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私のイカ釣り初体験はヤリイカで、それは寒くて痛い1日だった。冷たい北風の吹くその日、ほかの釣り客がさっさと準備を終えてキャビンに入るなか、私はひとり長い仕掛けの処理に手間取り、船がかき分ける飛沫を浴びて、釣りを始める前にずぶ濡れ状態だった。その後もイカヅノ(擬似餌)のカンナ(針)がブスブスと刺さり、ついでに、釣り上げたイカにも手をガブリとやられて散々な目に遭ったものだ。
聞けば、魚には目もくれず、1年中イカ釣りに通う人もいるとか。そのときは「ほんまかいな?」と思ったが、家に帰って釣ったイカ(このときの釣果はヤリイカ、スルメイカ各5杯)を食べて、ちょっと納得したものだ。
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スルメイカに比べて、ヤリイカの身は甘くて柔らかい。しかしスルメイカにはヤリイカにはない旨味の宝庫とでもいいたい肝があって、こちらも捨て難い。となると、春から夏が釣期のスルメイカ、秋から冬のヤリイカと、1年中追いかける釣り人がいても不思議ではないと思ったのである。
どちらにしてもイカは釣りたてほど美味しく、料理では刺身がメインになるが、ヤリイカの刺身の手順はスルメイカのところで紹介したイカ・ソーメンを参考にしていただくとして、ここではイカ飯とステーキで、その美味しさを堪能していただきたい。
もちろんどちらも釣りたてでなくても、鮮魚店で売っているイカでできるメニューだ。
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ヤリイカ |
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塩 |
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もち米5〜7割+うるち米(普通の米)5〜3割 |
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昆布 |
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酒 |
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砂糖 |
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醤油 |
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駅弁でも人気のイカ飯は、普通スルメイカが使われるが、それを甘味と柔らかさのあるヤリイカで作ってみよう。とはいっても、イカの胴に詰めた米を炊き上げ、同時に辛くも薄くもならずにイカの身に煮汁を染み込ませるのはなかなか難しい。失敗しようものならほとんど修復不可能で、すべて廃棄となってしまうかもしれない。だがここで紹介するのは、そんな問題を解消した「失敗のない」イカ飯レシピだ。
まず下処理。足(ゲソ)の付け根にある吸水管を下にして、目と目の間から指を入れて胴と足の接合部を外し、足をゆっくり引き抜く。すると内臓も一緒に出てくるので、スミ袋や内臓を取り除く。次に目と口を外し、よく洗ってゲソの吸盤を包丁でこそげ落としておく。胴は軟骨を取り、中を水洗いする。この下処理は、次に紹介するステーキも同様だ。

イカに詰めるもち米とうるち米の量は、胴の半分が目安なので、そのあたりで全体の量を決める。ただし割合は「もち米が多い方がいい」と細山さんは言っていた。
米は研いだ後、30分ほど水に漬けておく。水をよく切った米にヤリイカの足を細かく切って混ぜ合わせ、それを胴に詰めていく。箸などで押して胴の奥まで詰めこんで半分くらい入ったら、胴の入口は爪楊枝で縫い刺しにして止める。さて、これからが「失敗しないイカ飯」のポイントだ。
普通は醤油味の煮汁で煮詰めていくのだが、イカの数や大きさ、水の量や火力の差などで、仕上がる味のバランスに違いが出てくる。言い換えれば失敗作も多くなるのである。だが、そこに一手間かけると失敗しなくなる、というのが細山流だ。
その一手間が下煮だ。
イカが覆われるくらいたっぷりの水に昆布を入れた鍋で煮ていくのだが、鍋の中が煮立ってきたら弱火にしてコトコト煮ていく。強火で煮るとイカの身が硬くなってくるためだ。また、この段階で身から水分が出てくるので、いきなり醤油味で煮ると、煮汁とのバランスが難しくなる心配も、この下煮によって解消される。こうして5〜6分ほどすると、イカの胴が膨れてくる。それが上げる目安だ。次に、水気を切ったこのイカを仕上げとなる煮汁で煮詰めていく。
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煮汁は水7に酒3の割合で、これもイカが隠れるくらいたっぷりの量だ。そこにレンゲで山盛りの砂糖3〜4杯に醤油を入れるが、その味は醤油の味はするものの甘味が強くて水っぽいものだ。煮魚の煮汁と比べるなら、こんなに甘く醤油が薄くていいのかしらん? と思うほどだった。
その煮汁に下煮したイカを入れたら沸騰する手前でトロ火にして、ここからじっくり煮詰めていく。30分ほど煮詰めたところで再度味見をしてみると、先ほどの甘味が強くて水っぽかった味が、甘味と旨味が加わった醤油味に変わってきていることがわかる。濃い味が好みなら、さらに煮詰めればいいし、薄味が好みならその手前で火を止めれば、イカ飯完成となる。つまりこの方法で料理すれば、好みの味でイカ飯を作ることになり、まず失敗はないというわけだ。
出来上がったイカ飯は、すぐに食べないのであれば鍋に入れたままにしておく。また、すぐに食べるときは一口大に切って、煮汁を軽くかけ回しておく。こうしておくと、イカが乾かずに柔らかさを保てるからだ。
さてその味は、煮汁がスッと飲めるほどの薄味系にしたイカ飯だったが、味はしっかり身に染みていて、酒の肴ともご飯ともつかぬ勢いで腹の中に収まっていった。しかも米に混ぜたゲソの細切れがイカの風味を倍増させて食欲を刺激する。まさかイカ飯が家庭で作れるとは、と疑問視していたが、これなら失敗を恐れずに作れる。まずはお試しいただきたい。
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ヤリイカ |
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ニンニク油 |
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バター |
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コショウ |
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ブランデー |
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ホウレン草 |
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レモンの輪切り |
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次に紹介するのは、まさにボンビバン流「簡単・豪快・美味」料理のイカ・ステーキだ。
下処理したヤリイカは、足はそのままかタテ半分に切っておき、胴はエンペラ(胴の上部にある三角形の部分)を上にして1〜2cm間隔で浅く数か所、ヨコに切れ目を入れておく。フライパンに胴が入りきらないのであれば半分に切るが、けして輪切りにしたり胴を開いたりしないこと。ソテーしたときに丸まってくるのを防ぐためだ。また油飛びを防ぐために、水気はよく取っておく。
フライパンに、タチウオ・ステーキの項で紹介したニンニク油(ニンニクスライスを1時間以上漬け込んだサラダ油またはオリーブ油)をひき、今回はニンニクスライスも一緒に入れる。ニンニクがキツネ色になったらこれを取り出し、イカをフライパンに入れる。そこにコショウを振りかけ2〜3cm角のバターを2個入れる。塩をかけないのは、イカの身に塩味があるからだ。
火力を弱火にしたら、アルミホイルで蓋をして、その上から鍋の蓋などで押し付けてこげ目を付ける。イカは火の通りが早いので長く押し付ける必要はない。裏側も同様にこげ目を付けたら、ブランデーをかけ回してフランベする。これで出来上がりだが、残った油には旨味がいっぱい詰まっているので、ホウレン草などで付け合せを作ろう。
茹でて冷水にさらしたホウレン草は、水をよく絞って適当な大きさに切り、それを残った油で再度ソテーする。すでに火は通っているのでサッと1分ぐらい炒めればいい。
イカの胴は下ごしらえで入れた切れ目から輪切りにして皿に盛り、先ほど取り出したニンニクをのせる。そこにホウレン草とレモンの輪切りを添えれば「簡単・豪快・美味」ステーキの完成だ。
調理のときから鼻を刺激していたニンニクとバターの香りだから、かぶりつくように食べた。肉厚のボリューム感がたまらない美味しさで、これなら年中イカ釣りも納得の味だったのである。
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