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| 瀬戸内町海岸沿いの美しい集落。歌手、元ちとせはここで生まれた |
上原さんの説明によると住用町の人口は約1,700人。このあたりは以前は奄美でも陸の孤島と呼ばれていたそうだが、トンネルが出来たことや、出産祝い金などの人口増対策があってかなり活性化しつつあるようだ。「弁当忘れても傘を忘れるな」といわれるほど天気は変わりやすく、雨が多いけれど、タンカンという甘いみかんがよく育つ。
「ああそうそう、この地域にすむイノシシはタンカンが大好きで、ちゃんと皮を残して中身だけ食べるんですよ」
と上原さんはいうが、ニヤニヤしているので真実のほどはわからない。バスの車窓から見える山並みと、その合間から見える太平洋が実に美しい。かなり高い位置から斜めに見下ろしているので、海面の色はここからではまだ鮮やではないが、緑の山々と海の入り組んだ光景は、南国の島ならではの美しさにあふれている。こんな所なら何時間走っても飽きるなんてことはない。“絵葉書のような”とか“絵に描いたような”という俗な形容が、輝かしく思えてきて口に上りそうになる。
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| 古仁屋港。対岸に見える山並は加計呂麻島 |
国道に沿って役勝川という清流が流れていて、琉球アユ、手長エビ、ウナギなどが獲れる。ウナギをぶつ切りにした味噌煮はここの名物だそうだ。役勝川と住用川が合流する約70万平方メートルのデルタ地帯には原生林が発達し、マングローブで有名だ。ここには、今日後ほど戻ってゆっくりと観察することになっているので、今は先に進む。
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| 奄美出身の歌手、元ちとせの健康法を紹介する5月28日の朝日新聞「be on Sunday」 |
ほどなくバスは峠を越えて、瀬戸内町に入り、眼下の海沿いに集落が見える。ここはかつて17戸ほどの小さな集落で、ご存じ、元(はじめ)ちとせの生地だ。「“100年に一人”とも評される独特の声。保つ秘訣は“毎日歌うこと”」という書き出しで、5月28日の朝日新聞「be
on Sunday」の「元気のひみつ」というコラムで、音楽活動再開後の彼女の健康法が紹介されている。「1日大さじ2杯の黒酢」をトマトジュースに入れたり、炭酸で割ったりして飲み続けているそうだ。彼女のような歌い手になりたい女性は見習ってはいかが。
出発後約45分、バスは瀬戸内町の古仁屋に着いた。港の空気がうまい。カミさんもすっかり元気になった。上原さんがそっという、
「港なんだけれど、ここはあんまり海っぽい匂いがしないでしょう? これはね、奄美の海には海草が少ないからなんですって。いわゆる海って匂いは、海草があって出るものらしいですよ」
なるほど、そういわれてみればいかにも海に着いた、という匂いが薄い。勉強になりました。よく晴れて対岸の加計呂麻島がはっきりと見える。ああ、島尾敏雄少尉が悶々として敗戦の日を迎えたあの島が、今、自分が目にしているあの島なのだ。
「人間魚雷なんて恐ろしいものが、こんな美しいところにあったんだねえ」
「ほんとに。信じられないわね、人間って愚かなんだか、賢いんだか…」 |