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旅程の最初の島、徳之島に無事着陸してホッとしたものの、人間は欲が深く出来ているから、今度は何とかカラリと晴れないだろうか、と贅沢がすぐに胸を突き上げてくる。風がかなり強いので雲の流れは速い。うまくするとこの強風が雨雲を徳之島から太平洋上空へと追い出してくれるかもしれない。そんな淡い期待を胸に、まず今夜の宿「金見荘」へと向かった。
10時55分鹿児島発の便だったので、ちょうど昼時である。宿で軽い昼食をとり、不要な荷物を置いて一休みして、午後島内見学に出かける、という予定である。バスは空港から島の西側海岸を北上して、徳之島の東北端の金見崎へ向かう。道は県道629号線で、よく整備されているので走行はスムーズだ。
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| 県道629号線を金見崎に向かって走る。バスの窓からは刈り入れの終わったサトウキビ畑が見える |
途中に青いものがまばらに植えられた畑が見える。サトウキビ畑だ。サトウキビは12月から4月までが収穫の時期で、この期間に収穫された分がその年の収穫量となる。訪れたのは4月10日だったから、もう大半の畑が刈り入れを終えていたのだった。5月に発表された2008年度の収穫実績によると、鹿児島県全体の生産量は64万2351トン。これは前年比114.8%という増収で、収穫面積も前年より約280ヘクタール増えて、現在約9340ヘクタールだそうだ。注目の順位と収穫量は以下のとおり。
1位:徳之島22万6964トン(前年比108.4%)/2位:種子島 18万729トン(105.5%)/3位:喜界島9万646トン(122.9%)/4位:沖永良部島7万6804トン(138.2%)/5位:奄美大島3万6687トン(123.0%)/6位:与論島3万522トン(154.1%)
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| 海岸側から見た民宿・金見荘 |
今回訪問する3島合計で33万4290トン、鹿児島県全体の52%ということになる。これに奄美大島と喜界島を入れると46万1623トン、71.9%となる。奄美諸島は大いに健闘したわけで、なんとなく奄美ファンとしては嬉しくなる。江戸時代の鹿児島と奄美諸島のサトウキビを巡る不幸は忘れてはいけないが、今後も大いに増産を期待したい。
金見崎には灯台があり、岬の左側が東シナ海、右側が太平洋と分かれるという珍しい海になっている。左側の東シナ海が白く波立っているのに、右側の太平洋が穏やかだなどという珍しい光景を一望できる島でも有数のビューポイントである。
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| 元気いっぱいの金見荘の名物おばあちゃん |
金見荘は金見崎海岸の白砂を庭のようにして建てられた2階建ての民宿で、島の新鮮な食材による料理と、親しみやすい温かな応接が評判だ。そして、お料理も得意、歌も踊りも達者で働き者、という名物おばあちゃんがいる。観光バスのガイドさんがいっていた、おばあちゃんの「みそ豆」は絶品だから、ぜひ買ったほうがいいと。味見をしたらなかなかイケルので何袋か買って帰り、知り合いの飲兵衛たちに配ったら、東京でもじつに好評だった。落花生を自家製のミソで味付けした単純なものなのだが、奥が深い味なのです、これが。ビールや焼酎のツマミに最適。難は後を引いて、ついつい食べ過ぎてしまうことだろうか。
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| 金見荘のおばあちゃん特製「みそ豆」 |
金見荘につくと、すぐに名物あばあちゃんが大きな歓声で迎えてくれた。おばあちゃん、といっても徳之島は全国的に有名な長寿の島。あばあちゃん、は親しみを込めた愛称で、まだお若い。道で出会うおばあちゃんたちも、うっかり親切めいた声を掛けると、「まだ私は85歳ですからねえ」と、年寄り扱いをするなといわんばかりの口ぶりでキッと見つめる場所柄なのである。
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| 金見荘前の美しい金見崎海岸 |
昼飯は金見荘特製のオニギリ弁当。焼き魚の小さな切り身と、自家製の漬け物、お吸い物だけの簡単な食事なのだが、おばあちゃんの知恵が効いているのか、食べるほどに早朝からの疲れが消えて、元気が湧いてくるような滋味豊かな食事であった。
一休みする間を惜しんで、お茶をすするツレアイを部屋に残し、私は庭から海に出た。おお、これだ。なんと見事な海ではないか。雲がまだ厚くどんよりと垂れ込めているものの、ここはまさしく南の島の「白い砂の浜辺とコバルトブルーの海である」と信じられる光景が大きく太平洋に向かって広がっていた。
また、この海岸一帯には、毎年梅雨明け直後から7月下旬ころまで、オオヤドカリが集まり大産卵をするのだそうだ。体長7〜10センチもある世界最大といわれるヤドカリで、普段は丘に暮らしているのだが、産卵期だけ海岸に下りてくる。私は虫が好きじゃないからあまり見たくないが、虫好きの方は時期をお間違えのないようにお出かけください。
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| 金見荘前の美しい金見崎海岸 |
そして、海岸の左手前方には金見崎の灯台が見えるのだが、そちらの方向に朝日が上るという。明日の朝は、なにがあっても早起きして、ご来光を拝するぞと心に決めて部屋に戻った。そうそう、夜は満天の星空に流れ星が走るらしいのだが、これは見られそうもない。まだ相当量の黒雲が、西空にノンビリと居座って立ち去る気配がないのだから。
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