![]() |
| 全体は非常に美しい円筒形で、とてもスピーカーには見えない。内部にイルミネーションがあり、3色に変えられる。これはブルー |
オーディオ再生が、モノーラルからステレオに変わって、何がいちばん大きく変わったかといえば、3次元空間に響く立体的音場の再生が可能になったことである。モノーラルの再生は、片方の耳で聴くのと同じだから、音の質感は表現できても、音が空間に浮遊している立体的イメージを再現することができない。このステレオ再生の決め手を、音場感とか臨場感という言葉で表現してきたのである。
ステレオ再生の基本中の基本は、2本のスピーカーで再生するということである。人間の耳が2つあるのと同じ理由で、ステレオ録音は2本のマイクを一定の距離に離して録音する。楽器編成が大きい場合は何本ものマイクを使うこともあるが、その場合は複数のマイクからの信号は、最終的には左右2チャンネルの音にミックスダウンされる。
ということで、ステレオ再生の基本原理が、「Sountina」では無視されていることになる。どう見ても1本しかない円筒システムで、本当に立体的な音が再現できるのだろうか、と疑問に思うのが普通だ。
結論的にいえば、「Sountina」は間違いなく1本で立体的な音空間を再現できる。それはなぜなのか。ソニーは次のように説明している。
![]() |
円筒の周り360度に音場が広がる |
プレーヤーからのステレオ信号(左右2チャンネル)を入力すると、この円筒形の下部に収納されている、マルチアンプ構成のデジタルアンプ「S-Master」が、トゥイーター、ミッドレンジ、ウーファーのそれぞれに最適化した信号に変換する。3つのユニットに振り分けられた信号で各ユニットを駆動すると、2本のスピーカーでステレオ再生するのと同じように、豊かで自然な立体的広がりのサウンドが得られ、360度均一な音場感を再現できる、それが「サークルサウンドステージ」だ、というのである。
![]() |
従来型の2本のスピーカーによってできる音場 |
ここで重要な働きをしているのが、デジタルアンプ部の「高精度DSP」なるものである。「DSP」は「デジタル・シグナル・プロセシング」の略。入力された左右2チャンネルの信号を、デジタルでさまざまな処理をして、1本だけの円筒型スピーカーからでも、豊かな臨場感のある立体音を作り出す信号を生成するのだ。作業的には周波数特性や、音質の調整もあるが、いちばん重要な作業は「位相特性」の制御だろう。位相特性を工夫することによって、どこで聴いても自然な臨場感のある立体的音響が作り出されるのである。この分野は世界でもソニーがもっとも得意とするところだ。
モノーラル音声から擬似的にステレオ音声を作り出したり、ビデオ機器で使われるAVアンプに装備されている「ホール」とか「ライブハウス」、あるいは「シアター」「教会」などというサラウンドパターンを考えると分かりやすい。あれらのサラウンド音声も、2チャンネルもしくは5チャンネルだが、「DSP」で作られるのだ。それと似た作業が「Sountina」内部で行なわれている、と考えればいいのだ。しかし、「Sountina」で使われているDSPは、非常にオーディオ的に精度の高いものでり、そのプロセシングもソニーならではの精巧を極めたものだ。
![]() |
| このように部屋の中央においた場合、どこで聴いても同じサウンドイメージを聴くことができる |
そしてもう1点、サービスエリア(最適な音を聴ける場所)が360度に広がっていることにも注目しなくてはいけない。たとえば、2人の人が「Sountina」を挟んで反対側にいるとしよう。この場合、2人が聴く音の立体的イメージは、はたして同じものなのだろうか。通常の2本スピーカー再生だと、前と後ろで聴こえる音は左右反対になる。
たとえば、東京のサントリーホールやベルリンのフィルハーモニーの舞台と客席を思い浮かべていただきたい。オーケストラを通常の客席側、指揮者の背中が向いているほうの席で聴くと、第1ヴァイオリンは左側から聴こる。向こう側の席、指揮者の顔が見える側の客席に座っている人は、第1ヴァイオリンは当然右から聴こえる。これが現実の音響空間で、2本のスピーカーの前後で聴けば同じことが体感できる。
では、「Sountina」の場合は、反対側で聴く人はどんな位置関係の音を聴いているのだろうか? これがじつは、両側の人は同じイメージ(位置関係)の音を聴いているのである。これは、システム全体が円筒形であり、ミッドレンジとウーファーがそれぞれ管の内部で下向きに取り付けられていること、指向性のもっとも強い高音域のトゥイーターの振動板が円筒であることによって可能となっているのである。
これは次の現象と似ている。まず、1枚の肖像写真を思い浮かべていただきたい。そこに映っている人物がカメラのレンズをしっかり見つめたものだと、その写真を左右中央どの位置からみても、その人物は写真を見ている人を見つめているはず。この肖像写真の現象が360度に広がったものを想像していただければ、「Sountina」の立体音響イメージが、360度どの位置で聴いても同じものなのだ、という現象がご理解いただけるだろう。




