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| 試聴スペースにアヴァンギャルドなどのシステムとともにおかれた「Parsifal Ovation」。大きさでは負けているが存在感がある |
オーディオに求める理想は、各人各様でいっこうにかまわないのだが、クラシックなど、アコースティック(acousutic)系の音楽を中心に聴く人にとっては、自分の音楽体験の中で、いちばん感動した音の響きを自分の部屋に再現したい、ということではないだろうか。たとえばホールの最上席で聴くような、ニュアンスが豊かで柔らかい響きのサウンド、ライブハウスで演奏者の熱気が肌に感じられるようなスリリングなサウンド、そんな音を再現したい、と願ってオーディオに打ち込むわけだ。
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| 2ウェイの中高域と、中低域の2つの独立した キャビネットを組み合わせた構造になっている |
しかしどうがんばっても、しょせんオーディオの音はスピーカーから出すしかないのだから、楽器や人間の声とまったく同じものを再現することはできない相談だ。むしろスピーカーのドライブユニットの振動板を見ると、紙のような、あるいは薄い金属箔のようなもので、よくいろいろな種類の音を鳴らし分けられるものだ、と感心したり同情したくなったりするのである。
しかし、音響工学と電気工学の信じられないような融合、協調作業によって、まるで本物のように聴こえる音と響きを私たちは手にいれることができた。これがエジソンの蓄音機以来130余年のオーディオの輝かしい歴史と実績というわけだ。
たしかにまるで本物のように再生できるほど、オーディオの再現力は高くなったのだが、人間の欲望とは果てしのないもの。もう少し、いやもっと、などと目に見える改善も、目に見えない工夫も重ねて、オーディオは今この瞬間も休みなく進歩向上を続けている。その努力の形はじつにさまざまだが、今回は非常に基本的な考え方から、新たな再現の優秀さを獲得しているスピーカーを紹介したい。
それはヴェラティ・オーディオ(Verity Audio、カナダ・ケベック市)社の、「パーシファル オベーション(Parsifal Ovation)」である。
オーディオ業界に詳しくない人には耳慣れない名のこのメーカーは、1995年の創業というから、まだ10余年ほどの新進スピーカーメーカーだ。製品には今回紹介するモデルの前身「Parsifal」以下、「Lohengrin」「Sarastro」「FIDELIO」「New RIENZI」「Tamino X2,C2」という名前がつけられている。これらはそれぞれ、ワーグナーやベートーヴェンのオペラのタイトルであり、モーツァルトのオペラ「魔笛」に登場する高僧や王子の名である。こういう命名は、イタリアの優れたスピーカーメーカー、ソナス・ファベールが弦楽器製造の都市や職人の名をつけているのに似ている。どちらの命名にも、クラシック音楽への深い敬愛の念が込められているのが感じられる。そして両社のスピーカーは、理想的なコンサートホールで聴くような響きで再現することを目指して作られているところも共通している。
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| 本体をやや斜めからみると、全体が上辺が狭くなった台形状をしたプロポーションをしている |
ヴェラティ・オーディオが自社のホームページに掲げているメッセージには、おおよそ次のようなことが書かれている。 「私たちは、本当に感動した音楽体験の“時を超越した美”を再現できるようなシステムを作るために情熱を傾けている。そして私たちのスピーカーはどれも、特別な“シナジー”をもっていることが共通した特徴だ。それはスピーカーのどの部分も、完璧なバランスをもった再現力を発揮するように、それぞれの性能を“統合”させているという意味である」
後半は日本語にするとわかりにくいのだが、他のページでの説明も合わせて解釈すると、彼らはオーディオでは“バランス”がもっとも重要なものだと考えて製品作りをしている。ひとつひとつのユニットや部品がいい性能をもつことは大事だが、それ以上にいくつかのユニットが力を合わせて、単独能力以上の素晴らしい再現力を発揮するように設計している。ということを意味しているようだ。
たとえば「Parsifal Ovation」は、2ウェイの中高域を受けもつ部分と、中低域部の独立した部分の2つのキャビネットを組み合わせた構造をしている。そしてこの中高域部は、独立した高級小型スピーカーとしても、録音スタジオのニアフィールド(近接試聴)モニターとして使えるほど、優れた性能をもっている。しかし「Parsifal Ovation」の中低域キャビネットと組み合わせたときには、さらに優れた性能を発揮するように、バランスをとっている、ということなのだ。



