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はじよう おやじ流手料理 案内人 深川 達哉 「懇切ていねいな調理動画で、誰でも簡単にできる魚料理
釣魚12か月
連載第13回 十四 サワラ 知られざる高級魚の旨さを引き出す絶品料理 「幽庵焼き」「香り揚げ」  料理指導=細山和範(船宿割烹「汐風」店主)
 関東ではサワラを専門に狙う釣り船はない。たまに釣れるのは、アジやイワシを生きエサに、ヒラメや青物を狙っているときに外道(本命以外の魚)として掛かってくるか、青物狙いのルアーフィッシングのときだ。これからもわかるように、サワラは小魚を捕食する魚で、鋭い歯を持つその姿は、とても美しいとは言いがたいものだ。
この魚、釣り船ではあまり見かけないが、鮮魚店では切り身でよく目にする。しかし、あの姿を見たなら食指も動かないだろう……なんてことを常々思っていた
映像を見る 01.サワラ料理について
ら、それが大間違いだったことを今回の料理で教わった。釣りでも料理でも認知度の低い魚ではあるが、その味はまさに高級魚と、声を大にして言いたいほどメチャ旨い魚だったのである。そう実感したのが、これから紹介する料理だ。
幽庵焼き
映像を見る 02.サワラの下処理
映像を見る 03.タレ作り

材料
サワラ
ミリン
醤油
ゆずの皮のみじん切り(おろしでもいい)
ダイコンおろし
 サワラは頭を落として内臓を取り、水で洗って三枚におろすのだが、ここでは「幽庵焼き」用と「香り揚げ」用に使うだけなので、二枚おろしにして切り身にする。「幽庵焼き」の切り身は指2〜3本分ぐらいの幅で斜めに切って、身を大きく見せるようにする。こうすると見栄えもよく、焼き面も広くなる利点があるのだ。ちなみに「香り揚げ」用は、指1本幅の切り身にする。といっても、入手しようとしたらほとんどは鮮魚店になるはずなので、その切り身でかまわない。次に、「幽庵焼き」のタレ作りにとりかかる。
タレは酒2:ミリン2:醤油3の割合だ。なんだ「照り焼き」と同じじゃないかと思った人もいることだろう。私もそう思った。ところが細山さんが言うには、本来「照り焼き」のタレは、魚の骨をじっくり煮込み、醤油や氷砂糖やナニやらを煮詰めて寝かして作るものだという。ちょうどウナギの蒲焼きのタレのよう
なもので、即席で作れるものではないらしいのである。さらに魚は素焼きをし、そこからタレの塗り焼きを重ねて仕上げていくとか。
一方「幽庵焼き」は、先の割合で作ったタレの漬け焼きで、こちらの方が一般的には「照り焼き」と言われているのだという。
こがさずに焼く隠し技
 このタレを鍋でひと煮立ちさせ、アルコール分を飛ばして火を止め、冷めたらゆずの皮のみじん切り(おろしでもいい)を入れる。ここに切り身を1〜2時間ほど漬け込む。切り身がべっ甲色になったら遠火の強火で焼くのだが、じつはこれが難しい。
味噌漬け焼きもそうだが、甘いタレが付いた魚はこげやすい。中に火が通るまでに外側は真っ黒こげなんて経験、ありませんか。その問題を解決する一手を細山さんが教えてくれた。漬け込んだ切り身をラップにくるみ、1度電子レンジで火を通してから焼くの

映像を見る 04.漬け込み〜焼き
だ。こうすると焼き目を付けるだけで済む。ただし、焼いている最中も1〜2度タレをくぐらせるようにする。こうして焼き上がったら皮面を表に皿に盛り、ダイコンおろしを添えれば「幽庵焼き」の完成だ。
甘辛いタレが絶妙で、これだけ舐めても食欲が刺激されるのだが、サワラ自体の持つ甘味とマッチしてメチャ旨い。身ばなれよく、とろりとした皮裏の旨味もたまらない。魚好きにはぜひとも賞味していただきたい料理だが、さらにサワラの美味しさに驚いたのが次の「香り揚げ」だった。
香り揚げ
映像を見る 05.下ごしらえ〜コロモ作り

材料
サワラ
岩海苔
小麦粉
玉子
ダシ(水+市販の顆粒ダシでいい)
醤油
蕎麦(乾麺)
海苔(1p幅)
ダイコンおろし
ショウガおろし
抹茶塩(なくてもいい)
 この料理、簡単にいえばサワラの天ぷらだが、そこに磯の風味を加えたのが「香り揚げ」だ。揚げ物は滞りなく作業を進めるのが基本。揚げている最中にあれをやるのを忘れた……となっては料理が台無しになるので、段取りよく進むよう、はじめにすべてを準備しておく、と細山さんはいう。
まず、サワラの切り身を一口大(2等分)に切り、あぶった岩海苔をサワラの切り身と同じ大きさに切ってのせておく。次にコロモ作り。玉子1個をボウルに割り、水を加えて玉子を溶く。そこに小麦粉を入れてかき混ぜるが、完全に小麦粉が溶けるほどにはかき混ぜない。多少小麦粉のダマ(玉)が残るくらいでいい(このあたりの加減は映像を参照)。今回は岩海苔をのせた「香り揚げ」だが、コロモに青海苔をまぶしてもいい。
油の温度は、コロモが底につくかつかないいかぐらいで表面に上がってくるのが目安。温度を確認したら、岩海苔をのせた切り身に小麦粉をまぶし、コロモを付けて揚げる。油に入れた当初はパチパチと弾けるようだ
った音が、しばらくすると小さくなってくる。これは水分が飛んだ証拠で、鍋から上げる合図でもある。時間にして3〜4分くらいだ。これで「香り揚げ」は完了なのだが、もう1品、付け合せを揚げてみよう。
ふんわりもちもちで超美味
 乾麺の蕎麦を4〜5本まとめ、端にコロモを付けたら1cm幅の海苔を巻いて止める。これを油に入れると、乾麺が扇状に広がってくるので、その上に手でコロモを散らす。ものの2分ほどで稲穂のような揚げ物が出来上がる。これを「香り揚げ」の上に盛り、ダイコンとショウガのおろしを添える。
天つゆは、ダシ(水+顆粒ダシでいい)3に対して酒1、ミリン1を鍋でひと煮立ちさせたら完成だ。
岩海苔のさっくりとした食感と磯の風味が食欲を刺激する。が、なによりサワラが超美味しい。この甘さは、はっきりいって想定外の味わいだった。ふわっ

映像を見る 06.揚げる
映像を見る 07.天つゆ〜盛り付け

とした食感だが、そこにもちもちとした歯応えがあり、ああ、こんな旨い魚がいたんだなあとショックを受けたくらい。
この甘さをさらに実感したのが抹茶塩につけて食べたとき。甘さ、旨味が一段と際立ってくる。また、蕎麦の稲穂揚げは、ほとんどポッキーのような食感と香ばしさで、これはビールのツマミに最高!
――とにかく、こんなに美味しい魚だったら専門に狙いたいと、切実に思ったほど忘れられない味だったのである。
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