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| 大きさのあるガラス管がトゥイーターの振動板であることのメリットを十分に発揮している。これはイルミネーションをアンバーにしたもの |
トゥイーターの振動板素材といえば、一般的なスピーカーでは、アルミやチタンの金属化合物か、布と紙の繊維を織り混ぜたものに強度を高める物質を塗布したものなどが多く、しかも大きさは30ミリ以内がほとんどである。ガラスは有機ガラスだと説明されている。窓ガラスや食器のグラスとは成分が違うアクリルグラスで、透明度の高いガラスの1種だ。しかしなぜ、こんな円筒形のガラス管が振動板になるのだろうか。
ここで、コップや茶碗の縁を少し濡らした指でそっと擦ると、キ〜ンという音が出るのを思い出していただきたい。子供のころよく遊びましたよね、そんな音を出して。あの音はキ〜ンとしか書きようがないが、金属的な鋭さはなく、どこか神秘的な響きだった。じつは、あの効果を利用した楽器がある。ヨーロッパではモーツァルト以前の時代からあったもので、「グラスハープ」とか「グラスハーモニカ」と呼ばれている。モーツアルトには「グラスハーモニカのためのアダージョハ長調 K.617a」という有名な曲があるので、聴いたことがある方もいらっしゃるはず。現在でも、複数のコップ状のガラスの器を鍵盤のように並べて演奏する人もいる。余談だが、このグラスハープの音はあまりに神秘的、幻想的で、精神衛生上よろしくないといわれてヨーロッパでは禁止されたこともある。
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| 中央部。支柱のように見えるのが4本の加振器。青く光っている部分に下向きにミッドレンジのコーン型ユニットが取り付けられている。柱部分の空間がバスレフの開口部。ガラス管中央に、下から上にワイヤーが取りつけられている |
ということを知ると、円筒形のガラスがスピーカーの振動板にもなり得ることは納得できる。しかし、あの大きさはグラスハープとはとても同列には考えられない。あれをどのようして振動させ、しかも1本の管からさまざまな周波数と質の違う音を出すのか、これが難しい。グラスハープは1個で1つの音だから分かりやすいのだが。
そこで、登場するのがガラス円筒部の下部にある4本の金属柱である。これがガラスを振動させる「加振器」になっているとソニーは説明している。
<有機ガラス管の下端に配置された複数の専用加振器が独立して駆動し、管全体をすみずみまで振動させます。本システムは、駆動方向に対して音の出る方向が垂直(バーティカル)となるため、アルミ円筒部に内蔵するミッドレンジとウーファーの両スピーカーに対して、管全体はトゥイーターとして働き、360度に音が広がる“サークルサウンドステージ”の効果を実現します。>
とあり、この駆動システムは新しく開発された「Vertical Drive Technology」と呼ぶとある。DSPでトゥイーター用に最適化された信号が、4本の加振器を独立駆動し、それがガラス管を振動させる。それは何となく理解できる。しかし、管の内部には上下にワイヤーが取りつけられている。このワイヤーの下端は加振器のベース状のものに、上端はガラス管のトップの蓋状のものと連結している。ということは、単なる装飾ではない。必ずや、4本の加振器とワイヤーは密接に連携して、ガラス管の振動に関わっているはずである。しかし、入手できた範囲のソニーの資料には、この説明がない。まだ「Sountina」は発売前だから、後日詳細が判明しだいご報告したい。
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| ガラス管下部に取りつけられたワイヤーは、上部でこのような形で固定されている |
ここでもう1点、このガラス管トゥイーターの大きなメリットを紹介したい。これは若干独断的と思われるかもしれないが、長年の経験とカンから間違いないと確信する。それは、この大きさに関わることなのである。
トゥイーターは多くの場合、その目的の必然的な理由から、形は小さいのが普通だ。小さい振動板は高い音域を出すのに有利だし、指向特性をコントロールするためにも都合がいい。しかし、欠点として“硬質な響き”になりやすい。最近はオーディオの記録再生帯域が非常に拡大して、高域は20kHzを大きく超えて、50kHz、100kHzまでなどというのも珍しくない。しかし、そのように高い周波数帯域に伸びれば伸びるほど、金属的な響きや、硬質なイメージはつきまといやすくなる。それをどう避けるのかが、現在のオーディオの大きな技術的課題でもあるのだ。
ところが、面積の大きい振動板を使うと、超高音域まで伸ばしたり、指向特性をよくするのは難しくなるのだが、音質はとても柔らかくて表情が豊かになり聴き心地がいい。何とかこのトゥイーターの特質を両立できないものかと工夫された手法の1つに、いくつかの小さなトゥイーターを複数個使う、というのがあった。たとえば、マッキントッシュの「XRT-22」などというスピーカーはその代表的なものであった。
そのような着眼点から「Sountina」のガラス管をもう一度見ると、これで必要範囲の高域再生が可能なら、1メートル長、9.5センチ直径の管の大きさは、高音域の柔らかな音質再生のために、大きな効果をもつはずだ、と気づく。ソニー自身は、ガラス管再生を、
<管全体をすみずみまで効率よく振動させるため、音の立ち上がりが速く、質感描写にすぐれた澄んだ響きを再生します>
と、説明しているが、その質感描写に優れた、という点に、ガラス管の大きさも大いに寄与しているのだ、と思う。
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| イルミネーションは左からブルー、アンバー、パープルの3種用意されている |
さて、最後に少しだけ音に直接的な関係はないのだが、大切な「Sountina」の特色を挙げておきたい。柔らかな光できれいに発色する、内部に仕込まれたイルミネーションは、ブルー、アンバー、パープルの3種類の色が用意されている。
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| 円筒下部はメタリックシルバーだが、黒い本革のスリーブを装着することもできる |
もう1つ、アンプとウーファーが格納された下部円筒の外装はメタリックシルバーだが、黒い本革製のスリーブが付属していて、これを装着しても、音質への影響はないと説明されている。これも、置かれる部屋にあわせて選択すれば、視覚的な演出に効果がある。なお、将来的にはスリーブのカラーバリエーションも発売される予定だ。
とにかく、さすがソニーだ、と賛辞を送りたい。従来型オーディオ常識の制約から離れて、このような斬新な工夫を追及する姿勢が、オーディオの楽しみを広げることにつながるのだ。





