ムースとの出会いを夢見て写真家になったわけですが、ロッキーのイエローストーン国立公園で撮った1枚には忘れられない思い出があります。
ある日のこと、その前日に撮ったムースの写真に満足できなくて、夜も明け切らないうちからひとりで車で出かけ、目的の場所に立ってみると、1頭のムースと出会いました。そのムースはぼくから約200メートルほど離れた草原の中に立っていて、近付こうと思えばそれができたのですが、ぼくはあえてその場所に留まりました。ムースがいた草原は朝露で濡れていて、それがものすごくきれいだったからです。そこを歩けばせっかくの環境が、ぼくの足跡で台無しになってしまう。ぼくはムースに向かい「こっちに来てくれ」とテレパシーを送ったのです。