ア・カペラ(a cappella)の名演が楽しめるポップス・アルバムを今回から2回連続で紹介したい。ア・カペラは、伴奏なしで合唱や重唱をすることを意味するイタリア語だが、旋律を歌うだけでなく、パーカッションの役割をすることもある。手拍子や足踏みを交えてリズミカルな展開をすることもできる。素晴らしいア・カペラを聴くと、人間の声だけでここまでできるのかと驚かされる。第1回は日本編。
日本の男性6人組ア・カペラ・グループ「RAG FAIR」のライヴ作品。2003年2月16日渋谷NHKホールで行なわれた、初のワンマンライヴを収録している。彼らのメジャーデビューは、ちょうどゴスペラーズの人気が上昇しているころで、その影響もあり一気に人気が高まり全国区のアーティストとなった。テレビでは、自己紹介をア・カペラでやって視聴者を驚かせている。コーラスの素晴らしさはもちろん、ベースやドラムパーカッションなどあらゆるサウンドを人間の声だけで再現する技には脱帽。音楽性も豊かで、さまざまなジャンルの曲を歌い上げている。
スターダスト・レビューは、バンドの演奏や楽曲のクオリティもさることながら、コーラスの素晴らしさでも群を抜いたバンド。ライヴではよくア・カペラを聴かせるコーナーがあり、おおいに盛り上がる。この作品は、メンバーと客席とのア・カペラ合唱が行なわれた、1989年夏のコンサートをDVD化したもの。「Brand-New Wind」「たそがれラプソディ」「流星物語」などヒット曲ぞろい。ア・カペラの魅力とともに、白熱したライヴ・ステージが楽しめる。
男性5人組のボーカルグループ「ゴスペラーズ」は、ア・カペラのグループとして知られるが、この作品以前はア・カペラだけのアルバムはなかった。この8作目のアルバムで初めてタイトルどおり100%ア・カペラの作品が完成した。さまざまなアレンジや声の出し方を工夫して全曲を声だけで聴かせているのは、さすがである。
チキン ガーリック ステーキは、神戸を拠点に活動する6人組のベテラン・ア・カペラ・グループ。ライヴで人気のある曲をあっさりとア・カペラ・アレンジで聴かせてくれたりする実力はさすがだ。さだまさしの事務所に所属するアーティストとして知られ、さだと関連する仕事をすることが多く、このアルバムもそのひとつとして生まれた企画盤。「道化師のソネット」「秋桜」「天までとどけ」など、さだまさしの名曲を抜群のコーラス・ワークで聴かせてくれる。
日本女性4人によるア・カペラ・グループ「XUXU(しゅしゅ)」8作目の作品。デビュー当時は、クラシック、ジャズ、ポップスの3ジャンルのアルバムを3枚同時リリースして話題となった。そして、XUXU語といわれる独自の言葉で歌うスキャットもリスナーを驚かせた。多くの分野を歌いこなす彼女たちだが、このアルバムでは「アルルの女」「カノン(パッヘルベル)」「ポロネーズ第6番<英雄>作品53」など、クラシックの名曲をジャズ風にアレンジして歌唱。ウッド・ベースにジャズ・ミュージシャンの川本悠自を迎えて、新たなサウンドにもチャレンジしている。
サントリーの「南アルプスの天然水」、資生堂の「肌水」など、数々のテレビコマーシャルで活躍中の女性アーティスト「Sema(セマ)」による、独りア・カペラ作品。『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』などスタジオジブリ作品のテーマソングをア・カペラにアレンジしている。その声は神秘的な響きがあり、遠い森の奥深くで妖精が歌っている声のような魅力がある。表現力豊かな人間の声が作り上げる不思議な世界が体験できる1枚だ。
山下達郎の独りア・カペラは、海外でも大きな評価を得ている。この作品は多重録音で作り上げた、独りア・カペラのアルバム第1弾。アナログ版で発売された当時は、限定版としてリリースされ、1950年代中期から1960年代初期にかけてアメリカのボーカルスタイルとして流行した「ドゥー・ワップ」の楽曲をカバーしている。このCDは、その後1986年版として再発売されたもので、メインボーカルのほとんどを入れ直した。デジタルリマスタリングし、ボーナストラックを加えて発売された。山下達郎といえばア・カペラ、といわれるようになるきっかけを作った作品。第2弾、第3弾もおすすめ。