![]() |
| 斜め横から見た「TWENTY 2.12」。非常にガッチリしたキャビネットだ |
ホーン型スピーカーの難しさは、ホーン部の高域再現性と、中低域のバランスをとることにある。まず、ホーンドライバーで低い帯域を出すことは非常に難しいので、多くの場合は数kHz以上をホーンに、それ以下の周波数帯域はコーン型のウーファーやスコーカーに受けもたせるというのが一般的だ。 「TWENTY 2.12」のクロスオーバー周波数を見ると、「500/800Hz - 6/12dB oct」とある。これは2つのウーファーが、1つは500Hz以下の帯域、もう1つのウーファーが800Hz以下で働き、500Hzのポイントでオクターブ6dBのカーブでクロスしていることを示し、ホーンドライバーはウーファーとは800Hzのポイントで、オクターブ12dBのカーブでクロスしていることを示している。
つまり、ホーン+コンプレッションドライバーが受けもつのは、800Hz以上の周波数帯域ということになる。システム全体の再生周波数帯域は「30Hz〜21kHz」とあるから、ホーンドライバーの帯域は「800Hz〜21kHz」ということになる。このクロスオーバー周波数の「800Hz」は、見た目のホーンの深さ、大きさからすると、かなり高い技術がなければ理想的なバランスが得られない。
![]() |
| 背面から見るとスリムだ |
JBLの「S4600」の写真をもう一度ご覧いただきたいのだが、これは3ウェイでホーンは2個ある。大きいほうのホーンは800Hzでウーファーとつながり、高い帯域を受けもつ小さいホーンドライバーとは8kHzでつながれている。これでおわかりのように、800Hzから上の帯域をホーン型でうまく出そうとすると、JBLのように、大型と小型2つのホーンを使わなければならなくなるのが普通なのだ。
「TWENTY 2.12」が、それを1個のホーンで達成しているのは、このホーンの性能が大変優れたものであることを示している。早くからホーンの音に魅せられたジュゼッペ・ジンガリは、ある程度の低い帯域までスムーズに再生できて、しかも放射特性のいいホーンを夢見たのであろう。最初の製品にはバイラジアルホーンを使ったのだが、それはおそらく彼の本意ではなかったのだ。製品の評価はかなり高かったのだが、それに満足することなく研究を続け、やっと「Omniray
Technology」にたどりついて完成したのが、この木製円形ホーンであったというわけだ。
この800Hzでウーファーとクロスさせる手法は、通常の数kHz〜8kHzでクロスさせるよりも、高音域でホーン特有のキャラクターがつきにくいという点でも有利である。目を閉じてじっくり聴いていると、「TWENTY 2.12」の高音域再生の質感はホーン型であることを忘れるぐらいナチュラルで滑らかだ。その秘密がここにあると思われる。
![]() |
| 底部の木製ベースは、支柱によって本体と空間をもって設置されている |
そして中低音域とのバランスだが、肝心のウーファーの振動板素材は、セルロース・コーンに防湿加工を施したもの。これは、ペーパーコーンという、ウーファーの伝統的理想素材に近代的工夫を加えて継承しているということになるだろう。このウーファーでホーンを上下から挟み、少し再生帯域をずらして動作させる、スタガードドライブという工夫も、量感たっぷりで充実した響きでありながら鈍重にならない、という「TWENTY 2.12」の再現性に大きく貢献している。この強力なウーファーシステムが、木製円形ホーン+コンプレッションドライバーによる、伸びのよい中高音域を下で支えて、豊かな再現性に大きく貢献しているのである。
「TWENTY 2.12」には、まだまだ多くの指摘されるべき技術と工夫がある。内部配線材の選択、ネットワーク回路の部品の選別、プリント基板の素材…。しかし、ここでどうしてももう1点付け加えておかなければならないのは、キャビネットだ。
材質は剛性の高いMDF。ここにも木へのこだわりが貫かれている。“木”への愛着について、ジュゼッペ・ジンガリはこんなふうにいっている。
「Zingaliのスピーカーをご覧になると、手作業で造られた木製キャビネット、そして特別な木製ホーンは、どこか楽器に近い、と思われるに違いありません。多くの伝統的な楽器、ピアノやヴァイオリン、リュートは木で出来ていて、それが素晴らしい音の鍵になっています。このことは、これらの楽器が作られたときからずっと変わっていません。どんなに技術が進んでも、木以外のものでピアノの枠が作られるなんて考えられません。Zingaliのスピーカーもまた、この素晴らしい“木”という素材の恩恵を受けているのです」
![]() |
| 「見事な鳴りっぷりです」と、ご機嫌のレフィーノ&アネーロの金子さん |
非常に堅固な重量級キャビネットは、内部構造にも十分な対策が行なわれていて、美しい響きをもたらす工夫がぬかりなく払われている。そして、その慎重さと再現性へのこだわりは、キャビネット下部に設置された無垢材のベースにもうかがえる。支柱で本体とベースの間にわずかの空間をもたせることによって、置かれる場所の悪影響を最小限に抑えているのだ。そしてこの木製ベースが、涙滴形状と相まって美しい響きに大きな働きをしていることは、いうまでもない。
「TWENTY 2.12」は、音楽を愛し、いい音で音楽を聴きたい、という音楽・オーディオファンと同じ気持ちからスタートして、ジュゼッペ・ジンガリが作り上げた、スピーカーの歴史に新たな1ページを開く傑作機、といっていいだろう。
![]() |
| 「Twenty」シリーズの4モデル左から「2.06」「2.08」「1.12」「2.12」 |
なお、現在Zingaliのスピーカーには、「Client Name」と「Twenty」「Italy」「Colosseum」という4つのシリーズがある。「TWENTY 2.12」はこの中の「Twenty」シリーズ4モデル中の最上位にあるモデルだ。この下に「TWENTY 1.12」というモデルがあり、これはウーファーが1個の2ウェイ機で、ユニットのサイズは同じ。「TWENTY 2.08」はウーファーの口径が210ミリ、「TWENTY 2.06」はウーファー口径が170ミリのバーチカルツイン機である。





