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写真で綴る自分史 もういちどカメラ 藤森元之

押しかけ写真塾 藤森元之 プロフィール
実践編 写真をさらに楽しく続ける! 第4回 紅葉を撮るワザ〜鎌倉を撮る
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  何をどう撮るか。写真を始めてすこしばかりわかってきたころ、誰もが直面する課題だという。きれいな景色を撮るだけでは詰めが甘くなるのだ。
 

前回の写真塾では、モチーフの足し算と引き算で構図を決めていく考え方を学んだ。だが、モチーフを選ぶ過程をもっと深く考えたほうがいいのではないかと思う。

最初のうちは、何かを見て、「あ、きれいだ、パシャ!」と撮っていた。そのうちに、「きれいだけでいいの?」という疑問が出てきた。きれいだと思えるのはなぜかと、突き詰めて考え始めたのだ。

「どうしてきれいだと思うのか?」と自問してみると、そこにはあまり深い意味がないことが多かった。たとえば、ある場所の風景を見てきれいだと思っても、なにが? どれが? どうして? と追求していくと、それは感覚的な情緒だけで、ほかに何もないことが多かった。

写真を撮り続けているうちに、「なにが? どれが? どうして?」という問いに答がはっきり出せることが増えてきたように思う。それは、「その場所やモノと時間や空間を共有していることが気持ちいい」であったり、「過去に気持ちよかった記憶を類似物として再現したい」であったり、「あるべき姿、あってほしい姿の表現」であることが多い。

単純だが、自己流の美意識が確立し始めて、自分なりの「美しいもの」、「美しいと感じる基準」がはっきりしてきたと思えるようになった。

「きれい」と「美しい」の間にある写真表現の感性をもっと鍛えていかなくてはいけない。そうすることで、自分にとって何が大切なのかという視覚を通じた自己確認ができるのかもしれない。


今回は「秋を撮るワザ」ということで、鎌倉を撮影地に選んだが、時期がやや早すぎて紅葉は半ばといったところ。予習、復習として井の頭公園、小金井公園も追加した。

今年の秋はあざやかな色を見せずに終わりそうだ。紅葉は寒暖の差が大きいほど美しくなるという。暑い夏からつづいた初秋の暖かさが災いしているのだろう。

しかし、色が浅くても黄色や紅に木々が染まる四季の移ろいは、何ものにも替えがたい日本の風情だ。

もう40年以上も昔のことだが、もの思いに耽る高校生だったころ、学校の近くの神社に歌碑があって、そこにアララギ派の歌人川崎杜外の歌が記されていたことを思い出した。


 野の草の色づき枯るゝさまみれば
  土に朽つるものはみな静かなり  

  「先生、最近は目が写真の構図を意識するようになったようです」
「ほう!」
「世間がフレームでくくったように四角に見えるんですよ」
「相当、写真にのめりこんでいますね。でも、それはいい傾向ですよ」
「それなのに、ショット数が以前より減ってきているんですが、なぜでしょうか?」
「モノをよく見るようになったからです」
「よく見ると、撮らなくなる?」
「そうです。最初のうちはシャッターを切ることが楽しくて、好奇心から何でも撮ってしまいます」
「そうでした……」
「そのうちに、これは写真になるか? と考え始めます。ショット数が減るのはここからです」
「そうでした……」
「その次の段階では、画面いっぱいにモノを入れて、盛りだくさんな写真を撮ります」
「そうでした。足し算ですね……」
「次に、整理することに気づきます」
「そうでした。引き算ですね……」
「はい。そして、ようやく自分が本当に撮りたいものは何か、というところにきます」
「そこで迷っているんですよ、じつは……」
「ここからが写真のおもしろいところです。着実に進歩しています。しばらく迷ってください」
「でも、迷いたくはないんですけれど……」
「自分の写真が撮れるのはここからですよ。がんばって!」
「はい!」

 

紅葉の撮り方がわからないので、疑問点をはっきりさせるため、井の頭公園へ出向き、自習をする。紅葉といっても、赤も黄色もあるし、葉だけではなく、木も空も撮らなくてはいけないし、それだけでは観光写真になってしまいそうだし、人を入れるとむずかしくなる。

あれこれ考えても仕方がないので、とりあえず紅葉を撮ったよくある風景を真似て撮ってみることにした。もちろん、何を美しいと感じたかをはっきりさせながら撮った。



f9.5 1/125秒
コメント
平日でもにぎわう井の頭公園の紅葉。何がねらいかはっきりしない写真だ。露出はよさそうだがピントが甘い。たぶん手ブレだ
講評
小春日和の公園を訪れる大勢の人々の賑わいの声が聞こえる。画面構成は、青空、紅葉、自転車と盛りだくさんで、狙いがやや散漫。自転車を主役にする構図にしたら意図が明解になったと思う。

ff5.6  1/125秒
コメント
日が傾いて神社の森を照らし、色づいた木が輝く。噴水とおだやかな水面を泳ぐ鴨の対比をねらった
講評
背景の紅葉と広く取り込んだ水面の静かな画面構成。噴水と泳ぐ鴨が動きを添えてよかった。平凡だが心が癒される作品。


f2.8 1/30秒
コメント
公園をひとり散策する女性を撮る。森の秋色と服装が絶妙なバランスで、しばらく後を追って画角を決めた。ピントが甘いのは手ブレか、残念だ
講評
このように自分のイメージを追及する姿勢が立派です。ビシッと決められなかった作者の悔しさが理解できます。見ているほうも残念です。失敗が上達への糧なのです。頑張れ!

f11 1/350秒
コメント
公園の朝は猫が多く見られるのどかな風景。日向ぼっこの猫が置物のようだった。こちらを向かせたかったが無視された
講評
小春日和の陽射しの中でまどろんでいるのに起こさないでよ! と言いたげな猫。いい写真だね。こっち向いたらよくある平凡な作品になっちゃいそう。

f13 1/125秒
コメント
昼前なので出番のないボートの繋留場。整然と並んだ色あいが美しく、背後の紅葉と空が明るい雰囲気だった。画角に苦心した
講評
縦画面で奥行き感を出した構図が洒落ている。自然の色と人工的な色のコントラストが面白い。こんないい日和に乗らないボートが並んでいるのは平日なのか。
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