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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏

五島列島 福江島(8)  text&photo Fumihiro Funaki 2006年11月15日更新

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大宝の古刹から渚百選の美しい海岸へ

日本でいちばん美しい高浜の海岸

荒川温泉。豆谷旅館という宿が隣接しているので湯治にも最適
「キリスト教に真言宗、今日は朝からお勉強がきついねえ。そろそろ目に優しいところに行きたいものですねえ、原塚さん」
というと、
「これからが今日のハイライト、五島でももっとも美しく、また歴史的にも重要なスポットにご案内しますっ」
と頼もしいご返事。
「では、ここからまっすぐ北上して、まず荒川温泉に行きましょう」
「温泉が美しくて歴史的に重要なスポットなの?」
「いや、そういうわけじゃないんですが、五島っていうと、教会やお寺、魚とか海ばかりが有名で、温泉ってあまり関心をもたれないじゃないですか。でも、五島にもちゃんと温泉があるんです」

なるほど、元々は火山活動によって生まれた島なんですから、温泉があっても不思議ではない。荒川温泉は大宝から国道384号線をほぼ真北に北上した、玉之浦湾に面していて、海上の真西が、ちょうど今朝、鹿と出会った島山島の北端に近い位置にある。 大正時代に発見され今日まで利用されている温泉で、湯の温度は60〜70度とかなり高いので、冷やして使っている。泉質は弱食塩泉。漁師たちが利用するほか、湯治客、観光客もけっこう多いそうだ。目の前がすぐ玉之浦湾で、漁港になっている岸壁から小魚もかなり釣れる。玉之浦湾はどこから見ても美しい。この穏やかな海を見ながら湯につかるのも、旅のひとコマとして味わい深いものがある。なお、荒川温泉は日本の最西端の温泉になる。

五島の温泉はほかに、南部の富江町に富江温泉、島のシンボル鬼岳の中腹に鬼岳温泉がある。富江温泉の泉質は荒川温泉と同じ、鬼岳温泉は空気に触れると鉄分が酸化して赤くなる湯だという。


荒川温泉前の玉之浦湾。海上奥左手に見える山が、鹿に会った島山島の北部

さて今日は温泉に入る予定はないので、すぐに北上を再開。やがて左手の東シナ海に面して眼下に、頓泊(とんとまり)の美しい砂浜の海岸が見えてくる。島でも有数の海水浴場だ。ここからほんのわずか北上すると、渚百選にも選ばれた、五島でもっとも美しい高浜の海岸に出る。ここで下車。

海岸は国道からやや下るのだが、その手前にトイレや更衣室、倉庫などの施設がある。5月下旬のこの時期はまだ閑散としているが、夏のシーズンは大変な賑わいだろう。人が多く集まれば、汚れもひどくなるのが常。施設には、この天与の美しい海岸を守るための注意書きも張り出されている。海岸は白いといってもいい、ごく淡い褐色の砂浜で、貝殻の砕けたものが堆積してできたものだ。遠浅の海から小さな波が心地よい音を立てて寄せてくる。私たち以外には誰もいない。4人で独占する五島一の美しい渚。昼に近い太陽が斜め右から海面いっぱいに当たり、南国の島のようなエメラルドグリーンが眼福だ。


日本の渚百選にも選ばれた、高浜海水浴場の美しい海岸

うちのカミさんがウニをもって帰るよ、という荒尾船長。船長の頭の後ろにぼんやり見えるのが嵯峨ノ島だ

まっすぐ沖を見ると、細長い島が横たわっている。嵯峨ノ島である。南北に細長いのだが、海岸から見ると左右に横長に見える。両端に小高い山がある。右(北)が男岳で海抜151メートル、左(南)が女岳で海抜130メートル。3,000人ほどが住む有人島だ。

「うちのカミさんが、あの島の出身で、まだ実家があるもんだから、今日もあっちに行っていて、さっき電話で獲れたてのいいウニをもって帰る、って連絡がありましたよ」
と、荒尾船長がいう。
「今夜たしかみんなで食事するんでしたよね」
「ああ、そうですね。ああ、そうか、間に合ったらもっていきますから食べてみてください。五島のウニもなかなかウマイから」
「う〜ん、そりゃ楽しみだ。早く夜にならないかな〜」
「物欲しそうないい方で、失礼ね。ごめんなさい、荒尾さん」
「いや、気持ちは素直に出すほうがいいよね、荒尾さん」
「ハハ、ハ。どっちでもいいですよ。僕も今日は飲みたい気分だし」
ああ、旅は道連れ世は情け、である。いい案内人に出会って仕合わせだ〜。そうそう、書き忘れるところであったが、思い出した。渚百選であるが、島の人は、この海岸がニッポンイチ美しい、とみんな思っている。そして、隣の頓泊と合わせた絶景も比べるものがなく、日本最高の海水浴場だと信じて疑わない。さらにつけ加えると、この海はハマグリの産地としても有数のものだ。
五島列島 福江島マップ
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