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藤森元之
「光には2種類あります。自然光と人工光の2つが」
「はい、そうですね」
「人工の光はいろいろありますが、その対処法はむずかしいので、今回は自然光に限定しましょう。これがわからなくては、外で写真を撮る技術が向上しませんから」
「わかりました……。では自然光について教えてください」
「光の種類については挑戦編第3回で『光の方向と質感の描写』講座でお話しましたね」
「光については無頓着だったので、整理して教えていただいて、よくわかったつもりです……」
「では次のステップに進みましょうか」
「次といいますと?」
「光を読む訓練が必要です」
「光を読むとは、いったいどういうことでしょうか?」
「ひとつは、光の強弱による質感の判断、コントラストといってもいいですね。もうひとつは光の変化を予測して、ポジションを変えたり、時間の経過を待つことです」
「ポジションを変えるのはわかります。撮りたい光の方向へからだをもって行く、移動するわけですね。いい光がくるまで待つというのは?」
「いい光とは、表情や色彩をあざやかに見せる光のことで、カメラマンが撮りたいイメージになると考える光のことです。それを単に待つのではなく、予測して待つのです」
「ちょっと待ってください……、自分がほしい光を待つのですか?」
「そうです。自分好みの光、といってもいいでしょうね」
「いい光には撮り手の個人差があると?」
「そうです。自分好みの光があるのですよ。それが写真の個性になります」
「プロはそんなことをしているのですか?」
「そんなにむずかしいことではありませんよ」
「初心者にとってはむずかしいですよ!」
「たとえば、朝の光は黄色でだんだん青白くなります。夕方の光はだんだん赤くなります」
「そうですね」
「それなら予測できるでしょう?」
「そうか!」
「もうひとつは、太陽の移動で、光と影は変化します」
「それが?」
「たとえば、この構図で建物を撮りたいが、暗い影がある。もう少し時間がたてば、明るくなるという状況がありますね」
「光が射すのを待つのですね!」
「最適な光の状態を予測し、時間の経過を待つこともポジションを変えることです」
「なるほど! そうですね」
「光が演出する多様な景色は、被写体を見た瞬間が撮影に最適というわけではありません。もっといい状態はないか、自分好みの色は出せないかなどと、欲張ってみてもいいでしょう?」
「見たとおりに撮るのが写真だと思っていました。大きな間違いだったのですね」
「瞬間を撮るのは、前回のシャッターチャンスでお話したとおりで、それも写真ですが、考えて、待って、待って、自分の色やカタチをさがして撮るのも写真の醍醐味のひとつです」
「仕上がりを考えて撮るということですか! 写真というものはクリエイティブなものなのですね」
「撮影経験を積み重ねていくと、やがて自分好みの光がどんなものかがわかってきます。個性的な写真が撮れるようになる第一歩ですよ」
「そうか、そうなりたいものですね」
●新宿副都心を撮る〜つづき
f18 1/200秒
都庁広場の飛び込み台のようなオブジェが、新宿センタービルに連結するようなポジションを選んだ。窓に太陽の反射を映したかったが、それは欲張りな注文か。タイミングを計れば撮れたかもしれない
上下の曲線に抱かれたようにビル群を配置した構図はよく整理されて見ごたえがあります。夕方の低く、強い光がビルに躍動感を与えて、引き締まった構図とともに力強い作品となりました。
モチーフ
構 図
ピント
露 出
表現力
光の選択
f11 1/200秒
都庁の広場に陽光の反射が筋模様に映り、手前の赤いオブジェと共に画面に動きを出してくれた。広場を横切る3人がいい位置に来るまで待って撮る。夕暮れの感じを出そうと、ややアンダーにした
欲張りすぎた画面構成ですね。狙いがやや散漫になってしまいました。この場合は右半分の光と人物に焦点をあてて、意図の明確な構図にまとめるのがよかったと思います。
f8 1/200秒
都庁広場の縁石に座ってくつろぐ2人の娘に陽が射し、白い帽子の女が通り過ぎていく夕暮れ。背中合わせのブロンズ像とともに、物語を予感させるような光景だった。娘たちに陽が射すまで待っていたら、幸運にも白い帽子の人が通りかかってくれた
夕方の光を効果的にとらえたすばらしい作品です。さまざまな要素がうまく噛み合った、こんなシャッターチャンスに巡り合うことはなかなかないものです。辛抱強く待ってつかまえた決定的瞬間です。
モチーフ
構 図
ピント
露 出
表現力
光の選択
f6.3 1/200秒
宮崎駿氏のアニメに出てくるような赤と黒の2匹のてんとう虫のオブジェが夕映えに輝く。逆光で池に映りこんだ空と木立を大きく入れ、通りがかりの人を待った。都庁にはスーツ姿の男が似合うようだ
水の映り込みを生かした絵作りはカメラマン氏の得意なモチーフです。ここにもその得意技が光っていますが、この場合のテーマである光の描写をもっと強く意識的に出した構図を作れなかったでしょうか。
f10 1/200秒
都庁舎南側庭園のタイヤのような石造りのオブジェの中に、渡り廊下を入れて撮る。こんな構図を1枚くらいは撮ってみたくなるものだ。オブジェが暗く、廊下が明るく照らされていたので、露出のバランスに苦心した
オブジェの石の質感やブルーグレイの色調がすばらしい。露出に苦心しただけのことはありましたよ。都庁建物のスケールの大きさを人物との対比で見せていたり、オブジェの上部をカットして大きさを強調したり、微細な観察眼を感じます。露出、表現力の優れた作品です。
f3.5 1/25秒 ISO 400
宵闇のせまった新宿西口の中央通。街灯がともって近くの木々を照らし、タクシーの赤い光の列が美しいが、空はまだ明るい。夕暮れ時の光景にはいつも情緒を感じてしまう
静かすぎる画面に変化がほしい。そのためには、やはりスローシャッターで車の光を流すのがよいと思います。
f3.5 1/30秒 ISO 400
新宿西口と南口を結ぶモザイク通りからサザンテラスに至る新宿テラスシティは“Starry Light 2008”というイベント中で、モザイク坂は屋根代わりに銀河のような電飾で覆われていた。その上天には月。行き交う人々がとにかく若い
よいモチーフに出会いましたね。街、人、イルミネーション、月などがうまく配置されて夕暮れの街の雰囲気が描写されていますが、ややインパクトに欠ける画面構成です。中央奥の白い光とイルミネーションに焦点を当てたフレーミングにすることで、意図も明確になり、今回のテーマにも合った作品になったでしょう。
f3.5 1/30秒 ISO 400
これも“Starry Light 2008”の1コマ。映像と光の饗宴が織りなす幻想的なモザイクステージだ。目まぐるしく変わる光をどうとらえるかに苦心したが、ファンタジックな映像なので、どう撮ってもそれなりの絵になったようだ
露出の選択がよく、色彩感の美しい画面構成です。右奥に街の雰囲気が取り込まれて、写真に広がりがでました。人物がいたらさらによい作品になったでしょう。