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写真で綴る自分史 もういちどカメラ 藤森元之

押しかけ写真塾 藤森元之 プロフィール
実践編第2ステージ 写真を続ける力とは!? 第3回 被写体を見る眼
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撮った写真に予想外のものや目障りなものが写っていて、舌打ちをした経験は誰でも持っています。このような初歩的なミスを防ぐ方法として、シャッターを押す前に被写体をよく見る、またファインダーの中でもしっかり確認するといった手順は、これまで折にふれて学習してきました。

今回のテーマ「被写体を見る眼」はこのような絵づくりの基本を一歩進めて、「被写体とどう関わるか」を視点に考えてみたいと思います。

目の前の景色と向き合って「あっ、今このシーンを写真に撮りたい」と衝動に駆られるとき、そこには、被写体から受ける感動とか、対象への好奇心などが動機になっています。その感動や好奇心がどのようなものか、どこからくるのか、さだかではないにしても、その時点で撮る人と被写体との関わりが生まれるといってよいでしょう。

被写体を眺め、イマジネーションを膨らませながら、カメラの心地よいシャッター音に酔って時を忘れるなんて、なんたる至福でしょうか。

どんな写真にもなにかしら物語は埋め込まれているのだと思います。そのような被写体との関わりについて、私の個人的な体験ですが、その中に糸口を見出せると思うので、具体的に書いてみます。(1997年6月の日記から)


●北斎ならどんな絵で表現するのか

私は、自宅から2キロほどにある自然公園を散歩コースにして時々訪れますが、その日は雨でした。さすが梅雨時とあって人の気配もなく、落ち着いた風情が漂っていました。池の前で佇むと、静かな水面を打つ雨が無数の波紋を描き出しています。輪は互いにぶつかり合い、広がりながら変化し、複雑なパターンを作り出す。消える間もなく、次々と落ちてくる雨によって、それはさらに複雑さを増幅させているようです。神経を集中して眺めてみても、そのとらえどころのない姿を見定めることはできません。もどかしさと同時に、その不思議な現象にすっかり引きずり込まれてしまいました。

この時、私の脳裏には北斎の版画が浮かんでいたのです。「北斎ならこの現象を、この情景をどんな絵で表現するのかな」と彼の版画を思い出しつつシャッターを押し続けました。

ところが、できた写真はまるで私の意図を拒絶したかのように退屈なもので、意気消沈してしまいました。当時はまだ、デジタルカメラは普及していないので撮影現場でチェックすることはできませんでしたが、これまでの経験則のデータをもとに、撮影した写真が予測と大きくかけ離れたものになったことはショッキングな出来事でした。

作例1
f5.6 1/125秒 富士クロームRDP100

後の本番に向けてテスト撮影したもの。正確なデータはまだできない。
作例2
f2.8 1/250秒 ISO 100

これも、最近デジタルカメラを使ってテスト撮影したもの。イメージに近いデータがとれた。


●肉眼で見た印象を写真に置き換えるむずかしさ

かつて遭遇した不思議な現象を意図どおりに撮るというモチーフに挑戦してみようと思いつつ10年以上が過ぎ、いまだ果たせずにいます。それは二度と同じ状況にめぐり合わないことと、似た状況に出会ってももはやあの感動はないからです。第一印象を大切にして、しっかり作品に定着させないといけない、わが身の不甲斐なさを悔いた一日でありました。

肉眼で見た印象を写真に置き換えるむずかしさは誰もが経験することですが、その前提の一つは、人の肉眼が広い曖昧な視野を持ちながら、その中央部に認識度の高い領域を併せ持っているためです。周囲の環境を分析し、その関係性のなかでものを見るため、単純にファインダーで切りとられた写真の印象と大きな食い違いが生じるのだと言われています。そのほかにも、ソフトやハードに関するさまざまな要素が介在するでしょう。

写真塾は今後、このような問題に取り組んでいきたいと思います。

●古屋光雄先生(大先生)のプロフィール:
写真家。1934年生まれ、山梨県出身。大学卒業後、会社勤務を経てフリーランス・フォトグラファーとなる。1976年、東京六本木に株式会社光スタジオを設立、コマーシャルフォト、エディトリアルフォトを中心に雑誌、企業の出版物、自治体の刊行物などで幅広く活動
●使用機材 :
生徒:CANON EOS 40D + EF-S17-55mm F2.8 IS USM + EF-S55-250mm F3.5-5.6 IS USM
大先生:CANON EOS 1N+EF28-70mmF2.8L,Konica Digital KD-500Z
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