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写真で綴る自分史 もういちどカメラ 藤森元之

押しかけ写真塾 藤森元之 プロフィール
実践編第2ステージ 写真を続ける力とは!? 第6回 レンズワーク
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  「レンズワークって、レンズの特性を活かすことでしょう? 簡単じゃないですか」
「あなどってはいけませんよ。レンズの特性を知っていればいいってものじゃないんですから」
「レンズの種類は画角の変化に対応して何種類もあるわけですから、撮りたい範囲をカバーするレンズを使うことではないんですか?」
「表面的な撮影行動はそのとおりです。でも、レンズを使い分けるのは、それだけではありません。もっと深い意味があるのです」
「ここからここまで写したいからそれをカバーするレンズを使う、それではいけないと?」
「レンズの使い分けを知らない人はそうします!」
「……」
「そもそも、ここからここまで写したい、という写真がそれほどありますか?」
「……」
「写したいのは撮りたい範囲ではなく、被写体の特徴や感動を伝えるテーマを表現する最適な配置なのです」
「そうでした……」
「カメラという道具を使って、表現したいテーマを切り取るのでしょう!」
「はい……」
「それなら、レンズの表現力の特徴をもっと理解する必要がありそうですね」
「……では、それを教えてください」
  「50mmが標準レンズだということはご存じですね?」
「(ムッ)当然です!」
「では、その意味は?」
「人間の眼にもっとも近いからです!」
「何が近いのですか?」
「見える範囲でしょう!」
「違います。見た目と同じというのは、遠近感が同等ということなのです!」
「えっ?」
「レンズの違いとは、一般に画角の範囲と表現されますが、カメラマンにとってはそれほど重要なことではありません」
「といいますと?」
「レンズの焦点距離によって、表現上の違いがあるのですよ」
「そ、それを、もっと詳しく教えてください」
「広角レンズからいきましょうか。広角レンズは35mmより短いレンズのことで、遠近の強調感や歪みが出てきます。焦点距離が短いレンズほど、その特徴は大きくなります」
「そうですね」
「被写体に近づくことによって遠近感が強調されるので、カメラポジションや絞り値を選択すれば、広角レンズならではの特徴が出せますよ。広大な風景のほか、狭い場所でもおもしろい写真になります」
「なるほど! では、どんな使い方が有効でしょうか?」
「2〜3mにピントを合わせ、f11にセットするのが標準です」
「では望遠レンズについては?」
「70mmよりより長いレンズが望遠レンズで、長くなるほど大きなボケ効果が出てくるのはよく知っていますね」
「マクロレンズの代用としてよく使っていました。ボケ味の表現は好きですから」
「それは被写界深度が浅いからです。そのほかに、遠くのものを引き寄せる効果があります」
「それも知っています!」
「望遠レンズは遠近感が弱くなるので、肉眼の視覚を超えて圧縮された映像になります。そのほかに、トリミング効果、長焦点のマクロレンズとしても使えます」
「それが望遠レンズの特徴なのですね」
「あなたは手ブレに気をつけてください。望遠レンズを使う際の最大の注意点ですよ」
「……弱点は自覚しています……」
「それに、レンズの違いを理解するだけでなく、どう使いこなすかが大切なのです」
「そのポイントは何でしょうか?」
「焦点距離の違いによる画角の変化と遠近感を覚えて、それをどう表現したいかに活用できるようになることですね。これはむずかしいことですよ」
「そうできるよう、がんばりま〜す!」
 
●御茶ノ水

電車を望遠レンズの圧縮効果で撮りたいと、御茶ノ水・聖橋で実習。ISO200 にセットした。

(A)
焦点距離55mm(88mm)
f14 1/250秒

コメント
御茶ノ水橋の車と人の混雑と対照的に、神田川をゆっくり往来する船。静かな川面にきれいな波紋を描いて進む。手前の空間をどの程度空ければいいのか。下の写真よりこのほうがロマンが感じられて好きだ
講評
都会の喧騒の中でこんなゆったりとした景色に出会えて楽しい。画面中央を境に上部に橋や人影、川面の引船など実景を集め、下半分に川面に映る虚像を配した構図は作者の好みなのか、画面構成では上部がやや重くなりすぎて、ゆったり感が損なわれたように思います。
(B)
焦点距離55mm(88mm)
f14 1/250秒

コメント
上の写真から船が手前に進んだ景色。無駄なスペースがないだけ、写真としてのまとまりはこちらのほうがよさそうだ。ピントもこちらのほうがいい
講評
船がいい位置に来るのを待って絵づくりをしただけに構図は決まりましたね。川と船に的を絞ったシンプルな画面構成はわかりやすい。しかし対象を大きく捉えたために、見る者はそこに注目するので、構図にとどまらず、対象の美醜にも配慮が大切になります。この写真はそんな見方をすると、船の姿や、色彩が美しければ完璧な作品になったと思います。

(A)と(B)は同じモチーフを、同じ中望遠レンズで表現したものですが、作者の視点の違いでこんなにも写真が変わってしまう。船はどこに配置するのがいいのか、答えはおそらく十人十色でしょう。だから写真は楽しい。
 
●ゆりかもめ車内〜お台場
焦点距離163mm(260mm)
f13 1/250秒

コメント
曲がりくねったゆりかもめのレールの上に無機質なお台場のビル群をのせて撮る。ゆりかもめ車内から望遠系で撮ると圧縮効果が強く出ておもしろい映像になるが、揺れる車内は足場が悪くて手ブレが心配
講評
望遠レンズの圧縮効果がうまく表現された作品。電車がいたらもっと内容の濃い作品になったでしょう。今回のテーマに合わせた典型的な画面構成です。
焦点距離123mm(197mm)f16 1/250秒
コメント
ゆりかもめは至るところ柵やガラスで覆われている。先頭車両の最前列に陣取って進行方向を見ると、こんな景色が見えた。圧縮効果が効いて、まるでブラックホールに吸い込まれるようだ。とっさの撮影で、構図や露出を判断している暇がないので、あらかじめマニュアルでセットした
講評
曲がった線路とそれを囲む柵の網目模様が、望遠レンズの圧縮効果によって不思議なパターンを描く。運転席正面からのカメラポジションは迫力があって、中央のトンネルへ吸い込まれるような臨場感が効果的に表現されました。着眼のよさに加え、レンズワーク、シャッターチャンスなどがうまく噛み合って、見ごたえのある作品になりましたね。
焦点距離70mm(112mm)f11 1/640秒
コメント
ゆりかもめは車輪で走る無人運転の連結車両だ。走行路を走るのでレールはない。お台場エリアには奇抜な建物が多いが、まだまだ新たな建造物ができつつあるようだ。お台場行きは望遠系レンズで撮るのが目的だったが、こんな景色は標準ズームの範囲だ
講評
ゆりかもめが走る地理的環境がまとまりのよいフレーミングに収まって、眺めていて楽しい。半逆光に近い光線状態によって、見苦しい部分が適度に抑えられ、電車の線路が強調できた点がこの写真の成功の鍵となりました。被写体の状況をよく見て画面を構成した立派な作品です。
モチーフ
構 図
ピント
露 出
表現力
光の選択
レンズワーク
 
●お台場
焦点距離250mm(400mm)f13 1/500秒
コメント
船の科学館からゆりかもめをねらう。電車を撮って圧縮効果を表現するのは、カーブの内側が見えるポイントで待つのがいいという。焦点距離250mmで撮ったが仕上りに不満。もっと拡大して撮ったほうがよさそうだが、これが最大。試みにトリミングしてみた
講評
電車や船のある風景はなぜか夢があって楽しい。よく整理された画面構成は気持ちよく、楽しいイメージを阻害するものが排除されて素晴らしい作品になりました。トリミングによって大きく切りとって見せるのもテーマを意識しての方法ですが、画面から受ける印象は期待するほど変わらないでしょう。何故ならレンズが描写した遠近感がそのまま変わらないためです。対岸の霞んだ景色やホテルの壁を演出する光、緑に囲まれた線路など、すべてがこの絵作りを盛り上げる要素になっていると思います。切り捨てるのは惜しい。
モチーフ
構 図
ピント
露 出
表現力
光の選択
レンズワーク
焦点距離84mm(134mm)
f14 1/500秒

コメント
船の科学館から羊蹄丸を前景に青海客船ターミナルを遠望する。赤い色を上下に配して、色彩の変化をねらった。35mm換算で約135mmだから、圧縮効果はそれほどねらえない。赤い鉄骨群はどんな役割をするのだろうかと、気にかかる
講評
港湾風景は色彩が豊かな絵作りができて楽しい。夕方に近づくと色味もけばけばしさがなくなり、順光による力強い描写とすっきりとした色の盛り合わせがうまく表現されていい写真である。違和感のないレンズワークがよかった。
焦点距離84mm(134mm)f10 1/250秒
コメント
お台場海浜公園の棕櫚並木がきれいだ。並木の圧縮効果と、その脇に光っていたベンチ群がアクセントになり、空ももっと青くなると思ったが、撮ってみるとともにそれほどの効果はなかった
講評
緑と空のシンプルな構成がすがすがしい。斜光線が棕櫚や背後の緑を美しく描き出しています。アスファルトに落ちる棕櫚の影をもっと取り入れたら、情感が表現できてよい作品になったでしょう。
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