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| 「TWENTY 2.12」最大の特徴である円形ホーン |
「TWENTY 2.12」を少し詳しく見てみよう。なかなかの巨体である。横幅は36センチとまあまあだが、奥行きが55センチ、そして高さが150センチ。1台の重量が70キロ。ほぼ小柄な男性1人といった感じだが、身長の割りに体重が重く、しかもずん胴の固太りだからメタボと判定されるかもしれない!!
しかし、この胴体(キャビネット)は、上から見ると水滴を落とした形で、前面から背面にかけてしだいに細くなる。少し気取ったいい方をすると「涙滴型」。ソナス・ファベールの「アマティ」や「ガルネリ」と同じような形で、あれは楽器のリュートの胴体から発想され「リュート・ボディ」とも呼ばれている。同じイタリアの新進メーカーが、同じような時期に似た形のキャビネットを発想したということはなかなか興味深い。
この形はユニットからの音圧がキャビネット内でどのような動きをし、外部に放射される音圧にどんな影響を与えるかについての、精密な計算と試聴の繰り返しによって出来上がったものである。もちろんキャビネットの形に絶対的なものはなく、この形はあくまでもジンガリやソナス・ファベールの考える音の理想から生まれたものだ。
前面バッフルに取りつけられた3つのユニットの配置は「Vertical Twin(バーチカル・ツイン)=仮想同軸2ウェイ」という形式である。タンノイのユニットのように、そのものずばり同じ軸上に2つのユニットを配置するのではなく、トゥイーターを2つのウーファーで挟み、聴感上は同軸2ウェイと同じ効果が得られるという手法だ。
そして中央の高域ユニットは、伝統的なコンプレッション・ドライバー+ホーンとなっている。ドライバーの口径は44ミリ、振動板素材はチタン、マグネットはネオジウムという構成だから、ここにはかなり近代的な素材が投入されている。しかし構造は、オーソドックスなドライバーで、特に新奇な工夫は見当たらない。もっとも大きな特徴は、ホーンにある。
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| ジュゼッペ・ジンガリが研究した「バイラジアルホーン」の例。これは4月10日の本欄で紹介したJBLの「S4600」のバイラジアルホーン。中高音域ホーンの上部に超高音域ホーンがつけられている |
ジュゼッペ・ジンガリは最初からホーンがお気に入りだったようで、実験的な作品もホーン型であったし、最初の製品「8800 スタジオモニター」は前ページで紹介したように、オリジナルの木製バイラジアルホーンが使われた。
バイラジアルホーンといえば、JBLお得意のホーンだ。2008年4月10日の本欄で紹介した「S4600」にも採用されている。ジュゼッペ・ジンガリは先行するJBLのバイラジアルホーンを徹底的に研究したと思われる。そしてそこに精密な計算をともなう独創的なひらめきを加え、数え切れないほどの試行錯誤を重ねて、木製のバイラジアルホーンを作り上げたのだ。それはかなり好評だったようだが、彼はそれに満足することなく、さらに研究を重ね、ついに今回写真でご覧のとおりの、円形の木製ホーンを完成するのである。
この円形ホーンは、「Omniray Technology」という、Zingaliの特許技術によって作られている。イエローポプラの無垢材を円形に切削加工したもので、「Omniray GZ"」と呼ばれている。この木製ホーンによって、能率が高く、トランジェント特性に優れ(音のキレがいい)、パワフルで指向特性のよい「コンプレッションドライバー+ホーン」のメリットが最大限に発揮されている。この形式の短所といわれているクリティカルな指向特性に陥ることなく、また不要なキャラクターが乗ることもなく、広い周波数帯域にわたって滑らかで豊かな再現性を獲得することができたのでる。
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| ホーンの開口部は、ウーファーの口径とほぼ同じサイズに設計されている |
ホーンの詳細については、特許のため公表されていないが、深いスロートと、浅いホーンの組み合わせによって、360度の円形放射パターンを実現し、拡散角度は140度。800Hz〜20kHzの広い周波数帯域で有効に動作すると説明されている。通常、低い帯域を再生するには大型の長いホーンが必要になるが、写真で見られるとおり、ホーンの開口部(終端外周部)はウーファーとほぼ同じサイズで、深さは13センチである。これで800Hz以上の中高域帯域を受けもつのだから、そこにはかなり複雑な工夫が凝らされているはずである。
どうやら秘密の大半は、ホーンのカーブにあるようだ。滑らかなカーブに見えるが、これは完全な一つの数式で表されるカーブによってできている形ではない。特別な数式で表されるカーブでできたいくつかのパーツによって構成され、個々のパーツが一定の周波数帯域の再現性に適切に対応するようにチューニングされている、というかなり複雑なものだと思われる。なお、素材のイエローポプラは、カナダ南部からアメリカの東部に広く分布する、モクレン科ユリノキ属の落葉広葉樹で、日本のホウノキに近い木だ。



