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写真で綴る自分史 もういちどカメラ 藤森元之

押しかけ写真塾 藤森元之 プロフィール
挑戦編 写真の心にチャレンジする!第5回 背景の選択
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  「最近気づいたのですが、先生は、背景の整理とか前景の処理とか、よくおっしゃいますね。どんなことか、説明してくださいませんか」
「画面をつくるという前提で必要な考え方です。ようやく、それに気づいてくれましたか!」
「何気なく主題をねらって撮っていますが、画面には背景や前景が写っています。意識していなくても画面をつくっていたんですね。それに気がつきました」
「スナップショットや旅行写真などを撮るときは、主題は人物と背景や前景のふたつです。あの山を入れて撮るとか、あの建物を入れて撮るとか、とにかく画面に全体を写しこもうと努力しています」
「そうそう、みんな苦労していますね」
「そういった写真を撮るときは、前景から人物、背景までピントが合うパンフォーカスにセットして、説明的な写真が撮れればいいのです」
「普通に観光写真を撮っている人は、そこまでは考えていませんよ!」
「わざわざセットしなくても、コンパクトカメラは広角レンズが標準ですから被写界深度が深く、パンフォーカスで撮れるのです」
「コンパクトカメラでボケ味のいい写真が撮れないのは、そういう理由があったからですね」
「そのとおり。一眼レフを使い始めて、いい写真が撮れなくなったと嘆いている人は、レンズの特性を理解していないからです」
「私もそうでした。なかなかいい写真がとれないのはどうしてだろうかと悩みました……」
「今でも、パンフォーカスで、前から後ろまでピントの合っている写真を撮りたいと思いますか?」
「パンフォーカスの写真は撮ってみたいのですが、観光写真とは撮る意味が違いますね」
「写真を始める前に撮っていた“人物と建物の組み合わせ”の写真からは脱皮しましょうね」
「脱皮ですか?」
「ワンランク上を目指して、主題を表現する写真を撮ろうとすれば、意図を明確にするために妨げになるもの、目障りなもの、目立つものを避けなくてはいけません」
「ジャマものをどかせ! ですね」
「そう。ファインダーのすみずみまでよく確認することです」
「一応、すみまで見ていますよ!」
「どこまで写るか、構図にどこまで入れるかは、たいてい見ていますが、主題と枠は見ていても、その中側は以外に見ていないものです」
「ゴミや枯れ枝なんかが写っていて、気づかなかったことがよくありますからね」
「主題を引き立てるためならそれも必要ですが、“写っていたか、残念”という写真はいけません」
「注意深く、すみずみまで確認するわけですね」
  「確認したら、つぎはどう処理するか、です」
「ボカすだけじゃいけないのですか?」
「背景の処理には2つの方法があります。ひとつは、被写体を背景のよい場所へ移動させます。人物ポートレートなどの場合がこれですね」
「もうひとつは?」
「自分が前後左右、上下などに動いて撮影場所を決めます。ほとんどのケースがこれです」
「前回やったアングルやポジションですね」
「そう。場所が決まったら、つぎのステップです。どんなレンズを選択し、どう描写するかがポイントになります」
「どう描写すればいいのか、それがわからないんですよ」
「明確に描写するか、省略するか、ボカすか。基本的な手法は3つです」
「3つはわかりました」
「次のステップは、引き算と足し算が基本になります」
「引き算と足し算とは、どういう考え方でしょうか?」
「引き算は、目ざわりな物は入れない、背景をボカす、色や光など抽象的な背景を選んで対比させるなどです。ただし極端に省略するのは写真の味をなくしてしまうので注意しましょう」
「足し算とは?」
「場所や状況を伝えるために必要な要素を入れ、ある程度のボケを使います」
「なるほど!」
「どちらも主題を強調するための手法ですが、足し算がセンスのよい衣装で勝負なら、引き算は衣を捨てて肉体美で勝負といったところでしょうかねえ」
「装飾美と肉体美か、どちらも魅力的だなあ……」
「どんな写真を撮りたいかによっても、足し算と引き算の考え方の応用方法を変えましょう」
「わかった気がします!」
「それじゃ、写真を撮りに行きましょうか!」
●千倉のお花畑は花摘み客がいっぱい

 春景色と、のどかなお花畑の印象を明るめに表現するため、基本的に露出補正を+1にセットして撮ることにした。

f8 1/500秒 ISO 200
コメント
房総の菜の花は黄色の鮮やかさが際立っている。主役は菜の花で、前景のキンセンカ、背景の水色の金魚草をボカす
講評
主役の菜の花は見ごろで美しい。光線や露出の選択も適正で遠い主役をうまく表現できています。しかし画面の切り取り方はやや中途半端で退屈。菜の花の鮮やかな黄色を印象的に強調する背景の描写も入れたいところですね。
 
f5 1/2000秒 ISO 200 露出補正-0.67
コメント
お花畑の風景。鳥除け(?)の扇風機を主役に表現した。高速で回る風車を止めるためシャッター速度を速くし、春霞に煙る背景がボケすぎない程度に確認して撮る
講評
着眼、着想の光る作品です。小さな主役を背景が見事に盛り上げています。ただし視点は平凡、ローアングルで主役を強調する絵作りに挑戦してください。
f8 1/250秒 ISO 200 露出補正+1.67
コメント
千倉の花摘み園で金魚草を逆光で撮る。お花畑の区切りの青いネットをボカすことで、ピンクの花をブルーの背景が縁取る絵づくりができた
講評
明るめの露出補正で画面全体がパステル調の春らしい色で描かれています。色彩効果抜群、光の選択も良いですが、やや平凡なカメラ視点です。寄りで花そのものの魅力を見せるとか、新鮮なアングル、あるいは昆虫などを辛抱強く待つ努力とか、何かもう一つプラスαの魅力を加えると魅力ある作品になったでしょう。
 
f7.1 1/640秒 ISO 200
コメント
ポピーと菜の花。手前の赤いポピーをもう少しボカして、主役に選んだ中景のポピー群を浮かび上がらせる工夫をしたかったが、うまくいかなかった
講評
お花畑の中を次から次へ飛び交うミツバチのような楽しい視線を感じます(作者は楽しんでなんかいられないで撮影に必死なんだろうね、きっと)。
絞り値を開けて前後のボケ味を効果的に使いたかったですね。画面全体の色のバランスはうまくいっています。左下の枯れた花柄はじゃま。折って取り除いてもよかったですね。
f4.5 1/1250秒 ISO 200 露出補正+1.67
コメント
金魚草のクローズアップ。白はカメラにとってきびしい色で、表現がむずかしいそうだが、斜光と背景の紫をボカすことでうまく撮れた
講評
「うまく撮れた」とコメントしていますがこの作品にある問題点を考えて見ます。作者は花のどこに、何に感動してアップで撮ったのでしょうか、その意図が明確に伝わってきません。白い花そのものか、花を照らす光の美しさなのか?
そしてもう一つは背景の処理です。最後方の赤いバック処理はうまくいっていますが主役とその後ろの花との重なり、画面右上にちょっと入り込んだ白い花、下部の葉と後ろの花の重なりなど、視線の集中を妨げる要素が多いのです。
ファインダーで注意深くチェックしてアングルやポジションを変えてみる努力が肝要です。ファインダーを覗く前に見極めることもいろいろあります。ステップアップのためにがんばってください。
 
f4.5 1/800秒 ISO 200 露出補正+1
コメント
色とりどりの金魚草が咲き乱れるお花畑の全景。絞り開放で背景処理が比較的うまくいった。絵画のような景色が撮れたのではないかと思う
講評
画面構成としては、主役としてピントをつけた一番手前の花をもっと見せたほうがバランスがよいと思います。画面全体から春の陽射しに写しだされたのどかな農村の佇まいが感じられて心が和みます。被写体の状況をよく見て構成した作品です。
 
f8 1/250秒 ISO 200
コメント
キンセンカを55−250mmのレンズでクローズアップ。花弁のやわらかな質感と硬質な花芯をシャープに撮ってみた
講評
花の生命力と造形美をダイナミックに表現した立派な作品です。手前のボケによって視線は自然に花芯へ誘導され、作者の意図が明確に伝わります。露出の選択、画面構成、レンズワークが適切でした
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