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もういちどオーディオ 案内人:船木文宏
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2008.5.29更新

Refino & Anhelo注目のシステム 「試聴スペースの主役をクローズアップ」 101 最上のホールトーンを求める〜Parsifal Ovationの秘策

SPEAKER SYSTEM Verity Audio Parsifal Ovation 価格 2,835,000円(標準仕上 ペア/税込)

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低音部のキャビネットの向きによって音場再現力を変化させる

右側が全ユニットが正面を向いた一般的な組み合わせ。左は中低音キャビネットを後ろ向きにしたもの

「Parsifal Ovation」の最大の特徴のひとつは、2つのキャビネットに分かれているところにある。上のキャビネットは127mm口径のコーン型スコーカーと25mm口径のソフト・ドーム型トゥイーターによる、2ウェイ・バスレフ型の小型スピーカーである。バスレフ開口部は背面につけられている。これは1ページで紹介したように、独立したスピーカーとしても、高性能を発揮する。

そして、下部の中低域キャビネットは200mmコーン型1個のユニットがついたバスレフ型スピーカーで、バスレフ開口部はユニットと同じ面の下部につけられている。再生帯域はハイパス・フィルターで150Hz以下となっている。

おもしろい工夫がされているのは、この下部キャビネットが、後ろ向きにも接続できることである。写真を参考にしていただきたいが、上と下のキャビネットを、通常スピーカースタイルのように、すべてのユニットを前向きにして接続する方法と、下のキャビネットを後ろに向けて、ということはユニット面が後方に向く形で接続することもできるのである。しかし、この工夫は一体どんな効果を狙ったものなのだろうか?


低音キャビネットを後ろ向きにしたものを
正面と再度からみたところ

これは簡単にいうとこうだ。中低音域のキャビネットの向きを、通常と逆にすることによって、音場の展開と、中高音域部とのエネルギーおよび音質的なバランスを変化させることができるのである。この理由は、本欄でもしばしば言及していることだが、オーディオ再生の最終的品質は、スピーカーから出る音と、システムが置かれた部屋の音響条件とが組み合わされたものだからなのである。

部屋の残響成分が足りなければ、解像度は上がるが響きの足りない痩せた音になる。逆に残響が多すぎると、風呂場の音のように楽音の輪郭線があいまいになって、締りのない表現になってしまう。部屋の音響条件を整えて、こういう欠点を解消しなければ、どんなに機器が優秀でも、いい音にはならない。それが、オーディオの基本中の基本なのである。

部屋の音響条件を整えるのは、その部屋の固有の性質を判断して、主として吸音、反射、床の強度などを調整することによって行なう。しかし、いくら工夫しても今ひとつ物足りないということが、ままあるものだ。そんなときに、スピーカーの向きを少し変えてみると、案外スムーズに音がまとまることがある。

中低音域キャビネットの向きを変えるというのは、このようなスピーカーの向きの変化と少し似ているが、もっと変化量が大きく、音の広がり方にも変化が生じる。部屋の中での音の伝わり方は、周波数帯域によって伝播特性が異なるという音波の特質から、非常に複雑なのである。さらに一般的な家屋の部屋では、左右、前後の材質が板壁であったり、コンクリートであったり、あるいはガラスというように性質が異なっているのが普通だから、反射波の伝達時間も複雑にずれて、位相が混乱し、どことなくまとまりのない音になりやすい。そんなときに、中低音の方向を変えるのは、意外に効果がある方法なのである。


上下のキャビネットはこのような専用ケーブルで接続する

こうした試みは、じつはVerity Audioの独創というわけではない。たとえばイギリスB&Wのマトリックスというスピーカーシステムは、中高音域ユニットの向きを変えることができる。ということは、上を逆向きにして全体に向きをかえれば、「Parsifal Ovation」と同じことができる。またフランス、アンサンブルのスピーカーには、向きは変えられないが、中低音のユニットが普通と90度違って、内側あるいは外向きにすることができた。あるいは、1チャンネルが2本で構成されている、かつてのアメリカ、インフィニティの「IRSベータ」のようなシステムなら、中低音と中高音をいかような方向にも設定できる。

Verity Audioの手法は、それほど複雑大掛かりにせず、中低音キャビネットを180度変えることによって、全体の再現性を変化させてみようというものである。例外は何にもつきものだが、中低音を後ろ向きにした場合のほうが、一般的には残響成分が増えて、大き目のホールで聴くような響きが作りやすい。通常どおり前向きにすると、全帯域で直接音成分が増えるので、ステージに近寄った感じの響きになりやすい。

Verity Audioが「Parsifal Ovation」に込めたこうした工夫は、一般家庭の室内再生における音響条件の基本を踏まえたもので、音楽再生に対する真摯な工夫として高く評価していいだろう。

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