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ゆっくりと島巡り 案内人 船木文宏

奄美大島(7)2006年12月6日 text&photo Fumihiro Funaki
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大瀬海岸から、あやまる岬へ

あやまる岬の大パノラマに感動、ソテツを見て平和を祈る

1時間20分ほど歩いてホテルに戻ると、仲間が2組フロント近くにいた。中庭から前の海岸を散歩してきたという。Nさんの奥さんは少し元気がない。ゆうべ呑み過ぎて調子が悪いらしい。 風呂上りに浴衣でずっと島唄ライブを聴き、激しく踊ったので風邪気味にもなったようだ。それでも、6時に起きて海岸に行ったら、幸運にも大ヤドカリを数匹見つけたという。それは本当に上原ガイドの話で想像していた以上の大きさだったらしい。Tさんご夫妻は海岸と庭をゆっくりと話しながら歩いたという。

 
ホテル「コーラル・パームス」中庭に
住む子やぎ
庭の主は俺だ、といいたげな犬。
まだ眠そうだった

庭で思い出した。犬とヤギへの挨拶を忘れるところだった。あたふたと庭の左奥に行くと、可愛らしい子ヤギが2匹寄ってくる。さすがホテル住まいのヤギだ。客にしっかりと愛想をふりまく。 その奥の立派な犬小屋には寝ぼけ眼の白い大型犬がまだ寝そべっていて、面倒くさそうに私たちを上目づかいに見つめる。それでも声をかけると、モソモソと起き出してきた。彼なりのサービスなのだろう。これはこれで可愛い。


朝食を終え、いよいよ奄美第3日公式イベントの開始である。相変わらず笑顔を絶やさない上原早苗さん(バスガイド)、菅谷えりかさん(添乗員)に迎えられてバスに乗り込んだ。N夫人以外はみんな元気だ。Kさんが、嬉しそうな顔をしていう、
「今日はさ、何たって焼酎だよなあ。浜千鳥、ね。今日あれを呑めるてんで、昨日までは別なのを呑んでたんだから」


この声が聞こえたのか、上原さんが、
「お早うございます。早いもので奄美第3日、最終日となってしまいました。今日はご案内するところが、たくさん。盛りだくさんです、よ。最初の日に行く予定だった、あやまる岬が雨で今日になりましたからね。 でも皆さんお見かけしたところ、お若くてお元気そうなので、私は安心しております、ウフフ。それで、お昼過ぎには黒糖焼酎の奄美大島酒造さんに行きまして、確実に、間違いなく、ご試飲していただけるんですが、そこで終わりじゃありませんから、度を過ごされませんように、ね。さあ、あやまる岬、誤るでも謝るでもありませんよ、綾織の手毬から名づけられた美しい名前の、あやまる岬はもうすぐそこです」
と、先を見越しての極めて正当にして思慮深いご注意スピーチをされた。


大パノラマをバックに立つ、あやまる岬の標識

ものの10分ほども乗ったであろうか、あやまる岬の小高い丘に到着した。奄美大島最東北端の笠利崎、そこから南が「用海岸」、この素晴らしい大パノラマの海岸をしばらく南下すると、上原さんがいわれたように丸く海にせり出すような形で、あやまる岬がある。ここから南、昨夜宿泊したホテル「コーラル・パームス」あたりまでが「土盛海岸」、そしてそのさらに南が今朝行った「大瀬海岸」となるのである。丘を海に向かって進むと、「あやまる岬/奄美十景」という標識があり、その横に命名の由来が書かれている。


奄美の乙女たちは、正月になると赤、青、黄の色とりどりの糸で刺繍したきれいな手毬で手毬歌を唄いながら毬つきをします。この岬一帯のなだらかな地形が「アヤに織られた手毬」によく似ているところから、いつの頃からか「アヤマル」と呼ばれるようになり、地名になったんだろうとと考えられています。 鹿児島県奄美市


円形磁石の形をした案内図

このメッセージが笠利町ではなく奄美市のものとなっているのは、この3月20日から名瀬市、住用村、笠利町が合併して「奄美市」となったためで、まさに出来立てホヤホヤの標識ということになる。 岬の展望台には、磁石の形をした標識もあり、これが示す方角に合わせて視線を送れば、広大な太平洋の絶景に浮かぶ、笠利崎、鬼界島や、はるか本州の方向を正しく視界に入れることができる。 眼下の海は、これぞサンゴ礁の海というしかないマリンブルーの海水が、海底の土質や岩の種類、そして海面からの深さ、太陽光の当たり具合によって、無限の濃淡を示している。 ブルーからグリーンにかけての狭い帯域の中で、これだけ多彩な色彩世界を描くのは、ダ・ビンチ、ミケランジェロ、ラファエロの天才をもってしても不可能ではないか、とさえ思われる。 引き潮時には、文字通り見渡す限り一面にサンゴ礁が現れる。まさに、「奄美十景」と呼ばれるように、数多くの美しい奄美大島の景色の中でも、10本の指に入る美しさだ。


展望台から笠利崎方向の美しい景観

展望台から奄美空港方面の美しい景観   展望台の下に見える公園

この岬を含む一帯は「あやまる岬観光公園」と名づけられ、簡単な遊具もあって親子で楽しめる自然豊かな公園となっている。そして、周囲にはソテツやアダンが群生している。

展望台からゆっくりと降りて、上原さんが「あやまるソテツジャングル」を案内してくれた。鬱蒼といったイメージでソテツが生い茂る中に、アダンもかなりある。 アダンはタコノキ科の植物で、この実は飢饉や戦中の食糧難の際には食用にされたが味はよくないそうだ。ソテツについては、笠利町の説明がジャングル内にあった。


ソテツの中に見えるアダン

昔、奄美大島においては、食糧難の際は、ソテツの種子や幹を利用した「ソテツガユ」「ナリ味噌」を唯一の食糧として切り抜けたといわれ、大事に育てられていた。また、海岸山地を問わず、いかなる痩せ地にも成育し、奄美の気候、風土にあった植物である。

奄美各地には、たくさんのソテツが自生しているが、ほとんどが山や赤土に群生しており、ここあやまるのソテツは砂地にお群生している規模としては奄美一であろう。


もちろん、今日ではソテツやアダンを食べることはない。ずっと食べる必要がない時代が続いて欲しいと思うのは、奄美の人だけではない。


群生するソテツ
奄美大島マップ
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