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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏

壱岐島(4)  text & photo Fumihiro Funaki 2007年11月15日更新
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左京鼻から郷ノ浦へ

青島と火力発電所、そして松永安左衛門

愛らしい赤頭巾地蔵に別れを告げて、バスは今日の宿泊予定地郷ノ浦へと向かう。走り出すとすぐに、大きな橋が見えてくる。青島大橋である。八幡湾に浮かぶ小島、青島に架けられた美しい橋だ。青島はかつては無人島でタヌキとイタチしかいなかったという。小西さんによると、壱岐にはイノシシやサルも、そしてもちろん熊もいないそうだ。

八幡湾の青島に掛かる美しい青島大橋

この青島には白く輝く鉄塔が2本見える。1984(昭和59)年に建てられた火力発電所、新壱岐発電所だ。「新」とあるからには「旧」があるわけで、それは離島ではもっとも早く建てられた壱岐電灯会社、現在は九州電力壱岐営業所となっている火力発電所である。

壱岐市の資料によると、壱岐電灯会社は1914(大正3)年8月に芦辺町の清石浜入り口空き地に建設された。社員は12名、最初は75馬力の内燃機関による貧弱な発電であった。電灯戸数は1,203戸(人口は38,669人)。その後設備は増強され、1951(昭和26)年から現在の九電壱岐営業所となり、現在は37名の社員を抱える。現在、新旧2つの発電所による壱岐の総発電量は、4万500kW。夏に猛暑が襲っても十分に乗り切れるという。

青島大橋の手前にある風情のある神社

ところで、壱岐と電力といえば、この人の名前を忘れることはできない。松永安左衛門(安左ヱ門とも表記される、1875-1971)。壱岐印通寺の生まれで、日本の電力事業の発展に大きな貢献をし、今日の日本の産業経済発展の基礎を築いた。「電力の鬼」とも「電力王」とも呼ばれ、また「耳庵」と号する茶人、美術品蒐集家としても広く知られる。多くの人は尊敬をこめて「松永安左衛門翁」と呼ぶ。

生家は1895(明治28)年ごろまでは造り酒屋や回船問屋などを営む商家であった。安左衛門は壱岐中学時代に、福澤諭吉の『学問のすすめ』に感動し、1889年に上京し慶応義塾に学び事業家となった。現在、生家跡地は「松永記念館」となっている。これは翁の没後間もない、1971(昭和46)年6月26日、全国の電力関係者、法人、個人、壱岐4町、さらに松永家を始め、多くの人々が翁の遺徳を偲び、その功績を後世に伝えるために建設されたものである。

青島に火力発電所の鉄塔が見える

松永安左衛門はあまりにも有名で、ここにあらためて記録しておくことはないのだが、なぜ電力の「王」であると同時に「鬼」であったのかは気になるところだ。こんな話が伝わっている。第2次世界大戦が激化するなかで、特殊法人の日本発送電会社が設立され、電気事業は国の管理下に置かれたが、彼はこれに強く反対した。そんな無理をして戦争をしなくても、日本の生きる道は必ずあるという平和主義者であったのだ。そして、誰を恐れることなく自説を述べ、道理のわからない人間は遠慮なく罵倒した。

また、こんな話も残されている。敗戦後、電気事業再編成審議会会長に就いた彼は、独占体制を守ろうとする日本発送電会社を押し切って、今日の電力事業体制につながる、9電力会社への事業再編を実現した。しかし同時に、電力事業の今後の発展を予測して電気料金を値上げしたので、消費者からは強い非難を浴びたのある。この気骨の激しさが人に「王」とも「鬼」とも呼ばせるのかもしれない。


発電所手前の海には漁港がある

亡くなる10年前に書かれたという遺書(松永記念館所蔵)にも、翁の人柄がよく現れている。
……何度も申し置く通り、死後一切の葬儀・法要はうずくの出るほど嫌いに是れあり。
墓碑一切、法要一切が不要。線香類も嫌い。

死んで勲章位階(もとより誰もくれまいが友人の政治家が勘違いで尽力する不心得、かたく禁物)これはヘドが出る程嫌いに候。

財産はセガレおよび遺族に一切くれてはいかぬ。彼らがダラクするだけです。(衣類などカタミは親類と懇意の人に分けるべし、ステッキ類もしかり)
小田原邸宅、家、美術品、及び必要什器は一切記念館に寄付する。これは何度も言った。

つまらぬものは僕と懇意の者や小田原従業者らに分かち与うべし。借金はないはずだ。戒名も要らぬ。……

松永記念館
長崎県壱岐市石田町印通寺浦360
電話:0920-44-6688 駐車場あり 入館料:100円
開館時間:9時〜17時/休館日:火曜日午後、水曜日

松永記念館については:公式ホームページ

また「北九州・魏志倭人伝の旅」には写真も数多く掲載されている。
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