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写真で綴る自分史 もういちどカメラ 藤森元之

押しかけ写真塾 藤森元之 プロフィール
実践編第2ステージ 写真を続ける力とは!? 第4回 シャッターチャンス
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シャッターチャンスというと、街角のスナップをはじめ、スポーツ選手の一瞬の表情や動き、動植物の生態、自然現象にみる一瞬など、さまざまなシーンが思い浮かんできます。

このような典型的な場面だけでなく、ベランダから眺める空の表情や、人々の行き交う街角、夕日を映すビルのガラス窓、家族の表情など、私たちの日常生活の中にも心を動かされるシーンはたくさんあります。カメラが巡り合う多くのシーンの中で二度とない瞬間、これをシャッターチャンスというのでしょう。

しかし、よく考えてみると、そのようなシーンにたびたび出会うことはありません。写真は現場主義です。そこに居なければその場の貴重な瞬間を写し取ることはできません。

それならば、「犬も歩けば棒にあたる」の喩えにならってウロウロと歩き回り、偶然のチャンスに頼ってみても、それは時間や労力のむだ使いというものでしょう。

マグナム写真集団の創設者アンリ・カルチエ・ブレッソンは決定的瞬間を捉える名手としてたくさんの作品を残していますが、彼がイメージするパリの街角を撮影するにあたって、その場所に連日足をはこび、どの時間にどんな人たちが行き来するのか、時間によって光はどう変わるのか、などを克明に記録していたという話を聞きました。

そうなのです! シャッターチャンスは自分で準備するもので、偶然を期待する宝くじとは訳が違うのです。

必然の中で偶然を掴み取るというのでしょうか。このように理解してチャレンジしてはどうでしょう。

 
●チャンスを逃した無念さ

すばらしいシーンに出会ったのにカメラを持っていなくて悔しい思いをしたり、慌ててカメラの操作を間違え、折角のシーンを撮り損なったりして、シャッターチャンスを逃してしまった体験は皆さんも思い当たることでしょう。私にも数々のにがい体験があります。その中から、思い返すたびに悔しさのつのる失敗談を書いてみます。そしてその失敗から私が学んだものを皆さん伝えたいと思います。私は30から50歳にかけて、20年以上にわたり湘南の海をテーマにした写真に取り組んでいました。四季折々の光や風、浜を訪れる人たちなど、表情ゆたかな海の魅力に夢中でした。

とりわけ、元旦の日の出の風景は感動的なもので、毎年かならず出かけていました。除夜の鐘を聞く頃になると、浜には人が集まってきます。焚き火をかこみ日の出を待つのです。そんな人の輪が浜を埋め尽くすほどの群集になって夜中の海岸は賑やかなお祭り広場といった雰囲気です。

作例1
データ 不明

焚き火で暖をとりながら暗い浜辺で日の出を待つ人たち
 

いよいよ日の出を迎えるそのとき、浜は一瞬静寂につつまれ、人々はみな赤く滲む空の一点に目を凝らして待ちます。やがて遠く山の端から太陽が顔を出すと(湘南海岸では海からの日の出は見えません)、どよめきとともに柏手を打つ音が響くのです。 

ある年の元旦のことです、私は例年どおり日の出にむけてあらかじめセットしたカメラのシャッターを夢中で押し続け、無事に撮影を終わらせました。ホッとしてひょいと振り返った時、目の前にひろがる光景に息を呑み、すっかり動揺してしまいました。

視野からはみ出すほどの雄大な、そして朝日に紅く染まる富士山を背に、手を合わせ日の出を拝む老若男女の大群衆が目の前に展開していたのです。私は気を取り直し、あせる気持を抑えつつフィルムを装填し、また無我夢中でシャッターを押し続けましたが、すでにシャッターチャンスは過ぎていました。その上、露出の設定も日の出のままというお粗末さに、自身にたいする腹立たしさがつのるばかりでした。時間的な余裕は十分あったのに、なぜ周囲の状況をみることができなかったのか、今もその無念さを忘れることができません。その後、湘南の海で同じ光景に巡り合うことはありませんでした。

作例2
データ 不明

穏やかな元日の夜明け。赤から紫へグラデーションが美しい空の色。これからドラマチックな日の出を迎える。
 

二度と巡り合わない瞬間を逃さず捉えるためにどうすればいいのか。この苦い体験から、私は撮影時の心がけを会得しました。それは次のような単純明解なものです。


携帯時のカメラの設定
・AE、AFともすべてフルオート
・ISO感度設定もオートあるいは800の高感度にセット
・連写モード
とっさのモチーフに出会ったときの撮る態度
・あれこれ考えず、ひたすらフレーミングに集中する
・心が動くその時、直感的にシャッターを押す

以上のことを念頭において、私は日常の撮影行動に生かしています。あなたもぜひ一度試してみてください。

きっとこれまでにない作品ができることでしょう。

●古屋光雄先生(大先生)のプロフィール:
写真家。1934年生まれ、山梨県出身。大学卒業後、会社勤務を経てフリーランス・フォトグラファーとなる。1976年、東京六本木に株式会社光スタジオを設立、コマーシャルフォト、エディトリアルフォトを中心に雑誌、企業の出版物、自治体の刊行物などで幅広く活動
●使用機材 :
生徒:CANON EOS 40D + EF-S 55-250mm F3.5-5.6 IS USM
大先生:CANON EOS 1+EF 70-200mmF2.8L
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