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藤森元之
「シャッターチャンスについて考えてみたのですが、よくわかりませんでした。これまでの学習テーマとどこが違うのでしょうか?」
「どんなときにシャッターチャンスという言葉を使っていましたか?」
「はい、“今がシャッターチャンス”というときに使っていました。瞬間ではないのでしょうか」
「そのとき、どうしていましたか」
「速く撮らなくちゃチャンスがなくなってしまうと、あせる気持ちがありましたね」
「それで間違いはないのですが、すばやく撮ることだけがシャッターチャンスではありません」
「と、いいますと?」
「速く撮らなくてはいけないときもありますが、たいていは、被写体のいい状態がなくなってしまうわけではないのです」
「でも、チャンスはなくなってしまうかもしれないでしょう?」
「シャッターチャンスを瞬間と考えれば、たしかに消えてしまうかもしれません。しかし、そんなケースはこれまで、ほとんどなかったはずですよ」
「そういわれてみると、たしかにそうですね……」
「私たちは報道カメラマンではないのですから、決定的瞬間を追いかけません。大切なのは瞬間を追いかけてすばやく撮ることではなく、被写体の発信するメッセージをどう受け取り、どのように確実に伝えるか、です。その方法を考えていたはずです」
「そうでした……」
「ですから、被写体が伝えたいことを、いつ、どこで、どのように受け取るか、それをどのように表現したらいいか、その舞台を準備しなくてはいけません」
「舞台とは?」
「被写体がもっとも輝いて見える場所と時間のことです」
「なるほど……」
「わかりますか?」
「はあ……、なんとなく……、でも、そうすると、速く撮ることができないんじゃないでしょうか?」
「シャッターチャンスという言葉に惑わされているのではないでしょうか。もっとゆっくり撮ればいいのですよ」
「シャッターチャンスには、長い時間と瞬間的な時間の2つがあると考えるといいでしょう」
「瞬間的な時間はわかりますが、長い時間とは?」
「写真は、いうまでもありませんが、その場所にいないと撮れません」
「それはそのとおりです」
「でも、その場所にいればいいというものではなく、被写体のもっともいい時間帯に居合わせなければ、いい写真が撮れません」
「そうですね」
「それもシャッターチャンスだといえませんか」
「あっ、そうか! なるほど」
「さらにいえば、それは予測できるものですね」
「たいていはそうですね」
「予測できれば、準備ができます。それを確実にするために、ロケハンをします」
「そうか! ロケハンにはそういう意味があったんですね」
「ロケハンとは、下調べなのです」
「では、シャッターチャンスはあらかじめ準備できると考えればいいのでしょうか?」
「シャッターチャンスはたいていの場合、準備して、待って得られることが多いのです」
「でも……、そうでないこともありますね……」
「もちろん、瞬間的に得がたい機会が訪れて、それを逃すと二度と撮ることができない写真もあります」
「そんなときはどうすればいいのでしょうか」
「カメラマンはそんな事態を期待しているわけですから、瞬間的なシャッターチャンスが目前に現れたら、即座に対応できるように準備しているのですよ」
「写真とは奥の深いものですね……」
●相模川つづき
f10 1/250秒 ISO 200
6月は若葉の美しい季節だ。若葉にピントを合わせたが、ねらいはボケさせた鮎釣りの釣り人で、季節感を表現しようとした。もっと釣り人がはっきり写っていると思ったが、思いのほかボケていた
作者の撮りたい意図が痛いほど読めますが、絵づくりはできていませんね。前景の緑に工夫がほしかった。残念!
f10 1/250秒 ISO 200
川岸の若竹に朝の光が射してつくる影。鮎釣りの景色撮影の合間のスナップショットだ。春から初夏にかけた季節は、何を撮ってもみずみずしい自然の息吹が感じられる。背景に人家の青い屋根を入れた
モチーフを捉える作者の繊細な感性は、相変わらず健在ですね。竹の幹に描かれた影がデフォルメされておもしろい。背景のボケもよく、意図が明確に表現されました。
モチーフ
構 図
ピント
露 出
表現力
光の選択
シャッターチャンス
f10 1/250秒 ISO 200
これも釣りのスナップショットの1枚で、川岸の風景。ブルーの天幕があざやかで、犬を連れた散歩の人、ボートで鮎を釣る人など、説明過多の写真になってしまった
青いテントと地面に落ちる影たくさんの障害物をさけてモチーフを配置した努力が読み取れます。多くの要素を画面にいれて構成するのはじっくりかまえる覚悟が必要です。この場合は青いテントをテーマに単純な画面づくりに徹したほうがよかったと思います。
f13 1/250秒 ISO 200
急流に竿を垂れる釣り人。朝の光に輝く水面に橙色の竿、竿の映り込みを配置する。背景の暗い川面には、白い衣装の釣り人。流れの明暗の対比に撮影意欲がそそられた
朝の逆光線が、流れる川面の姿を幻想的に演出してくれます。釣り人のオレンジ色の棹が光と戯れているかのようです。背景の暗い描写が主題を強調していますが、画面に占める割合が大きすぎるようです。主題である流れの表情にスペースをとったほうがよかったですね。
f10 1/250秒 ISO 200
釣り用の新造ボートが釣り人を待つ景色。背景には3人が乗る釣り船。これから起こる物語を予感させる写真は、撮っていきたい写真ジャンルのひとつだ。泡立つ流域の白く光る線を画面のどの位置に置くのがいいか、構図に悩んだ写真
光る川面をローアングルで一筋の白い帯として表現し、そこに釣り船がいる。手前の船や岸辺のラインの組み合わせで、遠くの小さな主題へ視線を誘導しています。よく考えられた画面構成です。
f9 1/250秒 ISO 200
相模川の流れを視察するかのように舞うトビ。発見した瞬間のショットで2枚撮れたが、これは意図していた以上にトビの輪郭が光り、羽をひろげた姿が美しく撮れた
猛禽類のトビの飛翔する姿をすばらしいタイミングで捉えています。逆光によるラインライトが迫力を感じさせます。さらに追い写しによる背景のみどりのブレが画面に変化を添えています。シャッターチャンスを生かした立派な作品です。
モチーフ
構 図
ピント
露 出
表現力
光の選択
シャッターチャンス
f14 1/400秒 ISO 200
相模川流域には公園や遊園地がたくさんあって、これは流水をせき止めた水遊び用のプール。朝早くでは水遊びする子供もいない。河岸の深い木立の映り込みを上下対象に撮った。画面中央右側に釣り人がいるのだが、さすがに小さすぎて見えない
森と川の静かな佇まいが気持ちよい。生命の根源をおもわせる深い味わいがあります。画面としてややインパクトに欠けるので、時間が許せば少し頑張って風による水面の変化する表情を捉えられると、さらによい作品になったでしょう。