ているが、それ以前はただ溶岩がだだっ広く敷き詰められた、砂漠という感じだった。

今回お世話になった大島観光自動車の福本三雄さん

今回はしっかり火口を見て記憶に残したい。しかし問題は天気である。5月連休前の静かな時期の大島を狙って選んだ4月下旬だったが、あいにく毎日曇天で、いつ降り出してもおかしくない空模様だ。しかし、到着2日目の月曜日、ホテル「白岩」のマネージャーが、
「お客様、どうしても行かれるなら、今からすぐがいいですよ。先ほど外に出て見ましたら、今朝は雲が切れて上まではっきり見えてます。午前中はきっと大丈夫でしょう」
と、嬉しいご託宣。食事を慌しく切り上げ、早速、昨日知りあって今回のガイド役を頼んだ、大島観光自動車の運転手、福本三雄さんに電話をした。バスの出発時間に合わせる余裕はない気がしたので、山頂口まではタクシーで行くことにしたのである
「今日午前中は大丈夫と天気予報でもいってました。よかったですね。すぐに伺います」
と、彼もいう。


山腹から見下ろした岡田港方面
山頂口。遊歩道の降り口に外輪山展望所がある。内輪山方向は霧に煙ってあまり見えない
内輪山に向かう遊歩道は山頂口から下っていく。みやげ物店などが数件軒を連ねている

福本さんは、バスの通る三原山登山道路ではなく、ホテルから近い御神火スカイラインを登ってくれた。かなり勾配のきついところもあるが、いい登山道だ。福本さんは子供のころにこの道を登ったことがあるそうだ。窓から見上げると雲の合間に青空が見える。その雲もあまり厚くない。なんとか天気はもちそうだ。
途中で元町港を望む写真を撮って、山頂口まで約30分。福本さんとはいったんここで別れて、昼過ぎに大島温泉で待ち合わせることにした。ゆっくり歩いて、お鉢をまわって、大島温泉で昼食、という予定である。
「大島温泉あたりは携帯電話が通じませんから、もし何か用事がありましたら、大島温泉の公衆電話を使ってください。では後ほど」
こう言い置いて福本さんは去った。さあ、何とか晴れているうちに、大島温泉までたどり着かなければならない。善は急げ、である。すぐに山頂口から火口へ向かう山頂遊歩道に降りた。その降り口に小さな店が何軒かあり、そこに福本さんの親戚の方が土産物屋を出していると昨日聞いた。福本さんが車のバックミラーに吊るしていた、堅く乾燥した椿の実で作ったアクセサリーが気に入ったので、買いたかったのだが、あいにく連休前の月曜日、しかも曇天。店は全部閉まっていた。やむなく火口へ向かって歩きだした。

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