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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏

壱岐島(2)  text & photo Fumihiro Funaki 2007年8月15日更新
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原の辻遺跡と展示館訪問記

壱岐・原の辻展示館で、弥生時代に思いを馳せる

壱岐・原の辻遺跡展示館

壱岐・原の辻展示館に入った。バスのステップを下りて展示館のエントランスに向かっているとなぜか突然に、杉浦日向子さんの最後のエッセイの一節が頭に浮かんだ。
「船旅が好きで、年に五十日は、波の上で寝起きして、十年を超える。体調が悪いと思ったら、船に乗ればすぐ治る。なにがそんなにいいのかといえば、ひと揺れ毎に新しい波を体感し続け得る、悠久の時の流れ。誰もが必ず、目から鱗がボロボロ落ちる景色が、島影も他船も見えない大海原。海と空だけ。水平線から陽が昇り、陽が沈む。そして、夜の満天の星、あるいは豊かな漆黒の闇。……」(「杉浦日向子の食・道・楽」新潮社刊)

展示館エントランス。左に見えるスカートに「HARUNOTSUJI」と書かれたキャラクター人形は、口の部分に穴が開いていて見学者がそこに顔をいれて記念写真をとることができる。その右隣のマークは「原」と「辻」を素材にしたシンボルマーク。入り口で資料を渡しているピンクのベストの女性は、玄海交通のガイド、小西三四子さん

唐津から印通寺まで海を見ながら来て、まだあまり時間が経っていなかったからだろうか。
「今日の航路は外洋じゃなかったけど、島影も他船も見えない時間があったね。海面と空以外には何も見えない大海原の景色。うん、私はそれに島を加えたい。大海原の彼方に島が待っているからこそ、安らぎはいっそう深まるのだ、そう思うなあ」
「だから島旅、ってわけね。今回も無事に着いてよかったわね」

ここ原の辻遺跡は、弥生時代の遺跡としては全国でも有数の規模を誇り、その出土品は展示館に分類整理され、誰もが千数百年から二千年彼方の人間の暮らしぶりの一端を間近に見ることができる。そして、最近は撮影禁止のところが多いのに、なんと館内の撮影も許された。というわけで今回は、スペースの許す範囲で展示品をなるべくたくさんお目にかけることにしたい。しかし、貴重な出土品の多くはガラスケースに収納されているので、写真は必ずしも鮮明ではない。その点はご了承ください。

展示室手前の一支国王像

館内に入るとすぐ目に飛び込んでくるのが、2体の彫像である。一支国王と王妃とある。
「一支国(いきこく)」とあるのは、中国の史書「三国志」の魏志倭人伝と通称される(正確には、「魏書東夷伝倭人の条」という)部分にある、
「…又南渡一海千餘里名曰瀚海至一大國官亦曰卑狗副曰卑奴母離方可三百里多竹木叢林有三千許家差有田地耕田猶不足食亦南北市糴又渡…」
の「一大國」に由来する。「大」は「支」の誤記らしい。この一節の意味は、館内の資料によると、
「…それからまた南に一海を渡ること千余里で一支国に到着する。この海は瀚海と名づけられる。この国の大官は卑狗(ひこ)、次官は卑奴母離(ひなもり)という。広さ三百里平方ばかり。竹木・叢林が多く三千ばかりの家がある。ここはやや田地があるが、水田を耕しても食料には足らず、やはり南や北と交易して暮らしている…」
紀元後3世紀ごろと思われる日本を記した貴重な史料である。「一支国」は古事記にある大八島のうちの「伊伎島」とともに、現在の「壱岐、壱岐島」のことを指す。その一支(壱岐)の王国の中心地が、ここ原の辻であったろうと考えられているのである。

展示室手前の一支国王妃像

さてこの王国の王と王妃は、いったいどんな人物であったろうか、と想像を逞しくして造られたのが展示館入口の彫像なのである。もちろん、身長、容貌、服装、装飾品などは当遺跡の出土品やこれまでの古代研究の成果に基づいている。実際の人物にどの程度近く仕上がっているかはともかく、この2像は弥生時代への親近感を巧みに演出している。特に美しい容姿の王妃は、見る者を遠く時空を超えたはるかな世界へと手招いているようだ。

像の足下の説明書きによると、王の着衣は、絹地に貝紫の縁取りがあしらわれ、右手首には原の辻遺跡から出土した有鉤銅釧(ゆうこうどうくしろ)がはめられ、腰に細形銅剣を帯び、革製の靴をはいている。身長165cmほど、40歳代の壮年男子と想定して造られている。貝紫については玉木女子短大教授・寺田貴子氏が指導されたそうだ。
王妃の着衣は絹地で、貝紫の帯を締めている。左右の手首に貝輪をはめているが、これはまだ原の辻遺跡では出土していない。結い上げた髪には木櫛がつけられている。王妃は20歳代の身長150cmほどの女性と想定して造られている。

 
ワゴンにセットされた「土器パズル」。さあ、あなたなら何分で土器を組み上げられますか?   王と王妃に敬礼して展示室に入室すると、こんな感じで出土品が展示されている

展示室前には「チャレンジしよう!」と書かれているワゴンがあり、ここには土器のパズルがセットされている。ゲーム感覚でバラバラの土器破片を形のある土器に組み上げるのを体験できる。これがなかなか難しいので子供は挑戦しがいがあるし、大人も考古学者の気分がちょっぴり味わえるという楽しい企画だ。 

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