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| タテに積み重ねた「STRATOS」。巨大だが、ブルーがよく効いて鈍重さはない |
まあ、アンプの再現力を日常的な言葉で表わせば、どのメーカーも似たようなものになってしまうのかもしれないが、同じアメリカでも東海岸と西海岸という遠く離れたところに本拠地を置く、比較的新しいメーカー2社が同じような言葉で、音楽や演奏の、あるいは演奏家、アーティストの「passion」を、生き生きとした立体的な音で伝えたいと表現しているのは、なかなか興味深い。
さて、その外観的要素で目を引く、重量が20kg以上も違う点だが、これは、目指すアンプの表現力を支える、強度、耐振動性、というもっとも根本的な面での違いを表わしているように思う。クレルは初期の製品から、いかにも筋骨隆々で、一度セットしたらテコでも動かないといった雰囲気があった。そのような強度と重量によって、アンプの大敵である内部外部からの徹底した振動対策がとられていたのである。
これに対して、アンプについては後発のホヴランドは、先行メーカーの手法も十分に研究し、さまざまな試行錯誤、実験のうえに独創的なアンプを開発することができた。その過程で「HP-100」「Sappire」という真空管セパレートアンプも発表し、高い評価を受けた。この真空管アンプについてはボンビバンでも2回にわたって紹介しているので、そちらもご覧いただきたい(「36 1階左側スペースの注目システム(2)」、「79 ソナス・ファベールの真髄を身近に聴かせてくれるelipsa」。)
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| ヨコに並べるとこんな感じになる |
パワーアンプの重量は、じつはその性能に密接に関わっているのだが、ホヴランドは求める動作の安定性が得られるギリギリのところまで減量したといっていいだろう。そのために、キャビネット、トランス、ヒートシンクの素材、形状、取付け方法まで、細心にして厳密な検討が行なわれた。60kg(クレル)といえば標準体型の成人男子1人分である。これがアンプのように直方体の金属製の箱になると、どうやっても1人で動かすことは出来ないほど重たい。40kg(ホヴランド)も決して軽くはないが、こちらはちょっとやせ気味の成人女性1人分といった重量だが、この20kgの差は床に対する負荷や設置性でかなりの違いではないかと思う。
さて、1ページ目で提起した「スピーカーを駆動するアンプに必要な条件」について少し探ってみよう。アンプの仕事は簡単にいってしまえば、プレーヤーから送られてくる微弱な電気信号を、スピーカーを駆動するに十分なまでに電力増幅を行なうことである。要約すれば確かにそういうことなのだが、その「増幅」という作業の中に、さまざまな要素が含まれるているのがオーディオのヤッカイなところだ。
自動車の排気量で示されるエンジンの能力も、車が普通に動けばいいという段階から、乗り心地への影響まで考えると、単に排気量が大きいだけでは十分ではない。そのようなことがもっと神経質に現れるのがアンプの増幅能力である。一般的に出力パワーとよばれ、仕様として「100W×2(8Ω)」などと表記されるのが、アンプのパワー(能力)だが、この数字が大きければ大きいほどいい、と単純にはいえないのだ。
大きいことはいいこと、大は小を兼ねるということもあり、一時はアンプのパワー競争が注目されたこともあったが、最近はパワーの大きさよりも、質的な駆動力が問われるようになってきている。ではその、質的駆動力とは何だろうか。
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| 「STRATOS」のリアパネル、簡潔なすっきりした配置だ |
ここで、アンプによってもたらされる、スピーカーの再現性能を示す特性を3つほどあげてみる。(1)解像度、(2)質感、(3)音場展開。他にもまだ多くの要素があるが、ここではわかりやすくするために、この3点に絞ってみる。
(1)の解像度は、音がどのぐらい細かい部分まで表現できるかということ。これが小さいと音楽は輪郭がボケてあいまいになる。過大になるとトゲトゲしい表現になって音楽の柔軟さが損なわれる。たとえば、弦楽器で弓と弦の擦れあう感じがうまく出せれば“粒立ちがいい”などと評価される。
(2)の質感は、柔らかい音、硬い音というように再生される音の質、肌触りのようなものを表わす。ただし、これはあくまでも録音に寄り添ってという条件のもとでの話。ゴツゴツした感じを狙ったものが、滑らかに再現されたらそれは間違いということになる。しかし、一般的にいって、しなやかで滑らかな質感がうまく表現できれば、そのアンプはうまくスピーカーを駆動していることが多い。
(3)の音場展開は、ステレオがオーディオの主流になった時代からずっと追求されてきたもので、もっとも難しい。単に音の広がりがいいとか悪いとか、それでは十分ではない。音楽が演奏された場のイメージが出せなければダメなのだ。もうひとつ、よく出来たスピーカーと優れたアンプとを組み合わせて、ほとんどの人が“ああ、いい音だな”と思う場合でも、じっくり聴いていると、どうしても音がスピーカーの周囲に張りついたような感じになってしまうことが多い。音は本来、空間に浮遊するのが聴いて心地よく、ホールで聴けば必ずそのように感じられるものなのだ。アンプが優れていると、スピーカーから出た音がきれいに空間に浮かび、スピーカーの存在が消えてしまうような気がするはずだ。
このような(1)(2)(3)の再現性が、どこまで得られるか。そこが本当のアンプ実力として問われるもので、高級アンプはそういうことにあらゆる工夫が凝らされているのである。それが、キャビネットの強度であったり、出力回路の実力であったり、あるいは放熱性の問題であったりと、ポイントは設計者によっていろいろと考えが違うのである。



