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写真で綴る自分史 もういちどカメラ 藤森元之

押しかけ写真塾 藤森元之 プロフィール
挑戦編 写真の心にチャレンジする!第5回 背景の選択
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●「たら、れば」の煩悩の中で

写真を撮っていて時には「絵描きさんはいいなぁ」と思うことがあります。仮に写実であろうとも描きたくないものは描かなくてすむし、1枚の中にフィクションとノンフィクションの世界を描くこともできるからです。

葛飾北斎の風景画なんか眺めてみると「私はボケなんていう姑息な手法は使わんぞ!」とばかりに隅ずみまでシャープに描写しています。あの「モナリザ」だって背景はしっかり描かれています。それでも絵の主題はボケることはないのです。

しかし写真はそうはいきません。カメラを構えてシャッターを押せば、好き嫌いに関係なく画角に入ってくるものはすべて描写されます。ですから、「こんなものが入らなければ」とか「空にいい雲があったら」とか「たら、れば」の煩悩の中で四苦八苦するわけです。 

今回のテーマ「背景の選択とその描写」はこの煩悩をいかにして断つか、その手法を会話の中で具体的にとりあげました。

また、このテーマの大切な要素である画角や被写界深度などレンズの性能を理解し、その効果を作画にうまく使うことが上達の鍵となるので、望遠レンズと広角レンズについてもう一度学習してみましょう。


●レンズの特性を知る
画角が狭い、被写体の縦横奥行きすべてについて狭い範囲に絞られる―→背景の処理がやさしい
遠近感がなく、圧縮効果が高い
被写界深度が浅く、ピントの合う範囲が狭い
画面構成上、省略したりボカシの効果を使って写したい物だけを際立たせることができる
花、人物ポートレート、スポーツ写真などに向いている
手持ちの時は手ブレしやすいので、しっかり構え、手ブレ防止機能を使う
作例1
f5.6 1/250秒 ISO 400 70-200mm F2.8L 三脚使用
講評
相模川の上空を舞う鯉のぼり。力強い泳ぎを200mm望遠により圧縮効果をねらって捉えた。背景には対岸日陰の林を選択して色彩効果も表現した。
 
画角が広いので、画面によけいなものが写りこむ―→背景の処理がむずかしい
パースペクティブ(遠近感)が強調される。歪む
被写界深度が深くパンフォーカスになりやすいので、写したいものとそうでないものを画面上に同じ価値観として写しだす結果、説明的な写真になりやすい
風景写真、街や人物のスナップ写真などに向いている
作例2
f16 1/400秒 ISO 400 24-70mm F2.8L USM
講評
24mm広角のパースペクティブを活かし、花の群れの中にカメラを据えて臨場感を表現した。説明的な表現をさけるためにあえてバランスの不安定な構図を選択した。
●作品に表れる作者と被写体、作者と見る者との関係性

望遠レンズは、それさえ見えれば他はどうでもよいといったニュアンスで主題を単独で強く見せることができますが、被写体との距離が大きくなるほど作者との関係性が希薄になり、見る人にとって疎外感を感じます。極端ですが天体望遠鏡で撮影した月の写真が作家の作品として位置づけられないのが一例です。

広角レンズは、取り込まれる情報が多いために画面の中に物語性が生まれます。これが主題のイメージを膨らませるのか阻害するのか、作品の良し悪しを決めるポイントになりそうです。また、被写体に近づくことで画面が歪んだり遠近感が強調され、作者との関係性が一体感となって強く表現されるのです。

私は後者の物語性が好みなので28mmレンズを多用していますが、説明的な画面構成を避けるため、アングルやポジションにはとくに注意をしています。


作例3
f8 1/30秒 ISO 800 24-70mm F2.8L USM
講評
2008年元日。六本木の夜明けを写す。六本木にオフィスを構えて45年以上。私にとってこの地とのかかわりは意識のうえで大切な宝物になっています。大晦日の人々のざわめきや、温もりが残る夜明けの一瞬を表現してみました。

●古屋光雄先生(大先生)のプロフィール:
写真家。1934年生まれ、山梨県出身。大学卒業後、会社勤務を経てフリーランス フォトグラファーとなる。1976年、東京六本木に株式会社光スタジオを設立、コマーシャルフォト、エディトリアルフォトを中心に新誌社の出版物、企業 のPR誌、自治体の刊行物などで幅広く活動
●使用機材 :
生徒:CANON EOS 40D + EF-S17-55mm F2.8 IS USM + EF-S55-250mm F3.5-5.6 IS USM
大先生:CANON EOS 5D + EF24-70mm F2.8L USM + EF70-200mm F2.8L USM
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