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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏

八丈島(11) 2007年5月9日 text&photo Fumihiro Funaki
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八丈島訪問落穂ひろい(2)

地熱発電所〜これからのエネルギー問題

「昨日の観光バスは地熱発電所には行きましたか? 行かなかった、ああそうですか、コースから外しちゃったのかなあ。じゃ、温泉つながりで行ってみましょう」
地熱発電所
地熱発電所に近づくと、風力発電の羽がまず見えてくる。ここは壊れていない。稼動中で出力は500kW

佐藤さんの提案で、温泉地区から125号線を越えて中之郷地区の東京電力八丈島地熱発電所に向かった。やがて前方に3枚羽のタワーが見えてくる。
「地熱と風車は関係があるんですか?」
「また、冗談を。同じ東電の敷地内に風力発電の設備もあるんです。あれは確かドイツ製のはずだなあ」
「フランス製は山の上で壊れてましたものねえ。これはしっかりしてるからドイツ製に間違いなしってわけですね」
「ハハハ、フランスの人に叱られそうだねえ」(「八丈富士牧野ふれあい牧場」内の羽の折れた風力発電機については、本欄第3回をご覧ください。)


ところで、地熱発電である。地下水がマグマ溜りの熱によって加熱され、高温高圧の熱水となり地熱貯留層に蓄えられている。地上から井戸を掘って、その熱水を取り出し、その蒸気の圧力によってタービンを回して発電する方式だ。約1,650メートル地下の地熱貯留層の熱水温度は、約300℃(100気圧)。この熱水が途中で蒸気になり、タービンの入り口で約170℃。発電が終わった後の温度は約40℃になり、この温水は園芸用温室の暖房などに利用されている。

地熱発電所
1999年から発電開始した、地熱発電所。これが出来たお陰で二酸化炭素の排出量を4割ほど削減できた

日本は火山列島と呼ばれるぐらいに火山が多く、地下には膨大な熱エネルギーが蓄えられている。限りなくクリーンで半永久的に利用できる自然エネルギーだが、地層の構成、地下水の量など発電所として実働させるには、いろいろな条件が必要で、どこでも井戸を掘れば発電できるというものではない。現在全国で稼動している地熱発電所は、以下の18ヵ所である。森発電所(北海道)、 大沼地熱発電所 、澄川地熱発電所、 上の岱地熱発電所(秋田県)、 松川地熱発電所、葛根田地熱発電所(岩手県) 、鬼首地熱発電所(宮城県)、柳津西山地熱発電所(福島県)、八丈島地熱発電所(東京都) 、岳の湯発電所(熊本県) 、大岳発電所 、八丁原発電所、杉乃井地熱発電所、滝上発電所、九重地熱発電所(大分県) 、霧島国際ホテル地熱発電所、大霧発電所、山川発電所(鹿児島県)。この中で最大出力を誇るのは山川発電所の30,000kW。八丈島は3,300kWで下から5番目の出力量。運転開始は1999年3月。八丈島の最低必要電力需要(深夜)は約3,500kW、最大需要(夏、昼間)は11,000kWだそうだから、地熱発電所はほぼ最低需要分に匹敵する供給能力があるということになる。なお、島には他にディーゼル発電が11,000kW、風力発電が500kWあって、電力供給には余裕がある。地熱発電の稼動により、炭酸ガスの発生を4割減らすことができたという。


地熱発電所2
地熱発電所に隣接する「TEPCO八丈島地熱館」。展示物はなかなか充実している

八丈島地熱発電所は、施設造成面積の約10倍の広さを周辺敷地として確保し、樹木の伐採は最小限にして林のほとんどを残した。工事のために手を加えた場所は新たに植樹して回復緑地にしている。周辺の自然環境の保全を徹底し、クリーン電力にふさわしく、地域との共生を十分に配慮した発電所となっている。敷地内には冒頭に触れた「風力発電所」があり、さらに資料映像や体験コーナーで楽しく八丈島と地熱発電を知ることができる「TEPCO八丈島地熱館」も併設されている。

実はこの「地熱館」がなかなか魅力的だ。1階には、「八丈島の特徴的な地形」「八丈島の誕生の様子(コンピューターグラフィックス)」「地熱のしくみ(体験コナー)」などのコーナーがあり、シアター・ジオと呼ばれる部屋では「自然エネルギー地熱」「八丈島海底へのお誘い」というような興味深い映像作品が上映されている。

2階には「地熱発電所の地下と蒸気」「発電設備の説明」「風力発電設備の説明」「八丈島における電気の歴史」などのコーナーがあり、電気のことが分かりやすく説明されている。もちろん地熱発電所関係資料の閲覧もできる。


島生成図
コンピュータグラフィックスで「八丈島の誕生の様子」が見られる。右下は入場記念にもらえるメダル。地熱の圧力で島の山を浮き出してくれる

今、エネルギー消費量の増大は地球環境を危機的状況に追い込みつつある。人間が豊かで便利な生活を求め続けることによって、石油に代表される化石燃料が膨大に消費され、大気の汚染が絶望的に進んでいるのは誰もが知っている、否定しようのない“現実”だ。もう30年以上前から、アジア地域の人口が多く面積の大きい国が、アメリカ型の生活スタイルに近づけば、エネルギーの消費と食料需要の増大が幾何級数的に進み、重大な自然環境破壊に陥るといわれてきた。それを多くの人が忘れたのか、忘れた振りをしているのか、先進工業国はそのような地域に工場や発電所を次々に建設し、自動車や家電製品の輸出を急速に拡大している。

ひょっとするともう手遅れなのかもしれないが、それでも人は目先の利益を求めることから、自分の生命を健全に維持するための地球環境改善に目を向けなければ、人の未来はない。地熱発電や風力発電はその有力な対策の一つである。風力発電については、設置場所の不足や回転する羽による鳥類への被害などもあり、期待と同時に問題も多い。その点、地熱発電は環境に与える被害も少なく、大きな発電量を得ることも可能で、非常に有力なエネルギー源ではないだろうか。


八丈島地熱発電所
TEPCO八丈島地熱館

〒100-1623 東京都八丈町中之郷2872
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