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人も魚も、見た目で判断してはいけない。釣りでのいい例がオニカサゴだ。
水深200mから釣り上げられても元気いっぱいの引き味。オレンジ色の相貌は、まさに赤鬼で、45p級なら大人のコブシが入るほどの大口を開けて海面に登場する。しかもピンと立てた背ビレの先端はトゲ状になっていて、マリンブーツを貫く鋭さがある。これに刺されると患部が数倍に腫れ上がり、あまりの痛さにその日は釣りができないほどだという。こういう魚には半径1m以内に近づいてほしくないものだが、木枯しが吹くころになると、オニ退治の釣り船はガ然賑わってくる。
じつはこのオニカサゴ、人によってはフグより旨いというほど超美味な魚なのである。しかもエラとウロコ以外はすべて美味しく食べられる。鮮魚店での入手はほとんど不可能だから、釣ってくるしかないのである。私など、最初は不気味な悪相魚と見ていたのが、食味の良さに圧倒されて、いまではつぶらな瞳も可愛い、オレンジ色のニクいヤツというイメージに変わってしまったくらいだ。
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オニカサゴ
 
今回の料理
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01.今回の料理の流れ |
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ところで背ビレのトゲは、釣り上げたときにペンチやハサミで切り落せば刺されることはないし、調理の際も安心だ。それにトゲから分泌される毒は、熱を加えるとたんぱく質に変質するので、食べるにはなんら心配はない。また普通なら、釣った魚は氷締めにして持ち帰るが、オニカサゴはクーラーボックスに海水だけ入れて、活かして持ち帰ることをお奨めしたい。活魚から料理するのとしないのでは、食感や味に歴然と差が出てくるからだ。
ちなみにオニカサゴは個体数が少なく、全長50p、2sになるまで20年かかるとか。小型が釣れたらぜひとも海に返してやりたいものだ。
さてこのオニカサゴ、刺身はもちろん、唐揚げ、塩焼き、煮付けなど、どんな料理でも美味しいが、ここではしゃぶしゃぶ〜鍋料理、皮と胃袋、肝の湯引きの珍味、そしてヒレ酒と、エラ、ウロコ以外すべて食べ尽くす極上のメニューを紹介しよう。 |
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その前に、活魚のオニカサゴを締めなければならない。そこで目のすぐ後ろの頭部を包丁の峰で強打する。これでぐったりするので、背ビレにトゲがあればこれを折ってしまおう(このときや、ウロコを取るときに、突然暴れだすこともあるので、口の中に親指を入れ、下あごを持ってやると魚の動きを抑えることができる)。
次にウロコを取り、腹を切り開くが、肝や胃袋も美味しくいただくので、傷つけないよう注意する。これが済んだら、内臓を取り出し、頭を落とす。最後に胸ビレ、尾ビレを切り離しておく。これも後で美味しい酒に変身する。 |

ここでは片身をしゃぶしゃぶ用、もう片身は鍋料理に使うので二枚おろしにする。つまり鍋用の片身は背骨が付いたままでOKというわけだ。しゃぶしゃぶ用の片身は、腹骨をすき取り(これは後で鍋の具材にする)小骨を抜く(アジやマダイのように小骨が背骨に沿ってあるのではなく、腹側にあるので、指でなぞりながら場所を確認して骨抜きで取り除く)。次に皮を引き(皮も後で調理するのでとっておく)、尾側を右に、背側を下にしてそぎ切りにする。薄くもなく厚くもない程度と細山さんはいうが、私など素人が切る分には充分薄造りと思えるくらいの厚さだ。これを指と包丁の刃先を使って平皿に1枚1枚貼り付けように盛り、3〜4pに切った万能ネギを添えると完成だ。


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オニカサゴ 1s前後の片身 |
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万能ネギ |
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鍋のダシ汁:水8、酒2に昆布 |
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水8、酒2に昆布を浸したダシ汁が煮立ってきたところに、ネギを巻いた切身をしゃぶしゃぶし、もみじおろしと刻みネギを入れたポン酢ダレに付けて食べる。もちもちとした食感の後にほんのり広がる上品な甘味は、この魚の美味しさを誰もが実感する一瞬だ。切身をワサビ醤油で食べても、弾力ある食感でさらに甘味が引き立つようだ。これが活魚ならではの味わいで、船上で氷締めしたものでは水っぽくなり、弾力ある食感や旨味に大きな差が出る。
それにしても旨いなあ。しばしその味にうっとりするが、オニカサゴの旨さはこれだけでは終わらない。 |


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オニカサゴの肝、胃袋、皮 |
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ポン酢 |
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下処理でとっておいた肝と胃袋、それに皮を湯通し(霜降り)するが、その前に胃袋を開き、内側を塩で揉んで薄皮をこすり取って水洗いしておく。水を煮立てた鍋に皮と肝は3〜4秒くらい、胃袋は30秒ほど浸して鍋から上げ、冷水にさらした後、水気を取っておく。皮と胃袋は細かく、肝は2等分くらいに切って小鉢に盛り、ポン酢で食べる。と、まあ簡単な料理だが、これがじつに旨い。
皮のぷりぷり、胃袋のこりこりと、酒の肴には最高の珍味。また旨味たっぷりの肝はそれだけ食べても美味しいが、醤油に溶いて刺身の特製ダレとして食べても絶品の味となる。 |
しゃぶしゃぶを食べ終えたところで、このダシ汁を使って鍋料理に移ろう。
かぶとは2つ割りにした後、5〜6等分に切っておく。骨付きの片身も4〜5等分にきり分け、それらを湯通し(霜降り)にして冷水でウロコやヨゴレを洗い水気を取っておく。
これを葛切り、白菜、水菜、シイタケ、シメジ、エノキ、長ネギ、豆腐などの具材とともに鍋に入れればオニ鍋の完成。ただし、白菜だけはあらかじめ軽く茹でて、水気を絞っておく。生の白菜だと、そこから水分が出て、ダシが水っぽくなるからだ。それにこの下ごしらえをしておくと、具材の火の通りが均一になって、どれからでも食べられる、と細山さんが鍋料理の裏技を教えてくれた。
薬味を入れたポン酢ダレにつけて食べるのだが、水と酒と昆布だけのダシ汁の、どこにこんな旨味があったのかと思うほど美味しい。もちろん最後は、玉子雑炊にして残らずいただく。この旨味がまさにオニカサゴの美味たるゆえんで、釣り人を海へと向かわせるのである。極め付きがオニのヒレ酒だ。
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オニカサゴのかぶと(頭)と骨付きの片身 |
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葛切り |
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白菜 |
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水菜 |
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シイタケ |
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シメジ |
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エノキ |
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長ネギ |
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豆腐 |
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ゆずの皮の千切り |
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薬味:もみじおろし、ネギ |
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雑炊:ご飯、玉子 |
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オニカサゴの胸ビレ、尾ビレ |
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熱燗の酒 |
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下処理で切り分けておいたヒレは、ビールなどのガラス瓶か、あればアクリル板に広げて貼り付けて乾かす。乾燥した冬の日なら2日ほどで乾くが、剥ぎ取ったあとも1〜2日くらい乾かしておきたい。
乾いたヒレは網焼きにして、美味しそうな香りが立ち上がり、軽くこげめが付いたら1合ほど入る器に入れ、熱燗を注いで小皿で蓋をする。待つこと1〜2分。蓋を取ると同時にマッチの火をかざすと(細山さんはマッチでないとダメ。ライターの火では炎が立たないといっていた)ボワッと炎が立つ。これが呑んでよしの合図。
日本酒ではあるが、まるでコクのあるダシを呑んでいるかのような味。だからついつい酒がすすむ。そしてオニカサゴの旨味の源泉に触れたような気分になるのである。
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